宮崎駿監督:「もうちょっと生きようかな」と苦笑 「風立ちぬ」遺言説をやんわり否定

「風立ちぬ」について語った宮崎駿監督
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「風立ちぬ」について語った宮崎駿監督

 スタジオジブリの宮崎駿監督が、東京都小金井市の同社で行われた7月公開の最新作「風立ちぬ」の完成報告会見で、同作が宮崎監督の“遺言”だと鈴木敏夫プロデューサーが語ったことについて、「鈴木さんはそういうこと言うのが好きだ。(鈴木プロデューサーに『遺言か?』と聞かれて)つい言っちゃった」といい、「遺言は、死ぬときに残すものなんで、もうちょっと生きようかなと思っているので……」と苦笑しながら、やんわりと否定した。

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 同作について、宮崎監督は「模型雑誌に道楽で書いたものですから、それを鈴木さんが次回作にしたらと言ったとき『どうかしてるんじゃないか』と思った。僕はマンガ映画が好きで(この仕事を)始めた。マンガ映画の枠を越えるのは好きじゃない。子供が分からないものを作りたくない」と当初は映画化に否定的だったというが、鈴木プロデューサーに説得されたと明かし、「東日本大震災やリーマン・ショックのあとで、ファンタジーを簡単に作れない時代が来た、どうしようか模索していたが、思い切って作ったら、新しい展開が生まれるかもしれない。悪戦苦闘しました」と難産だったことを振り返った。

 遺言説は否定したものの、同作については「歩きばっかりの映画、しょうがない人間は歩くんだ。弱点はいっぱいある映画ですが、スタッフがよくやった。長い間の積み重ねがあってできた縁のある映画。だから(初めて試写を見た時)不覚にも涙を流したのかな……」と、その思い入れについて語った。

 鈴木プロデューサーは、会見後「『この映画をひと言でいうと?』という質問を受けて、(宮崎監督が)年齢も年齢だし、“遺言”がカッコいいかなと思った。次が作れるかなんて分からない。宮さんはいつも“遺言状”を書いているんだと思います」と説明し、「映画を公開して、お客さんが来てくれるかは保証がないけれど、いっぱい来ると『またやろうかな』となる……」と語った。

 宮崎監督が「崖の上のポニョ」以来5年ぶりに描く最新作「風立ちぬ」は、雑誌「Model Graphix (モデルグラフィックス)」(大日本絵画)の09年4月号~10年1月号に自身が連載した原作を基に、堀越二郎という実在のゼロ戦の設計者の生涯と結核の美少女が登場する堀辰雄の「風立ちぬ」をイメージした物語。主役を庵野秀明さん、ヒロインを瀧本美織さんが担当するほか、西島秀俊さん、西村雅彦さん、元・スタジオジブリ取締役のスティーブン・アルパートさん、風間杜夫さん、竹下景子さん、志田未来さん、國村隼さん、大竹しのぶさん、野村萬斎さんらが声優を務める。「風立ちぬ」は7月20日に全国で公開予定。(毎日新聞デジタル)

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