名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
90年代にアニメ化されるなど人気を集めた麻宮騎亜さんのマンガ「サイレントメビウス」の約14年ぶりとなる新作「サイレントメビウスQD(クアドリガ)」が、12日発売の月刊ヤングマガジン(講談社)9号で連載をスタートする。復活の裏側と新作の詳細を探るべく、麻宮さんを直撃。さらに、麻宮さんの証言をもとに90年代に一世を風靡(ふうび)し、マンガやアニメの歴史を変えたともいわれる「サイレントメビウス」の革新性に迫る。(毎日新聞デジタル)
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「サイレントメビウス」は、近未来の東京を舞台に、妖魔(ルシファーホーク)と呼ばれる異世界(ネメシス)の住人とATTACKED MYSTIFICATION POLICE DEPARTMENT(対妖魔用特殊警察、通称AMP)に所属する香津美・リキュールらの戦いを描いたSF作品。1988~99年に月刊コミックコンプ(角川書店)とコミックドラゴン(富士見書房)で連載され、91、92年に劇場版アニメが公開されたほか、98年にはテレビアニメが放送。スピンオフ作品として「メビウスクライン」「サイレントメビウス テイルズ」があるが、本編の連載は約14年ぶりとなる。
新作「QD」は、AMPとネメシスの大戦が終了し、香津美と娘の瑠美が暮らす姿が描かれた「サイレントメビウス」のラストシーンから17年後の東京が舞台となり、新キャラクターのアオイとクリスら新生AMPの戦いが描かれる。東京は大戦をへて復興し、酸性雨が降り、退廃的だった街の様子はすっかり変わり、青空が広がっているという設定になる。また、新生AMPには「テイルズ」に名前のみが登場した旧AMPの闇雲那魅の姪の凪(なぎ)の姿もあるという。旧AMPのメンバーや瑠美らが登場するかも気になるところだが、麻宮さんによると「今の段階では言えません。『QD』は続編であり新作でもある。新しい読者だけでなく、ファンも楽しめる内容になっているし、仕掛けを用意しています」という。
「QD」の企画は、2000年ごろに「サイレントメビウスネオス」というタイトルでスタートし、同時にCGアニメ化などの企画も進行していたが、麻宮さんはほかの連載作品を手がけていたこともあり、本格的な着手には至らなかった。そんな中、昨年、麻宮さんが複数の出版社に企画を打診したところ、月刊ヤングマガジンの安永尚人編集長が目を付け、「QD」として連載する運びになったという。麻宮さんが「復活できたのは編集部のおかげ。安永さんは学生のころ『サイレントメビウス』や(麻宮さんが菊池通隆名義でキャラクターデザインを担当した1988年放送のテレビアニメ)『超音戦士ボーグマン』のファンだったそうです。当時のファンが権限を持つポジションになっているんでしょうね」と話すように、編集者の熱意が復活を後押しした形となったようだ。
なお「ネオス」の設定資料は、2011~12年にぶんか社から発売された「サイレントメビウス」の文庫版の巻末で公開されており、資料には、アオイやクリス、凪らキャラクターが描かれている。麻宮さんは資料と「QD」の関係を「設定は生かされているが、根幹にかかわる部分で変えているところもある」と説明する。
「サイレントメビウス」は、現在のアニメやマンガのアーキタイプ(原型)ともいわれている。麻宮さんが「AMPのメンバーは全員女性。女性だらけのチームが戦うというのは(米ドラマの)『チャーリーズエンジェル』や(日本のドラマ)『プレイガール』ではあったけど、当時のマンガでは珍しかった。女性には生命を育む力があり、男性よりも強い。『サイレントメビウス』は女性賛歌でもあるんです」「AMPの那魅がみこという設定は、今でこそみこのヒロインというのは珍しくないけど、マンガでは初めてだったんじゃないかな?」と話すように、当時、珍しかった設定が人気となり、その後のアニメやマンガにも大きな影響を与えた。
フィリップ・K・ディックさんのSF小説をリドリー・スコット監督が映画化した「ブレードランナー」(1982年公開)をほうふつとさせる酸性雨が降り、退廃した近未来の街やガジェット、レプリカントとの戦闘、ウィリアム・ギブスンさんのSF小説の影響と思われるAMPのレビア・マーベリックが電脳世界で戦うシーンなどサイバーパンクと呼ばれるSF作品の設定を取り入れていたことも話題となった。麻宮さんが「『ブレードランナー』には、リスペクトがあります。舞台と同じ時代、日本はどうなっている……というところから設定を考えたところもある」と話すように「ブレードランナー」には特に大きな影響を受けたようだ。
「サイレントメビウス」が連載をスタートした80年代後半で斬新だったのが、コミックス1巻がドラマCDと同時発売されたり、アニメ化の前にPCゲーム化されたりするなど当時は珍しかったメディアミックスを積極的に展開していたことだ。「連載していた『コンプティーク』はPCゲームの雑誌だったこともあり、ゲーム化は企画段階から考えていた。ゲーム化の前に、マンガは音が聞こえないけど、キャラの声とBGMがほしいと思っていたのでCD化のアイデアがあった。当時はドラマCDは珍しかったのですが」とメディアミックスは麻宮さんのアイデアだったようだ。
数々の斬新な設定や展開で、その後のマンガやアニメのアーキタイプとなった「サイレントメビウス」。88年の連載スタートから25年たった今年、復活する「QD」の展開も注目される。
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