桜 稲垣早希の補完計画:「バチバチ」 相撲に感じた“二次元”

「バチバチ」の魅力を語る稲垣さん
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「バチバチ」の魅力を語る稲垣さん

 アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のヒロイン・アスカの物まねで知られるお笑い芸人の桜 稲垣早希さん。「エヴァ」だけでなくさまざまなアニメやマンガ、ゲームが大好きという稲垣さんが、熱い思いを語ります。(毎月25日更新)

ウナギノボリ

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 今回はスポーツマンガの「バチバチ」です。私はマンガの中でも特に避けてしまうのが、萌(も)えエロ系とスポーツマンガなんです。今まできちんと読んだのは「タッチ」くらいですね。

 「タッチ」はもうスポーツというよりも、達也と南のあのじりじりとした関係を楽しむって感じでした。あとは、「スラムダンク」ですね。といっても読んでいた当時は本当にスポーツのことに興味がなかったので、試合のシーンはほとんどいいかげんに読んでました。勉強と同じで興味ないことって頭に入ってきにくいですね。

 それで、この「バチバチ」はなんのスポーツかというと、「相撲」です!! そう!!国技!! はっきり言ってスポーツの中でも最大級に興味がなかった部類でした><

 そんな相撲マンガをなぜ読み始めたかというと、偶然あるイベントのワンコーナーで興味のないものを勉強して舞台で発表するという企画があって、私は相撲を勉強することになりました。テレビやDVDでは見てみたものの……大きな男性が取っ組み合って勝ち負けを決める……。「これにどんなストーリーを読み取ればいいの?」とはじめは相撲の見方が分からなくて困惑しました。

 そこでひらめきました! 「あ! マンガなら相撲のことをもっと知ることができるかも!!」と思ってネットで「相撲 マンガ」と検索したら、一番読みやすいマンガに「バチバチ」と書いてるものがあったんです。私は1巻だけ、勉強のために電子書籍でダウンロードして読もうと思いました。でも……これまでマンガでもスポーツというだけで興味が半減していた私に、相撲マンガなんて読めるのかな……と半信半疑だったのですが、1巻の表紙を見て「あれ?」となりました。

 いかにも不良っぽい男の子が描かれています。「これ……、ヤンキーマンガ?」と思って2巻の表紙をのぞいてみたら、その主人公っぽい男の子が上半身裸になっています。ん…? まあ、ケンカするのも上着脱ぐときもあるかな……と思って3巻の表紙を見たらついにまわしを巻いていたのです!! 「おお!! ヤンキーじゃなくてちゃんと相撲マンガだ~^^」と安心しました。それに、なんだか表紙を見るだけでもすごくストーリー性を感じたので読むのがちょっと楽しみになりました。

 主人公の鮫島鯉太郎は、昔、大相撲史上最悪と言われた大関「火竜」の息子です。暴力ざたを起こして相撲界から追放された父に代わり、力士の最高位の横綱になるために駆け上がっていくというストーリーです。ヒーローだった父が自慢だった鯉太郎でしたが、その事件がきっかけに孤立しています。

 しかし、鯉太郎も空流部屋という相撲部屋に入ることになりました。そこで迎えに来た親方と阿形(あぎょう)という力士にさっそくケンカを売るわけですが、今までどのケンカにも勝ってきた鯉太郎が、この阿形にこてんぱんにされます! もう大人が子供と相撲しているような扱いです。

 今まで周りで一番強かった鯉太郎は力には自信があります。でも阿形の前ではまったく歯が立たず、阿形に「これがプロよ……」と言われてしまいます。かっこいい! このときばかりは私は「阿形! 勘違い鯉太郎をこてんぱんにしちゃって~」と願いました。そしてこの戦いを見て、私はようやく相撲の魅力を感じた気がしました。

 スポーツの中でも圧倒的な体のでかさ!! 同じ人間だとは思えない迫力!! これがマンガ好きな私からしたらお相撲さんって、「三次元なのに二次元!!」となったわけです。普通ならあり得ない、空を飛ぶ、魔法を使う、10等身のクラスメート、巨大な体!! 国技に対して本当に失礼かもしれませんが、私は相撲に二次元を感じてしまいました。

 となるともうかっこいい!! そして、有名な舞の海対曙の取り組みをDVDで見ましたが、これも小さな体の主人公が大きなボスに勝つ!という構図。もうマンガ好きにはたまらない展開です。「え? 相撲ってこんなに見やすいものなの!?」とびっくりしました。

 さてさて、マンガに戻りますが、敵キャラが気持ち悪いんです。王虎という鯉太郎と同期の力士ですが、虎城部屋の親方で相撲協会の理事でもある虎城を父に持つ性格ひんまがり男です。高校生横綱のタイトルを持っていて強いことは強いのですが、それだけではありません。仮病をつかって同情を引いたり、マスコミに一番受けのいい回答をしたりと、とにかく猫かぶりなんです。

 しかも父の虎城は鯉太郎の父、火竜を相撲界から追放した張本人!! これは鯉太郎と王虎の因縁の戦いから目が離せません!! あと、同じ部屋の先輩と関わっていくうちに絆が生まれ、家族になっていくところもいいですね。3巻の、取り組み後に王虎にけがさせたことをマスコミに責められて囲まれてしまうところに、同じ部屋の先輩たちが立ちはだかって鯉太郎を守るシーンなんかかっこよすぎて鳥肌が立ちます。私は1巻を読んだあと、面白すぎたので7巻まで一気に読んでしまいました。

 どんな入り方でもいいから、まず触れてみること。食わず嫌いしていたら人生で損するな~ということも痛感させられた作品です^^

 ◇プロフィル

 桜 稲垣早希(さくら いながき・さき)=1983年、神戸市生まれ。07年2月に、お笑いコンビ「桜」を結成。07年の「M−1グランプリ」で3回戦に進出するなど活躍していたが、09年末に相方がコンビを卒業し、ピン芸人として活動。アニメ「エヴァンゲリオン」のヒロイン、アスカの物まねで知られ、バラエティー番組「ロケみつ」(毎日放送)でブレーク。「R−1ぐらんぷり」で4年連続準決勝進出を果たしている。最近ではバラエティー番組などでナレーションもこなすなど、芸の幅を広げている。

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