マン・オブ・スティール:スナイダー監督に聞く「既成概念を打ち破るのが面白い」 続編にも言及

最新作「マン・オブ・スティール」や続編について語ったザック・スナイダー監督
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最新作「マン・オブ・スティール」や続編について語ったザック・スナイダー監督

 米DCコミックの人気ヒーロー、スーパーマンを描いた「マン・オブ・スティール」が全国で公開中だ。惑星クリプトンで生まれ、地球でクラーク・ケントとして育てられたカル・エル。特別な力を秘めていることを自ら知った彼が、葛藤しながらもやがて自身の使命を悟り、スーパーマンとして生きる決意をするまでが描かれている。原案、製作には「ダークナイト」3部作で「バットマン」を再起動させたクリストファー・ノーランさんが名を連ね、主人公のカル・エル/クラーク・ケントを、英俳優ヘンリー・カビルさんが演じている。メガホンをとったのは「ウォッチメン」や「300<スリーハンドレッド>」を映画化したザック・スナイダー監督。作品のPRのためにカビルさんらとともに来日したスナイダー監督に話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 スナイダー監督といえば、「300<スリーハンドレッド>」や「エンジェルウォーズ」といった作品で見られるように、VFXを駆使した超現実的なビジュアル使いの名手として知られる。ところが、「今回の作品は、アクションを含めてなるべくリアルに描きたかった。ファンタスティックなキャラクターのスーパーマンだからこそ、少なくとも地に足をつけている、そういうリアリティーを僕は求めたんだ」と明かすスナイダー監督。だから撮影も「なるべくリアルであることを追求した」と語る。

 例えば、映画のクライマックス。スーパーマンがクラーク・ケントとして育った町スモールビルでのバトルシーンでは、クリプトンの唯一の生き残りでクラークの後を追うゾット将軍を相手にした戦いぶりは、「西部劇風」から徐々にエスカレートし、ピーク時にはスナイダー監督いわく「バーでのケンカ」のようになるようスタントチームに振り付けを考えてもらったという。なんともリアルな表現だが、それはあくまでも「実用的なレベルで考えた」上でのこと。実際にスクリーンで展開するのは、ゾット将軍の目から光線が飛び出したり、投げ飛ばされたスーパーマンの衝撃で建造物がメタメタに壊れたり、さらには、「気が付くと宇宙にまで飛んでいって戦う」というすさまじいものだ。

 その光景は、“そこまでやるかスーパーマン”とあっけにとられるくらいのものだが、それについてスナイダー監督は「だって、スーパーマンもゾットも、タフな上にものすごく力を持っているんだよ。そんな2人が命懸けで戦うんだから、力を制御できなくて当然。2人共、人類から見れば神に近い存在だ。人間は、神様が人間のことを大切に思ってくれていると勝手に思い込んでいる節があるけど、実は神様だって何かに夢中になると人間の存在なんて忘れてしまう、みたいな(笑い)、そういうこともにおわせているんだ」と説明する。

 今作では、これまでとは違うスーパーマンを見ることができる。育ての親ジョナサン・ケント(ケビン・コスナーさん)から言われた「お前の使命を突きとめろ」という言葉を胸に流浪の旅に出たクラーク。行く先々で事故や事件が起きると怪力を発揮し、人々の救助に当たる。しかしその存在は決して公にはできず、助けてはひっそりと去って行く……。そんな彼からにじみ出るのは孤独以外の何ものでもなく、そんなふうに今作では、スーパーヒーローとしてのスーパーマンの活躍を描くだけでなく、彼が己の進むべき道を探り、葛藤し、やがて“マン・オブ・スティール=鋼の男”になるまでが描かれている。

 そういったヒューマンドラマとアクションの融合によって、ひと足先に公開された海外では、世界興収約6億5000万ドル(約638億円)を記録。すでに続編の製作も決定しており、7月に米サンディエゴで開かれたコミックコンベンション(通称コミコン)では、スナイダー監督自身がそれについて触れていた。改めて続編について聞くと、「シークレットだからどこまで明かせるかな」と笑いながら、「バットマンが登場するというのは発表している通り」とした上で、「クリス(クリストファー)・ノーラン版のバットマンとは全く違うビジョンになるし、興味深いスーパーマンとバットマンを描きたいと思っている。ただ、今回の場合もそうだけれど、コミックが原作としてあるわけで、それに対して僕はとても深い愛情を抱いているから、100%オリジナルということはないな」と明言した。ちなみにバットマン役には、ベン・アフレックさんの名前が挙がっている。

 ところで米国では、今作において、このシリーズのファンの間で「スーパーマンらしくない」行為と話題になっているシーンがあるそうだ。スナイダー監督としては「原作にそういう描写があるからそうした」というが、ファンからは「どうして?」と詰め寄られたこともあったそうだ。そんな周囲の反応から監督が悟ったのは「ディープなファンは原作を読んでいるだろうけど、映画しか知らない人もいる。そういう人の知識には限界があり、そのイメージの中でスーパーマンの世界が出来上がっている」ということ。その上で、「僕としては、原作に忠実でありながら、あまり知られていない事実をみなさんに突きつけて、その既成概念を打ち破ることが面白い」と話したスナイダー監督。その言葉通り今作が、これまで私たちがスーパーマンというキャラクターに抱いていたイメージを、あっさり打ち破る作品であることは間違いない。映画は8月30日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 1966年生まれ、米ウィスコンシン州出身。CMや音楽ビデオの世界で活躍し、2004年、ジョージ・A・ロメロ監督の傑作「ゾンビ」(78年)のリメーク作「ドーン・オブ・ザ・デッド」(04年)で映画監督デビュー。その後、「300<スリーハンドレッド>」(06年)、「ウォッチメン」(09年)の監督を務め、10年にはアニメーション「ガフールの伝説」にも挑戦した。11年、脚本、監督、製作を務めた「エンジェルウォーズ」が公開。15年公開予定の今作の続編「Batman vs.Superman」のメガホンもとる予定だ。

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