はじめの1巻:「嘘解きレトリック」 うそを聞き分ける少女と探偵の謎解きマンガ

都戸利津さんのマンガ「嘘解きレトリック」(白泉社)の1巻の表紙
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都戸利津さんのマンガ「嘘解きレトリック」(白泉社)の1巻の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は「別冊花とゆめ」(白泉社)で連載、昭和初期を舞台に、うそを聞き分けることができる少女と貧乏探偵が事件の謎を解き明かしていく都戸利津(みやこ・りつ)さんのマンガ「嘘解きレトリック」です。

ウナギノボリ

 昭和元(1926)年の九十九夜(つくもや)町。人のうそを聞き分けることができる特殊な力のせいで疎まれ、生まれ育った村を出た少女・鹿乃子は、この町にある神社で探偵の祝左右馬(いわい・そうま)と遭遇する。空腹のため、その場で倒れてしまった鹿乃子は、左右馬の行きつけの食事処で世話になり、その人々の笑顔や温かさに憧れを抱く。しかし、子供がついたうそに気づいて叱責してしまったことで、人々は険悪な雰囲気になって……。

 ◇編集部からのメッセージ 別冊花とゆめ編集部 岩切健太さん 「さらにミステリアスで本格的な事件も」

 作者の都戸利津さんが「とにかく好きなものを詰め込んだ」という今作、時代設定が明治でも大正でもなく「昭和初期」なのは、風俗の和洋折衷加減がちょうど好みの時代だからだそう。そのこだわりは雰囲気たっぷりに描かれた建物や衣装などに見ていただけると思います。

 また発売以来、表紙の「着物おかっぱメガネっ娘」に思わず購入、という声も多数いただきましたが(感謝!)、このメガネっ娘探偵助手・鹿乃子は人の話し声から「うそを聞き分ける」という、ミステリーでは反則と言いたくなる能力の持ち主。ですがイコール「真実を聞き取れる」というわけではないので、聞き分けたうそが矛盾を生み、かえって謎が深まることも。

 それを解きほぐし、隠された真実に導くのが探偵・祝左右馬の推理力(とハッタリ)。2人の能力がかみ合って鮮やかに謎が解かれる爽快感を、ぜひ体感してください。この先にはさらにミステリアスで本格的な事件も2人を待ち受けますので、お楽しみに。

 またもう一つの見どころはおいしそうに描かれたご飯。万年腹ペコの貧乏探偵と助手がそれをまたおいしそうに食べるもので、見てるこっちも腹ペコに……(笑い)。

 巧みな構成の推理劇と、ほっこり優しいドラマが両方楽しめる今作、どうぞお楽しみくださいませ!

 ◇書店員の推薦文 まんが王 工藤淳さん 「シリアスにもコメディーにも続きが楽しみ」

 明治・大正・昭和初期など東洋と西洋の文化が交わる時代には探偵がよく似合います。この作品も昭和初年が舞台。ちょっと普通の探偵物と違うところが主人公の少女・鹿乃子にはうそを聞き分ける特殊な能力を持っていること。だったら犯人見つけるの簡単じゃん? そうはいきません。なにせうそは分かってもそれだけでは犯人だという証拠にはならないのです。そこでもう一人の主人公・貧乏探偵の祝左右馬の出番。彼が狂言回しの役割をし、関係者そして読者に事件を解き明かし、解説するのです。ひょうひょうとしたギャグキャラかと思わせつつ、正しく探偵の素質を持ったなかなか底知れないキャラクターです。この主人公2人を組み合わせた物語はシリアスにもコメディーにもできるので、今後どう展開するのか続きが楽しみな作品です。

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