ラノベ質問状:「know」 新しい世界を見せてくれるSF

野崎まどさん作、シライシユウコさんイラストの「know」(ハヤカワ文庫)のカバー
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野崎まどさん作、シライシユウコさんイラストの「know」(ハヤカワ文庫)のカバー

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は「know」(野崎まどさん作、シライシユウコさんイラスト)です。早川書房の高塚菜月さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この書籍の魅力は?

 超情報化対策として、人造の脳葉“電子葉”の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野(おの)は、情報素子のコードの中に、恩師であり、現在は行方不明の研究者、道終(みちお)が残した暗号を発見する。その暗号を解いて向かった先で待っていたのは、中学生の少女、知ルだった。道終の真意もわからぬまま、御野は“すべてを知る”ため、彼女に導かれるままに行動をともにする。2人で過ごす4日間の先に待ち受けているものは何か……。

 魅力はなんと言っても“誰も予想できなかった”結末。ぜひページをパラパラせずに読んでいただきたいです。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 「[映]アムリタ」以来ずっと野崎さんの作品が好きで、アプローチをしました。最初に打ち合わせをした際に、大まかな方向性として「SFを書きたい」とご提案いただいたことがきっかけだったように思います。その後は、「京都で“情報パンチ”を繰りだすお話」みたいなイメージはうかがっていました。初めてお会いしてから原稿をいただくまでの間に「2」「独創短編シリーズ 野崎まど劇場」「なにかのご縁−ゆかりくん、白いうさぎと縁を見る」が刊行されたので、どんな作品になるのか全く予想できませんでしたね(笑い)。

 −−著者はどんな方でしょうか?

 物腰の柔らかな、優しい方です。執筆面では、本というメディアの特性、人間の目の動きまで意識して小説を書く方だと思います。アイデアがすごいのはもちろんなのですが、そうした技術に翻弄(ほんろう)されてばかりですね。あと、メールの件名がいつも面白いです。

 −−編集者として、この作品に関わって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 野崎さんは初読の印象を大切にされる方なので、プロットをいただく段階では結末が分からないんです。どんな小説になっているのか、最初に原稿をいただいて、拝読する瞬間は本当に興奮します。

 イラストを担当していただいたシライシユウコさんは内容を深く読み込んで描かれる方で、作品のイメージ、解釈をうかがうのも楽しかったです。大変なことは特にないのですが、「know」は最後の展開が分からないまま刊行告知の内容紹介を書いていたので、それはちょっとハラハラしました(笑い)。

 −−最後に読者へ一言お願いします。

 「know」は“新しい世界を見せてくれる”小説だと思います。野崎まど作品の読者の方はもちろん、SFを読んだことがない方にも絶対に楽しんでいただけると思うので、手にとっていただけるとうれしいです。9月下旬に刊行する「ファンタジスタドール イヴ」はまったく方向性が違う作品なので、こちらもよろしくお願いします!

 早川書房 第二編集部 高塚菜月

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