「苦役列車」(2012年)に続く、主演・前田敦子さん、山下敦弘監督のタッグ作「もらとりあむタマ子」が全国で公開中だ。大学を卒業したが就職せず、実家でぐうたらする女子が、父親と暮らす1年間を描いた。脚本は、山下監督と大学時代から組んでいる向井康介さん。主題歌は星野源さんが担当している。
ウナギノボリ
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タマ子(前田さん)は東京の大学を卒業したが、父・善次(康すおんさん)が一人で暮らす実家に戻って、食べては寝るダラダラした生活を送っていた。実家は地方でスポーツ用品店を営んでいるが、タマ子は店を手伝うでもなく、家事も善次にまかせっぱなし。「ダメなのは日本じゃなくてお前だ!」と善次に言われて、「そのときが来たら動く」とどなり返すタマ子。大みそかを父と過ごして、春が来て、タマ子は髪の毛を切りに行く。そして、ようやく履歴書を書き、近所の写真館の中学生に証明写真を撮ってもらったり、やる気は出たのかと思いきや……。そんなころ、父親の周りに女性の影が現れ……という展開。
音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」の30秒のステーションIDとして四季を通して描かれてきたタマ子の日常を長編映画化。乾いた空気感の中、前半は父と娘の食事シーンが繰り返される。父の善次は、大みそかの年越しそばを丁寧にダシをとって作る料理上手な男。善次の作った料理を、会話もなくほおばる娘。お互いを思いやっているのに、なかなか素直に交流できない父と娘がいる。2人がどうなるのか、どう関わっていくのかと思って見ていても、特に何かが起きるわけでもない。この展開を退屈だと思うか、リアルだと共感できるのか、二手に分かれそうだ。山下監督の作品には常連の康さん、2作目の前田さんは、作品の持つ独特のテンポになじんでいる。出番は少ないが、富田靖子さんもいい雰囲気を出している。美術を担当したのは「夏の終り」(13年)などの安宅紀史さん。今作でも、そこに住んでいる年数まで感じさせるような自然な室内を作り上げ、目を楽しませてくれる。23日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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