黒川文雄のサブカル黙示録:ロックマンのオマージュ 稲船敬二の挑戦

 先日、ゲームクリエーターの稲船敬二さんと対談しました。カプコンでキャリアを磨いて独立した稲船さんは、3年間に矢継ぎ早にコンテンツを発表。最近はアメリカを中心に展開するクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で「Mighty No.9」というアクションゲームをプレゼンして、7万人の支援者から約4億円の開発資金を得たことで話題になりました。

ウナギノボリ

 さて、その「Mighty No.9」ですが、デフォルメされたかわいらしいキャラクターによる、横スクロールのアクションゲームでした。横スクロールのアクションで、カプコンといえば「ロックマン」をイメージするわけで、稲船さんにストレートに質問してみました。稲船さんは苦笑しながらも「ロックマンへのオマージュですね」と答えてくれました。オマージュとは、尊敬する作家・作品に影響を受け、似た作品を創作することを指します。稲船さんは「自分が作った過去の作品をモチーフにしたことで、それはそれで良いのではないか」と説明してくれました。

 確かにサザンオールスターズの桑田佳祐さんも過去の自分の作品を聴いて、それをもとに違う曲を書いたことがあるとコメントしたことがあります。作詞作曲という単独の創作活動ゆえの発言かもしれませんが、正しい見解だと思います。ただ、ゲームソフトの場合は、会社組織としての開発の産物となるため、オマージュがどこまで通用するかは、判断の分かれるところかもしれません。

 ともあれ、稲船さんの「Mighty No.9」ですが、個人的にはぜひ成功してほしい作品です。クラウドファンディングの良い点として一般に広く知られる認知促進面でのメリットがありますが、開発期間が長引くと当初のテンションを維持することが難しくなるという側面もあります。2015年の完成までの期間の進捗(しんちょく)を注目をしてみたい作品です。

プロフィル

くろかわ・ふみお 1960年生まれ、東京都出身。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。現在はインディーズゲーム「モンケン」を制作中。

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