ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
大ヒットしたテレビアニメの放送終了から3カ月、諫山創さんの人気マンガ「進撃の巨人」の“快進撃”が止まらない。コミックスの初版発行部数は最新12巻で初めて200万部の大台に到達し、シリーズ累計では約2800万部を記録。「ARIA」(講談社)で連載中の「進撃の巨人 悔いなき選択」などスピンオフも話題となり、実写映画企画も樋口真嗣監督を迎え再始動。アニメのオープニング曲「紅蓮の弓矢」を手がけた音楽ユニット「Linked Horizon」は、「第64回NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。この止まらない進撃ブームの理由を追った。
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「進撃の巨人」は、圧倒的な力を持つ最大約50メートルの巨人たちを相手に、人類が絶望的な戦いを挑む姿を描いたダークファンタジーの傑作だ。諫山さんにとって同マンガは記念すべきデビュー作で、2009年9月に月刊マンガ誌「別冊少年マガジン」(同)の創刊タイトルとして連載をスタートした。
コミックス1巻が発売されたのは10年3月。発行部数はこの時点でわずか4万部(それでも新作初巻としては異例の数字)だったが、なかなか明かされぬ巨人の正体、舞台設定、謎が謎を呼ぶ先の読めない展開など、ストーリーの面白さがネットの口コミで広がり、同年12月には早くも累計100万部(1、2巻)を突破する。同作を担当する講談社の川窪慎太郎さんは「読んでみると意外や意外、王道で骨太でミステリー要素もある。そこが受けたのではないでしょうか」と分析する。
ここでいう「王道」とは少年マンガの王道のこと。巨人の侵入を防ぐため築かれた壁の外の世界に、人一倍憧れを持つ主人公の少年エレン・イェーガーら登場人物が、戦いに身を投じ、かっとうしながら成長していく姿などを指す。巨人が人間を捕食するシーンなど一部残虐な描写があり、特異な世界観を持つ「進撃の巨人」だが、この記録的な大ヒットに、「王道」という要素は欠かせなかったようだ。
その後も順調に売り上げを伸ばす「進撃の巨人」だが、さらなるブレークを後押ししたのが、昨年4月にスタートしたテレビアニメの存在だ。人類によって開発された対巨人戦用の装置「立体機動装置」を使い、巨人を駆逐する戦闘シーンのスリルやスピード感などはアニメならではのもの。作画のクオリティーやBGM含め、作品トータルでの完成度も非常に高く、「人類最強の戦士」と呼ばれるリヴァイ兵長の大ブレークにもアニメが貢献した。
リヴァイは、圧倒的に強く、普段は冷徹だが実は仲間思いという“カッコいい”を体現する男。それでいて非常に小柄(身長160センチ)で、元は街のゴロツキ(不良)でありながら、アニメ15話ではエレンに掃除のやり直しを命じたりと潔癖性を思わせる言動もあり、“ギャップ”も十分に持ち合わせている。
そんなリヴァイを、従来のマンガのファンに加え、アニメの視聴者(特に女性)も数多く支持。このリヴァイ人気が「進撃の巨人」の知名度をさらにアップさせるという相乗効果も生み出した。これは表面的なストーリーだけにとらわれず、多くのファンがキャラクターを掘り下げ、新たな魅力を発見しようとした結果の好例といえる。
プロローグを経て、昨年11月にはリヴァイの過去を描くスピンオフマンガ「進撃の巨人 悔いなき選択」の本格連載が「ARIA」でスタート。リヴァイ人気を見越して発行部数を通常の約5倍に増やした1月号は完売し、さらに重版。2月号の発行部数は1月号の倍、通常の約10倍に到達した。まさに“リヴァイ、恐るべし”である。
“相乗効果”と聞いて、忘れてはいけないのが、アニメの前期オープニング曲「紅蓮の弓矢」と後期オープニング曲「自由の翼」を手がけた音楽ユニット「Linked Horizon(リンホラ)」。人気音楽ユニット「Sound Horizon」のサウンドクリエーター、Revoさんのプロジェクトだ。
アニメ放送が始まると、リンホラの音楽スタイルが注目を集め、「紅蓮の弓矢」は、関連動画が各種動画サイトに2万件以上アップされるなど話題となり、中には掲載1カ月で400万回以上再生される人気動画も登場。「進撃の巨人」を拡散させることに成功した。
「紅蓮の弓矢」や「自由の翼」などを収録し、昨年7月に発売されたシングル「自由への進撃」は、発売1週間で12万9000枚を売り上げ、オリコン週間ランキングで2位にランクイン。セールスはその後も伸び、約20万枚を記録。ついにリンホラは、テレビ初パフォーマンスを、大みそかの国民的音楽番組「紅白歌合戦」で披露するという快挙を達成した。
テレビアニメは昨年9月に終了したが、12月に発売した12巻の初版発行部数は200万部に到達。13年に発売されたマンガでこれを超えたのは集英社の看板作品「ONE PIECE」(400万部)だけ。現在、関連書籍を含めるとシリーズ累計発行部数は約3000万部になるという。マンガ掲載誌も、本編連載中の別冊少年マガジンの発行部数がアニメ放送前の約4倍、本編の70年前を舞台としたもう一つのスピンオフ「進撃の巨人 Before the fall」が連載中の「月刊少年シリウス」(同)の発行部数が通常の約2倍へと増加している。
アニメ評論家の多根清史さんは「進撃の巨人」の魅力として「人と同じ姿をした巨大な怪物が人間をむさぼり食う絶望と、それを立体的なアクションとチーム力で倒すカタルシス」などをあげ、「型にはまらない人物たちが織りなす群像劇でもあり、視聴者(読者)が感情移入できるキャラクターを見つけやすい。何より『人類を閉じ込める壁の外をめざす』というテーマが、閉塞感を打破したい現代人の心に響いたのではないでしょうか」と話している。
14年初夏にクランクインし、15年の公開を目指す実写版についても、キャストの予想合戦がツイッターなどのSNS上で繰り広げられるなど、まだまだ人気に陰りは見られない「進撃の巨人」。その動向から、今年も目が離せなくなりそうだ。
講談社のウェブマンガサービス「コミックDAYS」で連載中のくずしろさんのマンガ「雨夜の月」がテレビアニメ化されることが分かった。アニメは世界各国でも配信予定。
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