ちいかわ
第299話 拾魔(9)
12月5日(金)放送分
1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は1匹のシベリアトラの成長と戦いを、せりふを用いずに水墨画で描いたジョン・ソクホさんの「白虎 森の覇王へ」(双葉社)です。
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狩りをする1匹のトラ。時は流れ、トラは3匹の子供を産み、そのうちの1匹は白い毛をしていた。ある冬の日、母親トラと3匹の子トラは山でヒグマに出くわす……。
韓国随一の筆力を持つベテラン彩色水墨画家、ジョン・ソクホさんが挑む華麗で荘厳な大自然と野生の描写。極寒の大森林で繰り広げられる美しき白虎(びゃっこ)と巨大なヒグマとの壮絶な格闘。従来の劇画を超えた最上級動物格闘コミック!!
「日本のマンガにあるべくしてないもの……それがジョン・ソクホのマンガにはあった。彩色された様式美で描かれる自然と動物たちの動と静。そして生と死。ここに絵を見るマンガ本来の醍醐味(だいごみ)がある」
日本マンガ界の巨匠、谷口ジローさんにこのような熱烈なメッセージを寄せていただきました。ジョン・ソクホさんは、この作品が初めてのマンガ作品となります。それでいながらこの完成度と臨場感。一コマ、一コマに繊細さと大胆さがあふれ、何度も読み返せることに読む者は気づくことでしょう。
小さな幼い白いトラが巨大なヒグマによって母トラを失い、美しくも過酷な四季を越え、他の野生動物と戦い成長していく。ついにはヒグマと出会い、復讐(ふくしゅう)の牙(きば)を研ぐ。その結末は……。
名匠、名和田耕平さんのブックデザインの手触りとともにこの作品を存分に味わってほしいものです。
シベリアトラの成長の物語です。
まず表紙の絵の存在感。それだけでこの本のレベルをうかがい知ることができます。
さらにその表紙をめくり、まず最初に驚くことはせりふが一切ないこと、そして水墨画で描かれているということです。
おお、これはなんだろう? 得も言われぬ素晴らしい躍動感を感じる!
こんなにも水墨画がマンガに合致するとは!
せりふが全くいらないほどの描写が可能とは!
久しぶりにただ絵を追っていくということを存分に楽しめるマンガに出合えた気がしました。
この感覚は田中政志先生の「FLASH」や「GON」以来ではないでしょうか?
またトラの成長を丁寧に描いたストーリーは実に壮大で雄々しく、少しネタバレになってしまいますが復讐劇としての話の組み立てもとても分かりやすく、思わず感情を注ぎ込んで見てしまいました。
せりふがない分、比較的すぐに読み終えてしまいますが、とても完成度が高く、ほかとはいろんな意味で一線を画しているような作品。
一読の価値は十二分にあると思います。
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2025年12月06日 08:00時点
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