個々のメンバーがスタジオミュージシャンとしても第一線で活躍するバンド「SHOGUN(ショーグン)」が、35年前のヒット曲「男達のメロディー」「BAD CITY」などを新たにレコーディングしたアルバム「THE ROAD OF LIFE」を4月30日にリリースした。新曲も合わせて収録した今作では、時代を超えたバンドの音楽性や熟練の演奏を楽しめる。新アルバムの話や、「男達のメロディー」「BAD CITY」の制作当時の秘話などについて、オリジナルメンバーでギター&ボーカルの芳野藤丸さんに聞いた。
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−−スタジオミュージシャンとしては、最近はどんなアーティストのライブやレコーディングに参加されているんですか?
最近だとSPEEDの島袋寛子さんやピンク・レディーの未唯mieさんのコンサートとか。僕はSPEEDでは今井絵理子さんが好きで、ときどき寛ちゃんのコンサートに遊びに来るので、それが楽しみで(笑い)。あと、僕は長年、西城秀樹さんのコンサート(のギター)をやっていたので、秀樹との思い出は強く残ってますね。大阪球場(現在は跡地になんばパークスを開業)とかで(西城さんが)30メートルのクレーンにつり下げられたり。僕も乗ってみたんですけど、10メートルくらいで「降ろしてくれ」って言いましたから(笑い)。そんなバリバリのアイドルのころから公私にわたる付き合いで、家にもしょっちゅう遊びに行ったりしていました。
−−今回のアルバム「THE ROAD OF LIFE」には、1979年に放映されたドラマ「俺たちは天使だ!」の主題歌「男達のメロディー」のリメーク版が収録されていますが、当時のエピソードを教えてください。
あの曲はSHOGUNのデビュー曲で、その後、SHOGUNに入って活動していたケーシー・ランキンが作ったんですけど、彼は外国人だから、元の曲の感じがカントリーなんですね。正直、僕はあの曲が大嫌いで、実は(原曲の音源は)「走り、出したら」ってふてくされて歌ってるんですよ。でもいざ発売してみたら、それが50万枚以上売れちゃって、途端に大好きになりました。そんなもんだなって(笑い)。
−−松田優作さん主演のドラマ「探偵物語」(79~80年)のオープニングテーマ「BAD CITY」についてはどうですか?
あれもケーシーの曲なんだけど、歌詞が英語で、何を言ってるのか分からないので抵抗がなかったんですよ。日本語の詞だと、「君が好きだ」っていうラブソングにしても、意味が分かっちゃうので恥ずかしくて歌えない。SHOGUNの曲で、英語詞でいまだに何を歌ってるのか分からない曲っていっぱいありますよ。
−−この曲は97年に缶コーヒーのCMソングに採用されましたね。
「JACK」という缶コーヒーのCM曲だったので、(サビ部分の)「BAD CITY」っていうのを「JACK CITY」ってとり直したんです。「この部分だけ使いたいから、詞を『JACK CITY』に変えてくれる?」って言われて「はい、わかりました」って(笑い)。そのへんは、僕らはスタジオミュージシャンとしていろんな人のレコーディングをしてるから、“これしかできない”っていうこだわりがないんですよ。
−−原曲の発売から35年をへて、これらの楽曲をレコーディングし直してみていかがでしたか?
レコード会社から「アレンジは昔のままでお願いします」って言われて。そのへんも“これじゃなきゃダメ”っていうこだわりがないんです。だから、歌も昔のままやればいいんだと思って。でも、今回はふてくされてはないですよ(笑い)。それで、昔の音源をさんざん聴いて、初めて自分のギターを自分でコピーして。懐かしい半面、新鮮で面白かったです。「BAD CITY」は“なぜ当時これがヒットしたんだろう”って分析に入ったことがあって、考えたら、ロックな音楽にブラス(金管楽器)が入ってることが日本では当時あまりなかったんですよね。それを臆面もなくやったから、結構新鮮で、今も「古くない」っていわれるのかなって。
−−SHOGUNは当時、フュージョンやAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)というジャンルに位置づけられていましたね。サウンド面でこだわっていたことはあったんでしょうか。
まったくないです。AORをやってるという意識もないですし。どんな音楽でも演歌でもいい曲はいい。(演歌の)石川さゆりさんとか大好きだし。僕は歌モノの曲を作ったりする中でメロディーがやっぱり大事だと思うんです。ヒットしている曲って歌謡曲も含めてやっぱりメロディーがいいし、AKB48とかも僕は好きで、パッと反応しちゃう。ただ、都会の摩天楼みたいな夜景が浮かんでくるようなサウンドと、ウエストコーストのカラッとしたサウンド、その両極端が僕は好きかな。
−−5月末に日比谷野外大音楽堂(東京都千代田区)でクリエイションとの対バンライブが行われますが、クリエイションとの対バンはセミプロ時代以来で、プロになってからは初めてだそうですね。
クリエイションの竹田(和夫)くんは、昔対バンでよく出ていたとき、「コイツ、ギターうまいなあ」って思いながら、半分やっかみながら(笑い)意識していたことは確かで、それ以来40年近く会ってないので、すごく楽しみです。僕らのステージは、原田真二さんがゲストで何曲か入って、そのときはSHOGUNがバックに回って。あとは今回のアルバムの曲が中心になると思うんですけど、レコーディングでカッチリしたものを作ると、ライブでそれをぶち壊したくなるんですね。ライブってやっぱり生き物だと思うので、そのへんを楽しみにしていただきたいと思います。
<プロフィル>
1978年、芳野藤丸さん(ギター&ボーカル)、大谷和夫さん(キーボード)、長岡道夫(ミッチー長岡)さん(ベース&ボーカル)を中心に、SHOGUNの前身バンド・ONE LINE BAND(ワン・ライン・バンド)を結成し、79年にSHOGUNへ改名。同年4月、ドラマ「俺たちは天使だ!」の主題歌となったデビュー曲「男達のメロディー」をリリース。同年10月には松田優作さんの主演ドラマ「探偵物語」のオープニングテーマ「BAD CITY」とエンディングテーマ「LONELY MAN」の2曲をシングルとしてリリース。現メンバーは、芳野さん、ミッチー長岡さん、岡本郭男さん(ドラム)、佐倉一樹さん(キーボード)の4人。5月24日に日比谷野外音楽堂(東京都千代田区)でクリエイションとの対バンライブを開催予定。芳野さんが初めてハマったポップカルチャーは、18歳ころから好きだったというエリック・クラプトンさん。「僕はビートルズ世代なので、ビートルズは別格として、この年になるまでやり続けてるクラプトンはすごいと思う。ギターの音色も歌声も好きですね」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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