注目映画紹介:「たまこラブストーリー」 少女が少し大人になる姿を描くどこか切ない青春物語

(C)京都アニメーション/うさぎ山商店街
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(C)京都アニメーション/うさぎ山商店街

 2013年1~3月に放送され人気を博したテレビアニメ「たまこまーけっと」の劇場版アニメ「たまこラブストーリー」が公開中だ。「たまこまーけっと」は、「けいおん!」など多くのヒット作を生み出した京都アニメーション制作のオリジナル作で、とある街にある「うさぎ山商店街」の餅屋の娘・北白川たまこが、人の言葉を話す不思議な鳥デラ・モチマッヅィと出会ったことから巻き起こる不思議な出来事や商店街の人たちの絆を描いている。劇場版「たまこラブストーリー」はテレビシリーズの続編となる新作で、たまこの恋愛を中心に将来を考える時期に来たヒロインたちの変化や成長、揺れ動く心情などを描いている。「けいおん!」などで知られる山田尚子監督が手がけ、脚本は吉田玲子さん、キャラクターデザインは堀口悠紀子さんと、テレビシリーズと同じメンバーが担当。主要声優も洲崎綾さん、田丸篤志さん、金子有希さん、長妻樹里さん、山下百合恵さんとおなじみの5人が顔をそろえている。

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 うさぎ山商店街にある餅屋「たまや」の娘で、高校3年生になった北白川たまこ(声・洲崎さん)の頭の中は、相変わらず餅のことばかり。ある日の帰り道、たまこやみどり(声・金子さん)たち仲よし4人組は進路について話をする。みんなは将来について真剣に考え、たまこは何気なく「将来は家業を継ぐ」と答えた。同じころ、たまこの家の向かいに住む幼なじみの大路もち蔵(声・田丸さん)もある決心をしていた。周囲の人や状況が変わっていくことで、たまこの心は揺れ始め……というストーリー。

 テレビシリーズを見ていた人にとっては、少々、意外な印象を受ける内容かもしれない。劇場版アニメ化にあたって恋愛要素の薄かったテレビシリーズから一転、タイトルに「ラブストーリー」の文字が入ったことからも分かる通り、たまこにまつわる恋愛話が展開する。誰もが青春時代に体験したような淡い恋心が男女両方の視点から緻密かつ丁寧な構成で描かれていることに加え、将来について考え揺れ動く登場人物たちの心情なども繊細に描写されるなど、見る者をどこか青春の甘酸っぱい気分にさせる。

 演出面では、ハンディーカメラで撮影したかのような映像が、どこか青春映画のような雰囲気を醸し出しているのが印象的。同時上映は短編アニメ「南の島のデラちゃん」。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽、ゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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