高橋優:被災地を巡って「戒められた」 新曲「太陽と花」リリース

ニューシングル「太陽と花」について語った高橋優さん
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ニューシングル「太陽と花」について語った高橋優さん

 昨年初の日本武道館公演を成功させた、シンガー・ソングライターの高橋優が、上野樹里の主演テレビドラマ「アリスの棘」の主題歌として話題を集めている「太陽と花」をシングルとしてリリース。楽曲の話に加えて、初回盤DVDに収録された「高橋優2014東北ライブハウス大作戦ツアー(宮古~大船渡~石巻)“一人旅”完全密着5日間」について、話を聞いた。

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 −−「アリスの棘」は、復讐(ふくしゅう)というダークな側面が印象として強いドラマですが、主題歌のタイトル「太陽と花」は、逆に明るくてポジティブな印象の言葉ですよね。

 僕は、その復讐という部分にはフォーカスせず、自分なりの切り口で奏でたいと思って作ったんです。上野樹里さん演じる主人公が行う復讐は見方を変えれば、ただ寡黙に仕事を成し遂げることで、同じ悲しみを味わう人をなくそうとしている。そういう観点から、人知れず頑張って、それが巡り巡って誰かの笑顔につながるようなことをしている人は、きっとたくさんいるんじゃないかと思いました。その最たるものということで、太陽と花というモチーフが浮かびました。

 −−その太陽と花を、具体的に例えると?

 この曲を書くときに、まず僕を支えてくれているスタッフの存在が最初に浮かびました。その人たちの光に照らされて、自分という人間は、ようやくステージの上で咲くことができているんです。それを忘れてはいけないなって。それでいうと家族もそうだし、友だちもそうだし……。僕を取り巻いてくれている、一人一人の存在すべてが、僕にとって太陽のような存在です。

 −−人は一人では何もできないということですか?

 それは、僕がやっている音楽活動に限らず、全員がそうだと思いますね。たとえば僕自身は、自ら光ることはできないけど、太陽の光を反射して光ることのできる、月だという考え方もあって。太陽の光はまぶしすぎて直視できなくても、月光なら優しい光だと感じる人もいるわけで。そうやってお互いに反射し合うことで、僕が照らせる闇もあるし、他の人でも誰かを照らすことができるんです。要は、むだなものはないということ。花は、枯れても胞子を飛ばして別の場所で咲き、その花の栄養をみつばちが吸って、みつばちからローヤルゼリーを集めて人間が栄養ドリンクとして飲んだりしているし(笑い)。そういうサイクルがあるということを、歌いたいと思いました。

 −−シングル「太陽と花」の初回盤に付いているDVDには、3月に行った「高橋優2014東北ライブハウス大作戦ツアー」の密着映像を収録していますね。このツアーのことを教えてください。

 「東北ライブハウス大作戦」というのは、東日本大震災で被害にあった、東北三陸沖沿岸地域にライブハウスを建設することを目的としたプロジェクトです。一昨年の12月に、プロジェクトメンバーの一人からお話を聞いて、感銘を受けてぜひ協力したいと思いました。でも、スケジュールの都合が合わず、行けずじまいでズルズルときてしまっていて。それがようやくかなったものだったので、やることができてすごくうれしかったです。

 −−実際に宮古、大船渡、石巻に行って、どんなことを感じましたか。

 “戒められた”感じでしたね。一回来たくらいで分かった気になるなよ、といわれたようでした。それくらい根深くて長期にわたるテーマが、そこにはある気がしました。復興しているところもあるんだけど、そのままになっていて、草木がぼうぼうに生えているところもたくさんあって……。想像を絶するようなつらいことがたくさん起きたその場所で、何が起きたのかをずっと考え続けていました。歌っているときだけは考えないようにしていたけど、移動中とか周辺を回っているときは、ただずっと考えていました……。明日また起きるかもしれない、自分の身に降りかかるかもしれない、映画以上の残酷なえぐい別れが起きるんだという危機感を、実際に行くとすごく感じました。

 −−そうやって高橋さんが、実際に東北を回ってライブをするなどの活動は、「太陽と花」になぞらえるなら、花に光を当てるような活動じゃないかと思います。

 そう言ってもらえるのは、すごくうれしいです。でも、本当の太陽になるためには、それこそ身を裂くような気持ちでないと。生半可な覚悟ではいけないと思うんです。そういう意味では、僕の覚悟なんかまだまだ足りないと思っています。それこそ、このことを家訓として、自分の何代も先まで残していくくらいの覚悟がないとって思いますね。

 −−でも、また機会があったら行きたいですか?

 何度でも行きたいですし、行くつもりです。いろいろ分かったふうなことを言いましたけど、ぜんぶ自分の思ったことでしかないですから。もっともっといろんな人の経験や、これからに向けての思いを受け取らないと、現地の人を励ますとか、現地の人たちと何かやってアクションを起こすとかっていうことは、えらそうな顔をしてやれないですからね。もっといっぱい話を聞いて、その上で自分にやれそうなことを、自分なりにしっかりと考えていきたいと思っています。

 <プロフィル>

 1983年12月26日生まれ、秋田県出身。インディーズ時代に「福笑い」が、東京メトロのCMソングに抜てきされて注目を集め、2010年にシングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。映画「桐島、部活やめるってよ」の主題歌「陽はまた昇る」などをリリース。熱くメッセージ性の強い歌詞と、アコースティックギターを中心にしたサウンドで、“リアルタイムシンガー・ソングライター”と評される。昨年開催された日本武道館(東京都千代田区)での公演の模様を収録したDVDとブルーレイディスク(BD)「高橋優2013日本武道館 YOU CAN BREAK THE SILENCE IN BUDOKAN」をリリース。この夏は、7月19日に開催される「Amuse Fes 2014 BBQ inつま恋 ~僕らのビートを喰らえコラ!~」、7月19日と20日に開催される「JOIN ALIVE」、9月27、28日に開催される「風とロック芋煮会2014 風とロックBASEBALL」などに出演する。

 (インタビュー・文:榑林史章)

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