ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
ドラマ化もされた「チーム・バチスタ」シリーズの10年後を描いた海堂尊さんの新作「アクアマリンの神殿」(角川書店、7月2日発売)は、「ナイチンゲールの沈黙」や「モルフェウスの領域」などに登場する少年・佐々木アツシが主人公となる先端医療エンターテインメント小説だ。世界初の「コールドスリープ<凍眠>」から目覚め、未来医学探究センターで暮らす少年・佐々木アツシは、深夜にある美しい女性を見守っていたが、彼女の目覚めが近づくにつれて重大な決断を迫られ、苦悩することになる……というストーリー。マンガ家の深海魚(ふかみ・さかな)さんのカラーイラスト付きで、全24回連載する。
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◇夏美の学園生活編 2 治外法権的な特権階級
優等生は早々に出来の悪い教師に気づいて、教師の間違いを自分で補正することで落とし穴から逃れる。哀れなのは教えられたことが間違っていることに気づかないまま、忠実に鵜呑みにしてしまうような真面目な生徒だ。そう考えると、麻生夏美の評判が上がり、それに伴い桜宮学園中等部の教師の評価が上昇したというこの現状は、果たして世のため人のためになるのかどうか。
ただし、いずれにしてもそれは麻生夏美の罪ではない。
期末試験が終わると、麻生夏美は早々に内部進学の意思を公言したため、特待生扱いされた。
理由を尋ねられて「だってラクチンなんだもん」と言ったとか、言わなかったとか。
中高一貫の私立は成績がよければ天下御免だ。彼女が望めば今すぐにでも卒業証書さえ発行しかねない。結果がすべて、卒業証書の一枚や二枚なんてほほいのほい、桜宮学園はそういう学校だ。
でも桜宮学園も日本社会に属している以上、それはこの社会の縮図でしかない。
麻生夏美の学園内地位は治外法権的な特権階級となったが、とんでもないことに彼女はその特権をフルに活用する帝王学の素養までも自分勝手に身につけていた。
ふつうなら優秀な人間は、周囲からの疎外を恐れて、身の丈を低くし必要以上に自分を小さく見せるよう腐心するものだ。そう、ちょうど今のぼくのように。
でも麻生夏美はそんな見せかけの謙譲さとは正反対の雰囲気を漂わせ、平然としていた。
<毎日正午掲載・明日へ続く>
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