ダンダダン
第5話「タマはどこじゃんよ」
10月31日(木)放送分
いよいよ大詰めを迎えたワールドカップ(W杯)ブラジル大会。予選リーグで敗退したものの、かつてW杯出場さえ夢だった日本代表は5大会連続で出場を果たし、サッカーは国民的な注目を集めるスポーツにまで成長した。日本サッカーの成長、人気上昇とともにマンガの世界でも多彩な作品が生まれてきた。選手の活躍を描くだけではなく、監督や裏方のスタッフが主人公のマンガも登場している。「キャプテン翼」だけではない、進化を続けるサッカーマンガの世界を紹介する。
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サッカーの普及に貢献した“バイブル”といえば、1981年に週刊少年ジャンプで連載が始まった「キャプテン翼」だ。W杯での優勝を夢見る少年・大空翼が、ずば抜けたテクニックでライバルを次々と倒していく……という内容で、空前のサッカーブームを巻き起こし、Jリーグの選手や関係者らも、翼のヒットがサッカーの普及を後押ししたことを認めている。日本だけでなく海外でもアニメが放送され、世界的スター選手が好きな作品として挙げているほどだ。30年以上がたった今でも新シリーズ「ライジングサン」が連載されているのも、納得といえる。
「キャプテン翼」シリーズの初代のヒット後、1992年にはJリーグが誕生。「シュート!」(週刊少年マガジン/講談社)や「俺たちのフィールド」(週刊少年サンデー/小学館)などヒット作も次々と誕生した。共通するのは、国内でライバルらと切磋琢磨(せっさたくま)し、その後は世界に飛び出す……という流れ。日本のプロ選手が立て続けに海外リーグへ移籍するようになった時期と重なっており、「海外で日本人選手が活躍してほしい」というファンの願望が作品に反映された格好だ。
2000年の前半までは、選手の視点で描かれた作品が人気を博したが、2007年に連載が始まった「ジャイアントキリング」は、監督を主人公に据え、講談社のマンガ誌「モーニング」の看板作品になった。一見いい加減に見える青年監督が、チームの選手の能力を引き出しながら、ライバルチームの弱点を見抜き、大胆かつ緻密(ちみつ)な作戦で次々と格上チームを打ち破っていく。チームのマネジメントや移籍にも触れており、選手目線とは異なる話が中心となっている。
「ジャイアントキリング」のヒット以後は、選手の活躍を描くという一本調子ではないテーマの作品が目立つようになった。「ジャンプSQ.」(集英社)で連載され、実写映画化もされた「1/11 じゅういちぶんのいち」は、夢を追う少年のサッカー人生をメインに据えつつ、日本代表の控えゴールキーパーや、運動が苦手なサッカー少年、フリーのサッカーライターが登場し、それぞれのドラマを重層的に描いた。「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で連載中の「フットボールネーション」は、インナーマッスルの重要性などを説き、日本人と欧米人の体格の違いに触れている。人気のすそ野が広がるのに合わせて、作品のアプローチも多様になっている。
正当派ではない、独自色全開のサッカーマンガもある。その一番手といえば、月刊少年チャンピオン(秋田書店)で連載中の「ナリキン」だ。史上最年少でプロ棋士になった運動の苦手な少年が、プロサッカークラブに入団し、「ピッチ」を「盤面」に、「選手」を「駒」に見立て、活躍するという物語。主人公はプロサッカー選手なのに、運動がからっきしダメという意外性も受け、独自の世界観を確立している。横浜・F・マリノスとのタイアップによるコラボポスターも話題になった。
また、選手ではなく、プロサッカー選手の用具を管理する「ホペイロ」を主役にしたのが「カルチョな執事」(マッグガーデン)だ。能力のピークを越えたと思われたベテラン選手に、的確なスパイクを勧めて能力を引き出すなど、裏方の活躍を描いている。こちらはFC東京、味の素スタジアムが協力するなど本格的だ。プロサッカーは、選手だけで成り立つわけではないことを教えてくれる。
夢だったW杯の出場が“当たり前”になるとともに、サッカーに対するファンの目が肥え、マンガの世界でもストレートにサッカーを描くだけでなく、裏方にもスポットが当たるようになった。今回のW杯で日本代表は悔しい結果に終わったが、サッカーマンガとともに、さらなる進化を期待したい。
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