五十嵐大介さんの同名マンガを基に女優の橋本愛さんが主演を務め、春夏秋冬の4部作で実写映画化した「リトル・フォレスト」の夏・秋編が30日に公開される。映画は、橋本さんが演じる主人公・いち子が都会で自分の居場所を見つけられずに故郷に戻り、大自然の中で自給自足の生活をしながら生きる力をつけていく物語。撮影は岩手県奥州市などで約1年かけて行われ、東北の四季の美しさが存分に楽しめるほか、旬の食材を生かした日々の食事や料理なども描く。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で人気を集めた橋本さんが、再び岩手県を舞台にした物語で素朴な少女を好演している。
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都会に出てはみたものの、なじめないでいたいち子(橋本さん)は、故郷の東北の小さな集落・小森に帰ってくる。小森の暮らしは、周辺にスーパーやコンビニがないため、自分たちで農作物を作ったり、野山で季節の食材を採ってきて食事を作ったりと自給自足に近い。不便さを感じながらも夏にはグミジャムや岩魚の塩焼き、秋はくるみごはんや栗の渋皮煮など季節の恵みが食べられる。自然の厳しさや季節の移ろいを感じつつ、いち子は人生と向き合い、次の一歩を踏み出す勇気を充電していく……という展開。
田舎や料理を扱った映画は数あれど、かつてここまで数多く紹介した作品はなかったのではないだろうか。森や田畑に囲まれた一軒家で暮らす主人公が、稲作をしたり、露地野菜を栽培したりし、自然の恵みを生かした食事を作る自給自足に近い生活を営む姿を描き、見ているこちら側まで心が洗われるような気分になる。物語はあるものの、どちらかというと橋本さんによるレシピの説明と調理の様子を中心に、米作りにいそしむ姿がメイン。ここまで食べ物にこだわり抜かれると逆に物語があまりない方が心地いい。東北地方で1年かけてロケをしただけあり、四季折々の美しい自然や景色、ゆったりと流れる時間、生き物たちの姿が、何かと忙しい現代人の疲れた心を癒やしてくれる。ナチュラルな橋本さんの演技には好感が持て、これでもかと出てくる料理の数々に思わずごくりとつばを飲み込んだ。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。4部作は2回に分けて公開され、冬・春編は2015年2月14日に公開予定。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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