話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、孤島を舞台に吸血鬼と人類の死闘を描き、「驚愕の最終回」を迎えた松本光司さんのホラーマンガ「彼岸島」シリーズです。サブタイトルを「最後の47日間」から「48日後…」に改題して新章に突入した同作の魅力について、講談社ヤングマガジン編集部の安永尚人さんに聞きました。
ウナギノボリ
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−−この作品の魅力は?
吸血鬼の棲(す)む絶海の孤島、彼岸島。その呪われた島を舞台に吸血鬼のボス雅と、主人公の宮本明が人類の存亡をかけて戦うサバイバルホラーです。と言いつつも、今回新連載になったシリーズ「48日後…」では、ついに島を出て本土へ来てしまいました。主要なキャラも、ずいぶんと死にました。前シリーズ「最後の47日間」は、吸血鬼の「最後」かと思いきや、人類の「最後」だった。まさに、この後どうなるか分からない、担当でも予想できない「お先まっくら」な感じが個人的には一番の魅力です。でも作品の楽しみ方は、人それぞれ、違います。特にこの「彼岸島」は、編集部側が思いもつかなかった楽しみ方をしている方々も多い。そのハイブリッド感、カオス感も、また魅力なのかも知れません。
−−作品が生まれたきっかけは?
前作「クーデタークラブ」と同じく、閉鎖空間を舞台にすることは事前に決まっていました。問題は、そこにどんな存在を登場させるかでした。一方、松本先生はゾンビ好きで以前よりゾンビものを描きたいという希望がありました。ただ、ゾンビは知性が乏しく心情表現や会話ができない。だからゾンビ的な表現ができつつも、知性や感情を描ける敵として「吸血鬼」という存在を最終的に採用することになりました。私はホラーが苦手なので、怖い作品を担当するのに若干抵抗はありましたが(笑い)。
−−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。
連載スタート前にネームを書きためるため松本先生には数週間、講談社に泊まり込んでもらいました。ただ数週間も貸し切りにできる会議室は社内になかった。そこで庶務部に「どこでもいいから」とお願いしたところ、講談社の敷地内に明治期の洋館があって、そこの一室ならOKということになりました。今はもう取り壊されてありませんが、まさに吸血鬼が夜な夜な血を求めて現れそうな建物でした。かなり年季が入っていて、ゲーム「バイオハザード」の最初に登場する洋館にかなり感じが似ていた。そこに寝泊まりして、冒頭10話分くらいのネームを書き上げてもらったわけです。
松本先生は「インスピレーションが湧く」なんて面白がっていましたが、怖がりな私は正直ビビッていました。深夜の打ち合わせや夜食の差し入れをする際に、ハアハアドキドキしながら洋館の玄関をくぐったことを覚えています。扉を開ける時、ゲームと同じ、あのギィィィって音がするんです。毎回、扉を開ける度に緊張する。二度ほど扉の立てつけが悪くて閉じ込められたとカン違いしたことがありました。その時は、いい大人がパニックになって、刑事ドラマよろしく扉を蹴破ってしまった。松本先生にはナイショにしてますけど。「彼岸島」1巻を読み返すたびに、あのトラウマがよみがえってきます。
−−新章「48日後…」の1話では、明が丸太を持って登場しました。ズバリ狙いは?
明は雅との死闘において脚を悪くしています。そのため、長い旅路では寄りかかれる杖があった方が楽なんです。杖にしては少し太すぎるきらいはありますが、そこは「彼岸島」ですからご理解いただければ助かります。今回、あまり武器としては使用しません。なぜなら、もっと強力な武器を明は手に入れていますので。それに関しては第2話を読んでいただければ、と。
−−今後の展開は?
全然わかりません、まさに「お先まっくら」です。でも雅がいると思われる東京へ、明も上京する予定ではいます。
−−読者へ一言お願いします。
ドラマ続編&劇場映画などが決まっています。先日、少し映像を見させてもらいましたが、「スゲェ!」の一言でした。早く読者の皆様にお見せして「でかした!」と言ってもらいたいです。
講談社 ヤングマガジン編集部 安永尚人
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