元モーニング娘。のリーダーの高橋愛さんが初主演したから揚げ専門店発祥の地である大分県宇佐市が舞台の映画「カラアゲ★USA」(瀬木直貴監督)が20日から全国で公開された。初主演のプレッシャーをものともせず、から揚げ作りや英語のせりふなど、体当たりで臨んだという高橋さんに話を聞いた。
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−−映画初主演ということですが、プレッシャーはありましたか?
最初はプレッシャーしかなかったです(笑い)。でも、すごく光栄なことだと思ったし、宇佐市のみなさんがすごく優しくて協力的だったので、一人で抱え込んでいる場合じゃないと思って頑張ることができました。
宇佐市を挙げてのバックアップ体制は、本当にすごくて。(劇中の)「カラアゲ☆カーニバル」や相撲大会のシーンには、千数百人という人がボランティアでエキストラ出演してくださいました。宇佐市で試写会をやったときは、見に来た方の半数近くがエキストラで出演している方だったほど。その後のパーティーでも、みなさんが「愛ちゃん、愛ちゃん」って気軽に声を掛けてくれて。自分の地元以外で、こんなにフレンドリーに優しくしてもらったことはあまりないので、第2の故郷ができたみたいでうれしかったです。
−−英語のせりふがたくさんありましたが、苦労しましたか?
はい、すごく(笑い)。しゃべれはしないんですけど、興味はあったので挑戦したいと思って。しかも、英語だけでも大変なのに、宇佐の方言も覚えなくてはいけなくて。ボランティアで英語や方言の指導をしてくれた方には、本当に感謝です。最初は、とにかく音で覚えようと思って、録音してもらったものをお風呂に入っているときもずっと聴いていました。「(モー娘。のプロデューサーの)つんく♂さんありがとうございました」って感じですね。
−−それは、どういう意味で?
モー娘。時代は、曲を覚えるのにまずつんく♂さんが歌った仮歌を、とにかく何度も聴いて音で覚えてきたんです。モー娘。の10年間、聴いて覚えるやり方で鍛えられていたので、英語のせりふや宇佐の方言もそのやり方で乗り切ることができました。
−−印象に残っているシーンや、お好きなシーンはどこですか。
おばあちゃん役の渡辺美佐子さんと戦争跡地で会話をするシーンがあるのですが、手を合わせているだけでいろんな思いがこみあげてくるようでした。ストーリー上、孫としてはおばあちゃんの話で少し複雑な心境になるというオチもあるんですが、景色や雰囲気を含めて好きなシーンの一つですね。
−−映画の端々に映る田園風景はすごく広大で、まっすぐ伸びる一本道のシーンなどは、タイトルが「カラアゲ★USA」だけに米国の風景と重なる印象もありました。
きっとそういう意図もあったと思います。今はCG(コンピューターグラフィックス)とか合成が普通に使われている時代ですけれど、この映画にはそういうのが一切なくて。冒頭のシーンも実際に「カラアゲUSA」という看板を立てて撮影したんですよ。監督のこだわりとしては、単なる観光PRみたいな映像にはしたくなかったということ。監督自ら足を運んで、実際に見ていいなと思った風景でロケをしています。その話を聞いて、「だから映像がきれいなんだな」って理由が分かりました。
これも監督がおっしゃっていたんですけど、みんなが持っている故郷の風景があって、東京出身の人でも、故郷といったらこういう感じ、と思い描ける風景があると思うんです。宇佐を通して故郷を思い出して、ちょっと帰郷してみたり、地元に電話してみたりしてもらったらいいねって。
−−家族の存在というものも、映画の中で描かれていますね。
家族のためという思いがあればこそ、自分の苦手を克服するし、店を建て直すために頑張るし。それぞれが抱えているものもあるんだけれど、それを包み込んで理解してあげられるのも家族だし。(高橋さんが演じる)彩音ちゃん自身がおせっかいな人柄というのもあるけれど、そういった家族関係みたいなものも、自分の家族と重ねながら見てもらえたらうれしいです。
−−彩音がから揚げを作るシーンがたくさんありますが、あれは実際に作ったのですか?
はい。実際に宇佐市にある「とりあん」さんというカラアゲ専門店の方が教えてくれました。私の場合、最初はから揚げが苦手で、それを克服していくという役なので、実際に撮影しながら徐々に教わっていった感じです。
−−教わったから揚げは自宅でも作りましたか?
1回、作りましたよ。揚げる前にまぶすだけという、魔法の粉があって(笑い)。宇佐でそれを買って帰ったので。(食べた人が)みんな、おいしいと言ってくれました。
−−でも、せっかく「とりあん」さんのレシピを覚えたんですから……。
レシピでやろうと思ったんですけど、いろいろ用意しなくちゃいけなくて、お家でやるにはけっこうハードルが高いんですよ。それに、油の温度は172度と決まっていて、お家でそんなに細かく(温度が)分からないじゃないですか。
−−油の温度を計る温度計がありますけど。
そうか、温度計を買えばいいんだ(笑い)。っていうか、普段まったく料理をやってないのは、もうバレバレなんでいいんですけどね(笑い)。私の中でお母さんのから揚げが一番なんですけど、宇佐のから揚げはそういうのとは別ものという感じで。ショウガが利いているお店があったりとか、お店によって味付けがいろいろで、どれも本当においしいので、ぜひ一度食べに行ってください!
−−映画の中で、から揚げとフライドチキンは何が違うのか議論するシーンもありましたが、結局何が違うんでしょうか。
あのシーンでは、何がどう違うのか結局のところ結論が出ないんです。宇佐市では昔からから揚げが愛され続けていて、きっと何がどう違うとかっていう次元じゃないんですよね。そういう、ふわっとしたところもいいんじゃないかと(笑い)。
−−さて今後ですが、次に映画に出るならどういう役がいいですか?
今回改めて思ったのは、演じるということは自分自身と向き合うということだなって。「カラアゲ★USA」の彩音ちゃんは思い立ったらすぐ行動しちゃう子で、周りから「もうちょっと考えたほうがいいんじゃない?」って言われても、かまわずアメリカに行っちゃったし。私も後先考えずにオーディションを受けちゃうところがあるので、そういう面は似ていると思いました。完全に自分と重なるわけではないけど、自分もそうかも、いや自分はちょっと違うかも、とか少しずつ新たな自分を発見していくことができたと思っています。そういう意味では、いい子じゃない役っていうか、ちょっととがった感じの役をやってみたいですね。きっと私の中のどこかには、まだ気付いていないそういう部分が、少なからずあると思うので。
<プロフィル>
たかはし・あい 1986年9月14日生まれ、福井県出身。アイドルグループ「モーニング娘。(モー娘。)」の第5期メンバーとして10年間在籍。2007年から第6代リーダー及びHello!Projectのリーダーとして活動した。11年9月30日にモー娘。卒業後は、以前から目指していた演技の仕事に力を入れる。また、地元・福井の「ふくいブランド大使」としても活動。ミュージカル「赤毛のアン」にも出演。今年2月にお笑いタレントのあべこうじさんと結婚した。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
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