人気長寿番組「笑点」(日本テレビ系)でもおなじみの落語家の三遊亭円楽さん(64)がプロデュースする年1回の落語界の大イベント「第8回博多・天神落語まつり」が1~3日、福岡市内のホール各所で繰り広げられる。東西の人気、実力のある落語家約50人が一堂に集まる唯一の機会でもある。師匠である先代の五代目圓楽さんが亡くなって5年。「落語界は一つになって頑張らないと」と尽力する円楽さんに聞いた。
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−−「博多・天神落語まつり」は、笑点メンバー全員はもちろん、東京からは落語協会会長の柳亭市馬さんをはじめ、春風亭小朝さん、林家正蔵さん、立川志の輔さん、立川談春さん、地元・福岡出身の立川生志さんら。上方からは上方落語協会会長の桂文枝さん、副会長の笑福亭鶴瓶さん、桂ざこばさん、笑福亭鶴光さん、桂文珍さん、桂米團治さんらが出演。豪華な顔ぶれですね。
円楽さん:お陰で東西交流も増えたし、九州での落語会も増えたし、いいことづくめですよ。出演者も楽しみにしていて、楽しみってことは、テンションが上がって、芸にも影響してくる。最近ねえ、好きな言葉ができてね。「寄り添う」って言葉。お客さんも落語に寄り添い、俺たちも落語に寄り添って、落語っていうコンテンツの中で、いい空気と、いい空間が生まれれば、それでいいんだと。
−−落語界は東京に4派(落語協会、落語芸術協会、立川流、五代目圓楽一門)、そして上方と分かれてますが、師匠は以前から「落語界は一つに」と話されていますね。
円楽さん:そうそう。だからね、うちの師匠(五代目圓楽さん)や(立川)談志師匠は、個性や力が強すぎた。だって、死ぬまで誰も文句言えなかったじゃない。陰じゃ言ってるけど。それが力ですよ。(亡くなって)それが取れたあとに何があるか。もうやっぱり融合しかないでしょう。やっぱり一つになることですよ。戦う必要はないんですよ。戦うのは、芸で戦えばいい。だからもうね、オレに言わせりゃ、落語協会も芸術協会も立川も圓楽一門も、上方もなし。日本の伝統文化の中に、落語というこんな素晴らしいエンターテインメントがあるんだっていうことを、落語家みんなでやんなきゃだめ。伝統芸でありながら、こんなに発展するものはないから、だから一つになっちゃえばいい。それは(桂)文枝さんとも話して、あちこちでやるべきだっていう話は出ている。いい機会ですよ。俺たちが打ち解けちゃって、落語協会だって(柳亭)市馬が会長になったぐらいだから、それでもって落語家という部分でもって、何か組織作りしちゃえばいいんじゃないかなって思ってんだ。
−−そういう雰囲気は以前はなかなかありませんでした。
円楽さん:だからこの間の氷水かぶる(「アイス・バケツ・チャレンジ」)でも、文枝会長が指名したのが、市馬、歌丸師匠は無理だろうから小遊三さん(笑い)、(立川)志の輔、オレ。「いつか落語は一つの団体になりましょう」と見事に表明してるでしょ、あれは言わば示唆ですよ。もう急がないと。オレも60も半ばになってくるんだから。「博多・天神落語まつりイン東京」をやったっていいんだと。
−−それにしても、このイベントでしか見られない顔合わせで、しかも会のタイトルが面白いですね。
円楽さん:うちの弟子だった放送作家やってる石田(章洋)君(TBS系「世界ふしぎ発見!」などを担当)が、「企画は、ひと言。」っていう(同名の著書も出版)けど、ホントに一言なんですよ。「ある意味危ない東西会」(ざこば、鶴光、談春、春風亭昇太ほか)とか、見たら個性の固まりでしょ。ダメなものは呼ばない、琴線に触れる人しか呼ばないし、大阪のことは分からないから(笑福亭)鶴瓶に聞いてみたり。鶴瓶も情報を集めるでしょ。そうすると鶴瓶も大阪の若手のことが気になる。そうすると副会長の役目として情報を集めるわけです。
−−東京、大阪ではなかなかできませんね。
円楽さん:福岡ってね、暮らしやすくてコンパクトな街ですよ。ホールもコンパクトにあって、すべてそろってる。東京だったらホールがそろうのは銀座。だから大銀座(落語祭)がそうだった。(春風亭)小朝だってメールのやりとりしてるけど、またやりたくなったなあって言ってるんだもん。
春風亭昇太さん:(隣で出番を待っていたが加わり)福岡は落語じゃなくても街が観光地だから、結構遠くからもお客さんが来て、福岡の街も楽しむ。いいところですね。
−−打ち上げの環境としても環境良すぎますね。
円楽さん:環境良すぎて、不良学校の修学旅行になっちゃう(笑い)。
−−ところで、「笑点」が木久扇師匠も復帰されて好視聴率が続いてます。
円楽さん:「笑点」っていうのは大喜利という余芸だけれど、落語家にとってありがたいコンテンツ。落語家が落語家として、そのエッセンスである「くすぐり」をどんどん出していくという点では大事なコンテンツだよね。この間、博多・天神落語まつりのことあいさつで言ったら、ホームページにいきなり5万アクセスあったらしい。すごいよね。普段は1500ぐらいなのに。「笑点」の影響はすごいよね。だって、「円楽」っていう名前がわずか3年で浸透したもんね。まだ「楽太郎」って言う人もいるけど。これはありがたかった。(隣の昇太さんに)だから柳昇(五代目春風亭柳昇・故人、昇太さんの師匠)になっちゃえ(笑い)。
昇太さん:なるなら今ですね。
円楽さん:「笑点」でバーッと言えば、3年で柳昇だよ。(2年後の「笑点」)50周年を機によ。
昇太さん:僕にはあと結婚という技もあるんですよ。
円楽さん:じゃあ、結婚もしちゃえばいい。笑点50周年、柳昇襲名、結婚って(笑い)。
昇太さん:ハハハ(笑い)。
円楽さん:僕も来年65歳になるけど、同級生が改めて落語を聴き始めたもんね。俺の会に来るようになった、やることねえから(笑い)。寄席に行く人もいるけど、そばで見られるとなるとお客さん、来てくれるんですよ。時代とともに変わってくるから、それをかぎ取りながら、攻める知恵とアイデアとスタッフを持つことですね。博多・天神落語まつりがうまくいってるのはスタッフ(のお陰)ですもの。ありがたいよね。出てくれる人も喜んでくれて、出たいというオファーもあるし、うれしい悲鳴です。最初は10年って思ったけど、いけるとこまでやろうと思います。もう来年のことを考えてますよ。
*……「第8回博多・天神落語まつり」は11月1~3日、福岡市内各地で開催。2日午後1時からは出張公演「博多・天神落語まつりin鹿児島」が鹿児島市の宝山ホールで行われる。詳しくはhttp://rakugomatsuri.com/
(油井雅和/毎日新聞)