最近テレビやCMでちょくちょく見かけるけれど、実はあんまりよく知らない……。そんな、いまさら聞けない“ネクストブレーク芸人”の基礎知識を、本人の言葉を交えて紹介。今回はお笑いコンビ「シソンヌ」をピックアップする。コント日本一を決める「キングオブコント2014」(TBS系)の7代目キングの座を勝ち取ったばかりもシソンヌは、1日2本程度だった仕事量が優勝後11日たった取材時には、一気に5、6本と約3倍に急増したといい、今後テレビや雑誌などに続々と登場することになるだろう2人に、これまでの苦労やキングオブコントでの思い、お笑いへのこだわり、ライバルの存在などを聞いた。
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じろうさん(じろう。1978年7月14日生まれ、青森県出身。趣味はXbox360、FPSゲーム、麻雀)と、長谷川忍さん(はせがわ・しのぶ。78年8月6日生まれ、静岡県出身。趣味はファッション、海外セレブのゴシップ、そば屋巡り、アメコミTOY、アメコミフィギュア)のお笑いコンビで、NSC東京校11期生、よしもと所属。06年にコンビを結成し、09年のキングオブコントで準決勝に進出して今年、王者に輝いた。
2人はNSC(吉本興業の養成所)で知り合って、コンビを結成して9年目。小学生の時からお笑いに興味があったという長谷川さんは「高校生の時にダウンタウンさんが『NSCなんか入っても芸人になれない』と言っているのを見て、逆に『お笑いに学校があるんだ』と知って夢が広がった」という。一方、じろうさんはお笑い芸人になりたいと思ってはいなかったが、大学の時にコントユニット「シティボーイズ」に夢中になったといい、「自分でオーディションとかも出ていたんですが、らちが明かないのでNSCに入った。コントがしたかった」という。
コンビ名は、フランス語のクラシックバレエの技名「シソンヌ」が由来。初めてネタ合わせした次の日にコンビ名を決めようと参考にしたのが、じろうさんが持ってきたクラシックバレエの用語辞典だったという。「両脚で踏み切ってジャンプをし、片脚ずつ着地するジャンプの動き」という意味だというが、じろうさんは「なんとなく音の響きがよかった」という理由のほか、「その頃、バレリーナと知り合いになりたい、出会いたいと思っていたんですよ」と当時の“下心”も明かした。「バレエを題材とした『昴』という(曽田正人さんが「ビッグコミックスピリッツ』で連載していた)マンガがすごく好きで、いいなと思っていた。実際は出会えなかったんですが(笑い)」と話す。
解散の危機は今までなかったが、長谷川さんは「なかなか人気も出ないですし、仕事も増えなかったので、焦っている時期」が結成3、4年目にあったと明かす。「ちょうどネタ番組が多くあったとき、そのオーディションに全然引っかかれなくて、自分達と同じくらいの(キャリア)コンビがちらほら出ていたので、面白い自信はあったのに、観客が見たいものは違うのかなって(落ち込んだ)。相方に『周りがテレビ出てるし、俺たちも出たいからこうしようぜ』とか話していた」と振り返る。
じろうさんは「僕は別に辞めるなんて考えていなかった。解散するやつらが周りにいたけれど、そんな疲れることするくらいなら、もっと面白いことにカロリーを使ったがいい」といい、「面白ければ、必ず世に出られる世界だ。苦労しても面白い先輩たちはみんな世に出てる。その正義だけを信じていた。自分たちがそんなにすぐ出られるタイプじゃないのは分かっていたので」と熱く語る。
一方で、同期の活躍は「うれしさもありましたが、悔しい思いがありました」と振り返るじろうさん。「お客さんからの人気が出てきていた頃、僕らがバラエティー番組のレギュラーメンバーに選ばれているといううわさを聞いて、『やっと届くところに届いたのか』と思っていたら、直前で落とされて、当時『ジャングルポケット』の太田(博久さん)、『チョコレートプラネット』の松尾(駿さん)、『バース』の近藤(裕希さん)と4人で住んでいた頃、2人がその番組のレギュラーに決まって、稽古(けいこ)から帰ってきて家で録画した番組を見てるのは悔しかった」と苦笑い。しかし「ちょっとテレビに出ているより、いきなり『キングオブコント』で優勝する方が夢がある。すべて(のオーディション)に漏れ、外され(笑い)、ちょっとずつ認知されて、芸人仲間も増え、それで王者になれたので、やってきたことは間違いじゃなかった」と優勝をことさらに喜んだ。
キングオブコントで優勝したときの率直な気持ちを聞くと、長谷川さんは「泣くより、変な話、申し訳ない、僕らでいいのかと思った。今までチャンスにことごとく見捨てられてきたので、違和感と言いますか。放心状態といいますか」、一方のじろうさんは「決勝進出が決まった時は本当にやばくて泣きそうでしたが、でも決勝の日はなんか落ち着いていた。優勝はただただうれしかったですね」と笑顔を見せた。
街での反応も、長谷川さんは「今までと比べたら断然(知名度)上がっていると思います。正直8年間、外歩いても顔を指されることなんか1回もなかった。今は1人でも2人でも、一応1日1回くらいは必ずあるんですよ。名前は出てこないんでしょうね、声は掛けられないけれど気づかれている。買い物しているときに、お会計で『おめでとうございます』と言われたことも1、2回は」と語る。じろうさんは「おばさんの格好でテレビに出たので、(優勝の)次の日の新聞でトロフィーを抱えている写真もおばさん(笑い)。それでも気づく人はいるんです」と喜んだ。
番組中で応援芸人として登場した東野幸治さんをはじめ、「僕ら感謝する人はたくさんいる。博多華丸・大吉さん、南海キャンディーズの山里(亮太)さん、スリムクラブの真栄田(賢)さん、次長課長の河本(準一)さん……。名前を挙げ出したらきりがない」と長谷川さんが感謝すると、じろうさんも「焦っている時期は、先輩方が『お前ら、面白いから大丈夫だよ』と言ってくれた。それだけが本当に励みだった」と話した。
深夜ドラマ「新解釈・日本史」(MBS・TBS)での俳優業など、芝居方面でも注目を集めている2人。単独ライブ「trois(トロワ)」(15年1月28日~2月1日開催)でも、舞台のプロがスタッフとして加わり、芝居に近いコントにこだわっているという。じろうさんは「芸人さんでやりたくないという方もいますが、役者をやるのも全然嫌じゃない」と俳優業にも前向きで、優勝を決めたコントをはじめ女装をすることも多く、「女優でやっても絶対負けないと思うんですよ!」と自信を見せた。そんなじろうさんのライバルは「吉高由里子ですかね。演技派で多感な女優で売ってるとは思うんだけれど、僕の方が多感です」と宣言して、長谷川さんをあきれさせた。
長谷川さんは、キングオブコントのファイナリストでいうと「(同期の)チョコレートプラネット、ラバーガールさんは、仕事で一緒になるので気にはなりますね。比べられることも多いので、芸風は似てないんですが、ちょっと意識しちゃう」と語った。
目標とする芸人は、お笑いもバラエティーも「どっちもできる人」だという長谷川さん。「さまぁ~ずさんとか、コントじゃないですけれど、タカトシ(タカアンドトシ)さんとか、バナナマンさんとか、両方できる人に憧れます」と語った。じろうさんは「やっぱりシティボーイズさんですね。3人とご一緒にお仕事したら、東京でやり残したことはもうない(と思える)」と言い切るほど共演を熱望した。今後やってみたい仕事としては、ちゃんとしたセットでの本格コント番組のほか、2人そろって熱望しているのは「タモリさんとの共演」だ。「タモリ倶楽部に出たいです」とじろうさんが言うと、長谷川さんは「いいともにも出てみたかったですね」とうなずいていた。