「白雪姫と鏡の女王」(2012年)や「シャドウハンター」(12年)に出演したリリー・コリンズさんと、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」(11年)、「ハンガーゲーム2」(13年)に出演したサム・クラフリンさんが共演した恋愛映画「あと1センチの恋」が13日から全国で公開された。6歳からの幼なじみのロージー(コリンズさん)とアレックス(クラフリンさん)の、互いを思いながらもすれ違いばかりの12年間を描く。ロージーを演じたことで「自分を解き放つことができた」と語るコリンズさんに、映画について聞いた。
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コリンズさんが演じるロージーにはホテル経営という夢があった。しかし、思いがけない妊娠で、その夢が遠のいてしまう。それでも彼女は夢を捨てず前に進んでいく。そんなロージーを、コリンズさんは、こう分析する。
「ロージーはそれまで、学校へ行き、学位を取り、就職し、キャリアを積むことを念頭に生きてきました。真っ当な道を歩んできた父親を失望させたくなかったのだと思います。でも、ケイティという娘ができてそうはいかなくなった。でも、ロージーは気づいた。道筋は違っていても、最終的に自分の行きたい場所が定まっていれば、そこにいずれ到達することができるのだということを。彼女は、体験からこだわりを捨てることを学んだのだと思います」
そんなロージーを演じたことで、コリンズさん自身もまた、「自分を解き放つということを学んだ気がする」という。もともと何かをするとき、「かっちり決めてから取り掛かる方」だったそうが、ロージーという役柄を通じて、「人に期待し過ぎたり、お芝居でいうと脚本に頼り過ぎたり、そういうことから離れることができた気がします」と話す。
それには、クリスチャン・ディッター監督の演出方法も影響している。ディッター監督はコリンズさんに「割と自由に、アドリブもやらせてくれた」そうで、もちろんそれによって「自分の感情をさらけ出さないといけないし、生々しい芝居を見せなければならない」という苦労はあったが、「即興で演じるということは、裏を返せば、その先どういう状況になるか分からないということ。それは人生も同じだ」ということに改めて思い至ることができたという。
コリンズさんは今作で、ハンドバッグに嘔吐(おうと)したり、身を隠そうとして失敗、道路に転がったりと、かなりの醜態を演じているが、中でも一番恥ずかしい思いをしたのは、撮影開始間もない頃に撮った、トイレで手鏡を片手に“非常事態”に対処するシーンだという。「狭いトイレで、周りには5人の男性スタッフがいて、とてつもなく恥ずかしかった……」と打ち明けるが、そうまでして撮ったシーンが、編集段階でカットされそうになった。それに「ノー」を言ったのは、ほかでもないコリンズさんだった。「ああいうことは、誰しも経験したり、友達から聞いたりしたことがあると思う。だからこそ共感できる。だから、入れるべきだと主張しました」とカット寸前のシーンを守り抜いたことを明かした。
母親を演じるに当たっては、コリンズさんと自身の母の「友達のような親しい関係」を手本にしたそうだ。とはいえ、「ロージーは若い母親で、自分探しの途上にある。子供にとって親しみやすい、イカした母親である一方で、それなりに威厳がなければいけない」と、そのバランスをとるのが難しかったことを認め、その上で「私自身どうすればいいか混乱して、それがそのままスクリーンに出ていたと思います」と自身の演技を振り返った。
女優業のほかに司会やモデル、コメンテーターと多方面で活躍しているコリンズさんだが、目下、成し遂げたいことをたずねると、目を輝かせながら「ママになりたいんです。まだ準備はできていないけど……」とちゃめっ気あるコメントをしたあとで、「あと、学位を取りたいんです。大学に2年間通っていましたが、仕事が忙しくなって今は離れています。ですから、専攻を変えてでもいいから、いつか復学して、学位を取って卒業したいんです」と真剣な表情で答えた。
2年前、「白雪姫と鏡の女王」のプロモーションで来日した際、「自分は強くありたい、成長したいと思う人間」と話していた。今回、ロージーを演じたことで、「その先どうなるか分からなくても、分からないなりに自分の心の奥底で感じている部分に忠実でいれば後悔することはない。何かを手に入れたくても手に入らないこともある。けれど、とりあえず頑張ったのだからと自分を納得させることができる。それでいいんだということに、改めて気付くことができた」と話す。
思春期は太い眉毛に悩んだそうだが、母から「人は不完全であるからこそ美しい」と教えられ、コンプレックスを克服したという。そうやって弱みを強みに変え、また、「復学したい」と現状に甘んじることなく生きているコリンズさん。今作について「年齢を問わず楽しむことができる作品」とアピールした上で、カップルには「アレックスとロージーは、とにかく一緒になれなくて、見ていてイライラさせられるけれど、お互いに一番いいところを引き出せる関係にある。ですから、(カップルの人たちは)『私たちはそういう(イライラさせられる)関係でなくてよかったね』とひと安心する機会に、そして、『私たちも彼らのように、互いにいいところを引き出し合える関係でよかったね』と祝福する、いい機会にしてください」と勧める。
また、まだそういうパートナーに巡り会えていない人には、「きっと世の中のどこかに、あなたのロージー、あなたのアレックスが待っているという期待を持って見に行ってください。その人はきっとあなたのツボを押さえて、あなたを幸せにする方法を分かっているはず」と励ました上で、「ただ、一つ意識しておくといいと思うのは」と言葉をつなぎ、「やっぱり『自分ありき』だということ。相手に自分の穴を埋めてもらおうと思うのではなく、自分自身が自立して幸せだと感じることができなければ、ふさわしい人は現れないと思います。ですから、まずは自分自身を完成させてください。そうすればきっと、ふさわしい人が現れるはずです」とエールを送った。映画は13日から全国で公開中。
<プロフィル>
1989年、英国生まれ。5歳で米国に移住し演技を学ぶ。15歳で、ファッション雑誌「ELLE girl」(英国版)で、ハリウッドやロサンゼルスのトレンドを発進するページのデザインを担当。そのかたわらモデルとしても活躍。映画デビュー作は2009年の「しあわせの隠れ場所」。ほかに「プリースト」(11年)、「ミッシングID」(11年)、「白雪姫と鏡の女王」「シャドウハンター」(ともに12年)などがある。父はミュージシャンのフィル・コリンズさん。
(インタビュー・文/りんたいこ)
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