注目映画紹介:「真夜中の五分前」 三浦春馬が中国語演技に挑戦 語らいたくなるラブミステリー

映画「真夜中の五分前」のワンシーン (C)2014 “Five Minutes to Tomorrow” Film Partners
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映画「真夜中の五分前」のワンシーン (C)2014 “Five Minutes to Tomorrow” Film Partners

 俳優の三浦春馬さんが中国語での演技に挑んだ映画「真夜中の五分前」(行定勲監督)が27日に公開される。今作は、本多孝好さんの小説「真夜中の五分前 five minutes to tomorrow side−A/side−B」を基に映画化。孤独な日本人の青年と美しい双子の姉妹が繰り広げるサスペンスタッチの恋愛物語が展開する。日中合作で、三浦さんの流暢(りゅうちょう)な中国語せりふの演技と全編上海ロケで撮影された映像が秀逸で、特に異国情緒あふれる上海の街並みが切なくてロマンティックな物語を鮮やかに彩っている。

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 上海で時計修理工として働く日本人の青年・リョウ(三浦さん)は、プールで見かけた美しい女性・ルオラン(リウ・シーシーさん)と出会う。リョウは知り合ったばかりのルオランから、婚約中の一卵性双生児の妹・ルーメイ(リウさん・一人2役)へのプレゼントを選んでほしいと頼まれる。プレゼント選びに付き合ったリョウはルオランに引かれていき、2人は親しくなっていくのだが……というストーリー。

 冒頭から生活感と異国情緒が不思議なほどの調和した美しい映像に目がくぎ付けになる。上海の独特な街並みが作品世界とマッチ。ミステリアスな魅力を放っている。最近の映画ではあまり見られない静かなトーンでストーリーは進み、ゆったりとした気分で楽しめる。見た目は似ているが生き方が違う双子と、双子の一人ずつを愛した2人の男という4人を、アジアならではの湿度を漂わせた神秘的で妖艶な映像美で見せている行定監督の演出手腕には脱帽だ。一見するとミステリー要素が気になってしまうが、その奥にはアイデンティティーや人を愛するということなど、実に哲学的で人間くさいテーマが見え隠れし考えさせられる。三浦さんをはじめ主要キャストたちの表情がこまやかで、こだわり抜かれた音の設計も秀逸。静かすぎる展開にやや抑揚がほしくなる気持ちもあるが、それでもラストシーンの余韻はたまらなく心地よい。見終わった後は、誰かと語らいたくなるので一人より複数で鑑賞することをお勧めする。丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で27日から公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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