ソニーの新型ゲーム機「PS4」の日本発売や、「妖怪ウォッチ」の大ヒットなどがあった2014年のゲーム業界。ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するKADOKAWA・DWANGOの浜村弘一取締役に今年を振り返りながら、2015年の展望などを聞いた。
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−−PS4が世界的にヒットしましたが、日本では今一つのようですね。
ゲームの最大商戦期は年末なんです。欧米では年末に発売されましたが、日本は2月。実質的に1年の差がついたと思っていいでしょう。また日本ではモバイルと携帯ゲーム機が、売れ筋の主力という実情もあります。
−−ではPS4は、日本では厳しい?
今後は変わってくるでしょう。今後のタイトルをメーカーに聞くと、PS4と携帯ゲーム機のPSVitaを一緒に連動させるというものが多いのです。よって「据え置き型ゲーム機が弱い」とされながらも、タイトルは厚くなると思います。
−−今年最大のヒットといえば、携帯ゲームの「妖怪ウォッチ」ですね。ヒットの原動力は?
レベルファイブの社長である日野晃博さんのプロデュース力が大きいでしょう。もちろん、元々のゲームが面白いのもポイントです。子供たちの興味があるものをしっかりとらえ、言葉の使い方にも配慮しています。この手のゲームを制作したら、彼の右に出る者はいないでしょうね。
−−「妖怪ウォッチ」のヒットの陰で、他のゲームは?
近年の傾向として、一つのゲームがずっと続く傾向にあります。来年も「パズル&ドラゴンズ」「モンスターストライク」が元気でしょうから、完全新作のヒットが出づらくなっていますね。もちろん、まだ(スマートフォンゲームの)バブルは続いていますが、少なくとも以前のように誰もが当てられる状況ではありません。
−−今年目立たなかった任天堂はどうなりますか?
任天堂のビッグタイトルは上位にいて、日本では存在感を示しています。注目は、ゲームにキャラクターのデータを読み込めるフィギュア「amiibo(アミーボ)」ですね。これはいわば、玩具という形を取った“追加課金”です。ファミリー層が安心して買える「アイテム課金」のようなもので、今後いろいろなビジネスが考えられます。そういう意味で任天堂は、収益の多様化に成功したといえそうです。
◇HMD ファミコン以来の衝撃が起きる可能性も
−−スマホゲームは、いまだに強い印象があります。
バンダイナムコゲームス、セガ、コーエーテクモゲームスが奮闘し、ゲームらしいスマホゲームが出ていました。従来のスマホゲームは、似たようなゲームが多かったのですが、これからはよりゲームらしさが問われる時代になるでしょう。家庭用ゲーム機のクリエーターには有利といえそうです。
−−ゲームショウでは、ヘッドマウントディスプレー(HMD)が話題でしたね。
HMDは、実際にやってもらえれば分かると思いますが、ゲームの概念が“リセット”される可能性があります。(以前も)プレイステーションで発売された「ファイナルファンタジー7」などでは、ゲームの世界に奥行きが生まれ、ゲームの文化が変わりましたから。
−−特にソニーのHMD「プロジェクトモーフィアス」のデモコンテンツ「サマーレッスン」は、発表以後話題になっています。
ずっと先のゲームが「ポン」と出てきた感じで、突き抜けていますよね。広い世界を再現した「オープンワールド」とは逆の発想で、部屋に2人でいる緊張感が楽しめます。ゲームが2Dから3Dになったとき以上、任天堂のファミリーコンピュータが生まれたときと同じ衝撃が起きる可能性もありますね。普段はゲームに興味のない人が「HMDの専用ゲームをやってみたい」となりますから。「サマーレッスン」はまだ発売も決まっていない“試作機”ですが、それでこれだけのインパクトが生まれているのは驚きです。
−−HMD普及のポイントは?
価格でしょう。PS4本体とセットで4万円切ってほしい。HMDは想像していたよりも衝撃的で、ゲームの可能性が再確認されました。「サマーレッスン」に物語性が付加されたら、どこまですごくなるのか、そこにクラウド技術も加わればとんでもないことになるかもしれません。昔、ゲーム中毒、ネット中毒とたたかれた時代がありましたが、そういう時代が来てしまうかもしれません。
◇「不連続の進化」 ゲームの変わる兆しあり
−−今年、2015年の展望は?
「不連続の進化」があると思いますよ。2009年ごろのスマートフォンの登場から、「驚き」のターム(期間)が短くなっています。15年は、PS4で「ドラゴンクエストヒーローズ」も登場するし、HMDもあります。さらに携帯ゲーム機と据え置き型が溶け合うでしょうし、クラウドゲームもあります。身の回りにゲームが、あふれ始めますね。
−−注目しているクリエーターや作品は?
クリエーターでは、コナミデジタルエンタテインメントの小島秀夫監督でしょうか。「メタルギアソリッド5」が、どこまでできるか注目で、オープンワールドの中でも緊張感がある作品です。ゲームでは「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親である坂口博信さんの手掛けた「テラバトル」でしょう。独特のセンスがあり、スマホ業界でも話題になっています。インディーズゲームでは、スマホゲーム「ANTARCTICA(アンタルチカ)」です。マンガの4コマを題材にして、4コマ目のオチ(未来)を変えるという発想に驚かされました。
−−ゲームは進化していると?
ゲームが変わる兆しがあり、既に結実しつつあります。以前は「人気ゲームがいつ出るの?」という視点でしたが、今は「クラウド」「妖怪ウォッチ」といったキーワードに加え、HMDという一般メディアが注目しているものもあるなど、切り口がいろいろあります。そしてそれぞれのキーワードが、互いに影響し合う……という流れになっているといえるでしょう。
はまむら・ひろかず=1961年生まれ。86年にテレビゲームの情報誌「ファミコン通信(現・週刊ファミ通)」創刊から携わる。2013年10月からKADOKAWA常務。現在は、KADOKAWA・DWANGO取締役でファミ通グループ代表。
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