注目映画紹介:「リトル・フォレスト 冬編・春編」 東北の四季と独創的な料理がパワーを与えてくれる

(C)リトル・フォレスト製作委員会
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 五十嵐大介さんの同名人気マンガを基に春夏秋冬の4部作で実写化した「リトル・フォレスト 冬・春」(森淳一監督)が14日に公開される。今作は、橋本愛さん演じる主人公・いち子が都会で自分の居場所を見つけられずに故郷に戻り、大自然の中で自給自足の生活をしながら生きる力を充電していく姿を描いている。昨年夏に公開された「夏・秋」に続く後編で、東北の四季を映し出した美しい映像と収穫した食材を使った料理にも注目だ。歌手のyui(YUI)さんが率いる4人組バンド「FLOWER FLOWER(フラワーフラワー)」が4部作それぞれの主題歌「夏」「秋」「冬」「春」を担当している。

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 都会になじめず故郷である東北の小さな集落・小森に帰ってきたいち子(橋本さん)は、稲を育てたり、畑仕事をしたり、野山で採った季節の食材を料理して食べるという日々を送っていた。ある日、5年前の雪の日に突然失踪した母・福子(桐島かれんさん)から手紙が届き、今までの自分やこれからの自分を思い、いち子の心は揺れ始める。そして冬も終わりに近づき、来年の冬も小森にいるかどうか分からなくなったいち子は、春一番で植えるジャガイモを植えるか迷い……というストーリー。

 食べ物や料理を扱った作品というのは、対決したり、いい料理を作ったりという展開になりがちだが、今作は食べるために作る料理というのが“日常”を感じさせる。しかも田舎で自給自足して採れる食材を使った創作料理の数々は、クリスマスケーキなども登場し意外性も抜群。美しい映像と合わせて、目や心が満たされていく。ストーリーに劇的な起伏が決してあるわけではないが、いち子の周囲にいる人たちや母親との関係が丁寧に描かれ、静かながらも力強い印象を受ける。日々の生活に追われて干からびてしまったような心に潤いと活力を与えてくれるようで、見終わったあとは優しくて温かい気持ちがあふれて出てくる。14日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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