穏やか貴族の休暇のすすめ。
第12話 「リゼルのいない国」
4月1日(水)放送分
44言語に翻訳され、世界中で愛される童話「ムーミン」シリーズの原作者トーベ・ヤンソンさんの生誕100周年(2014年)を記念して、母国フィンランドで作られた劇場版長編アニメ「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」が13日に公開された。ヤンソンさんの原作マンガを基に、さまざまな劇場版アニメのプロデューサーを務めてきたハンナ・ヘミラ監督がメガホンをとった。ヘミラ監督は「ヤンソンさんの思いを手描きと背景に込めました」と話す。
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1945年にシリーズ1作目「小さなトロールと大きな洪水」が出版されて以来、マンガ、絵本、アニメになって根強い人気を誇るムーミンシリーズ。今作はアニメーションとして母国で初めて製作され、昨年10月に公開されると、大ヒットとなった。ヘミラ監督は「ヤンソンさんは知的で才能のあるアーティスト。映画を作ることができて光栄です。今作はヤンソンさんへのオマージュです」と語る
ヘミラ監督は「オリジナルコミックでの映画を、なぜ誰も作ろうとしないのか」というヤンソンさんのめいのソフィア・ヤンソンさんの言葉に触発され、今作を製作することを思い立ったという。2010年、フランス人のグザビエ・ピカルド監督とともに2分半の手描きの映像を作ってソフィアさんに見せたところ、映画化の話が進んだ。
日本でムーミンブームのきっかけとなった日本製アニメは、フィンランドでもおなじみだという。「日本のムーミンアニメは世界中で親しまれています。でも、今作はまったく異なるもので、大人向けのユーモアを大事に描き出しました」とその違いを語る。
ヘミラ監督が「大人向け」というのは、原作がマンガであることが理由だ。マンガは1954年、英国の新聞「ロンドンイブニングニュース」紙で連載が開始され、大人向けの社会的、政治的な風刺を交えて描かれた。今作の物語は、その中から二つの話をピックアップしてつなげている。
映画の舞台は、おなじみのムーミン谷と地中海沿岸にあるフランスのリビエラの2カ所。「舞台を二つにしたことで、物語にドラマ性が生まれた」とヘミラ監督。
「慣れた環境にいる姿と、全く文化の異なる場所での葛藤を見せることで、ムーミンたちのキャラクターがより際立ったと思います。色彩も音楽も全く違うアプローチになっています」
全体を通して、特に重要視したのは背景だという。「マンガのコマはたいてい白バック。ヤンソンさんの手掛けた絵画や木版画を参考にしながら、自然を愛するヤンソンさんのスタイルを背景に込めていきました」と話す。
また、手描きのアニメーションにしたのもこだわりの一つ。「ヤンソンさんのペンタッチは独特で、そのためにはどうしても手描きでなくてはならなかったのです。フィンランドで手描きのスタッフが見つからず、中国のアニメーションスタジオで描いてもらいました。ムーミンの持つ温かみと味わいを出せました」と製作エピソードを語る。
色のパターンを決めたのはフランスの製作チームだ。太陽光を受けてさまざまな色に変化する海の色にも注目したい。
美しいリビエラの海辺のホテルで、ムーミン一家はセレブと勘違いされてしまい、最上級の部屋に通される。一家はそこで騒動を巻き起こすが、彼らはいつもと同じことをしているだけだ。ムーミンはフローレンの気を引き、ムーミンパパは空想で貴族を気取る。ムーミンママは庭作り。このマイペースぶりが笑いを誘うのが、さまざまな制約に縛られている現代人にとっては羨ましく映るのでは?
「私もそう思いますね。ムーミンたちが羨ましい。私も湖のそばに別荘を持ち、ときどき釣りを楽しみますが、ストレスフリーの世界を持つことは大事です。劇中、ムーミンパパが『夢を持ち、ジャガイモを育てて平和に暮らす』と語りますが、これこそがヤンソンさんのメッセージなのです」と紹介した。
「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」は、13日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほかで公開中。
<プロフィル>
フィンランド生まれ。「ル・アーブルの靴みがき」(2011年、アキ・カウリスマキ監督)のラインプロデューサーを務める。数多くのドキュメンタリー映画、アニメーション映画、さらに各国合作の長編映画の共同プロダクションに携わっている。
(インタビュー、文、撮影:キョーコ)
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