人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」(ももクロ)の主演映画「幕が上がる」(本広克行監督)が全国で公開中だ。劇作家の平田オリザさんの青春小説が原作で、地方都市の県立富士ケ丘高等学校を舞台に、演劇部員の女子生徒らが元学生演劇の女王だった新任教師と出会い、全国大会を目指して奮闘する姿を描いている。役どころが登場人物と見事にマッチしている主演の百田夏菜子さん、玉井詩織さん、佐々木彩夏さん、有安杏果さん、高城れにさんの5人に、撮影エピソードや女優への挑戦、見どころなどを聞いた。
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メガホンをとった本広監督が、登場人物が実際のももクロのメンバーと重なって見えると評すほどだが、それぞれ自身と役で似ているところを聞くと、高橋さおり役のリーダーの百田さんは「私の役は部長で役柄的にはリーダーと同じ立ち位置にいて、最初は(部長に指名されることを)嫌がっていたのに気付いたらやってしまうところがすごく似ていてびっくりしました」と驚いていた。続けて、「あとは弟がいるところで、(実際は)兄もいます」と言って笑いを誘うと、加藤明美役の佐々木さんは「私はみんなより年下なところが同じ(笑い)」と続けて盛り上げる。そして、「でもその学年の中では引っ張っていくようなところは似ているなと思いました」と語る。橋爪裕子役の玉井さんは、「私の中の“ユッコ”は髪の毛が短いイメージがあまりなかった」と切り出し、「気分がコロコロと変わるところや、ちょっとやきもちやきなところは少し前の私に似ていると感じました」と話す。
西条美紀役の高城さんが共通点を「落ち着きがないのと大げさにしちゃうところ(笑い)」と言うと、メンバーからは「自覚していたのか」などと突っ込まれ、さらに「(有安さんが演じる)中西(悦子)さんに質問攻めする場面では、監督のカットがかからずアドリブで続けました」という高城さん。中西役の有安さんは、「口数が少ない役なのに、すごい(質問が)くるから最後は役を守り切れずに笑っちゃいました。『お願いだから早くカットをかけて!』と思っていました」と当時の心境を明かす。有安さんは自身と演じた役について、「私は転校生役で実際に転校したこともあるし、ももクロの中でも最後に参加したメンバーというので、最初はちょっと慣れない感じは重なるなと。あとは、一つのことをぶれずにやり遂げるという気持ちがあるところ」と説明する。
撮影を通して最も印象に残っているシーンについて、「劇中劇のシーン」を挙げた玉井さん。「劇中劇の『銀河鉄道の夜』では主人公のジョバンニ役でしたが、静かな環境の中で一人で長いせりふを言うことがなかったので緊張したけれど、静けさが楽しかったし、いい経験になりました」と胸を張る。百田さんは黒木華さん演じる吉岡先生に顧問を依頼するシーンが印象的だという。その時の心境を「当日、黒木さんと初めてお会いして、(撮影したのも)2人での初めて会うシーンだったのですごく緊張しました」と明かし、「演劇部の顧問をお願いするため、さおりがグイグイいくシーンなのですが、なかなか近付けなくて監督から何回も『もっとグイグイいって』と言われたのを覚えています」と振り返る。
ももクロのリーダーである百田さんは、映画では演劇部の部長さおりを演じているが、佐々木さんは「私はオリザさんに『肩が揺れる』と指摘されていましたが、撮影中に(百田さんからも)同じことを言われて(百田さんが)オリザさんに見えました(笑い)」と厳しい部長ぶりを説明すると、玉井さんも「私たちはオリザさんのワークショップに参加して『銀河鉄道の夜』を指導してもらうことから始まったのですが、リーダーはオリザさん(の姿)を見ていた」と百田さんが研究熱心な様子を明かす。百田さんのことを、高城さんが「普段はボケた感じもあるのに部員全員のことを見ていて、最後はまとめてくれるのが部長らしいし、ももクロでリーダーをやっている姿とかぶると」と褒めれば、有安さんも「私たち以外の演劇部メンバーにも指導していて、『ちゃんと部長をやっている』と思いました(笑い)」と続ける。
メンバーからの褒め言葉を聞いた百田さんは、「普段は恥ずかしくて、思っていても言えないんでしょうね。みんな私のこと好きだなと……」と照れ笑いを浮かべると、玉井さんから「ビジネスとしてのコメント」、佐々木さんからは「自分たちの好感度のため」といった言葉が飛び交い、笑いの絶えないインタビューでチームワークのよさをうかがわせた。
普段はアイドルとして活動するももクロだが、映画では見事な女優ぶりを発揮している。アイドルと女優を切り替えていたかと聞くと、メンバーは「特に意識していなかった」と口をそろえる。中でも、「映画のスタッフさんがももクロのクリスマスライブを見に来てくれた時に、『みんながアイドルなのが新鮮』と言われたことに驚いた」と話す玉井さん。「私たちは歌って踊ることをメインにやってきたから、撮影中はみんなにとって女優として映っていたのかなと思うとうれしかった」と喜ぶ。「撮影中は“がるる”になりきっていた」という高城さんは、「与えられたキャラクターをどう生かしてどうよくするかということを考えていた」と言い切る。
また、佐々木さんは「メンバーといるとふざけたくなるし、相手がメンバーだと思うと恥ずかしくて演技しにくくなっちゃうので、あまりメンバーというのは意識しないようにしていた」と告白。そして、「歌って踊って、バラエティーでも演技でも何でもできるのがアイドルだと思うので、根本はアイドルかなと思います」と自己分析する。「いただいた役として映画に携わっています」と話す有安さんは、「スイッチが入るタイミングをしいて言うなら、メークをして制服を着た時やローファーに中西という文字が書かれているのを見た時、『今日も中西だ』と思って撮影に臨めました」と打ち明ける。
映画主演に挑戦したメンバーに、今後グループとして活動に役立ちそうな発見があったかと聞くと、佐々木さんが「ムロ(ツヨシ)さんのアドリブ力。本当にすごいなと思った」と感銘を受け、有安さんは「私たちの目標に向かってのステップアップのきっかけになったのでは」と実感したという。そんな中、百田さんは「ケータリング」と言い出し、「撮影は静岡でしたが、その土地のおいしいごはんを現場に用意してくれたり、たまにゆるキャラも来てくれました」と笑顔を見せる。百田さんの発言を聞いていた玉井さんからは「あなたの地元」、佐々木さんからは「東京人ぶって(笑い)」と鋭い指摘が飛ぶ。苦笑いを浮かべる百田さんだが、「そういうシステムがすごく楽しくて、ごはんの時間を通していろんな人とも話せて団結が深まった気がします。私たちもライブで全国を回ってきたけど、おいしいものを食べる時間もなく、移動が多く、ああいったすてきな時間を作っていけたらもっといいかなと思います」と最後まで持論を押し通した。
今作は劇場公開を迎えた後、5月には舞台版の上演も控えている。「舞台に関してはオリザさんが演技のハードルをすごく上げているといううわさを耳にしました」と少し不安げな表情の百田さんだが、「まだ詳細は私たちも分かりませんが、本広監督とオリザさんは最強タッグだと思うので、しっかりとしがみついてついていけるよう頑張りたいです!」と意気込む。そして映画について、「どの世代の方が見てもキラキラした青春を感じられると思うので、ぜひ劇場でご覧ください」とアピール。横から高城さんが「みんなが知っているももいろクローバーZじゃないという違った一面も見せたいし、もっともっと私たちのことにも興味を持ってもらいたい」と意欲を見せ、「(映画とグループの)ダブルで応援してもらいたいので、1人2回は見てください!」とメッセージを送った。映画は2月28日から全国で公開。
<プロフィル>
百田夏菜子さん(1994年7月12日生まれ、静岡県出身)、佐々木彩夏さん(1996年6月11日生まれ、神奈川県出身)、玉井詩織さん(1995年6月4日生まれ、神奈川県出身)、有安杏果さん(1995年3月15日生まれ、埼玉県出身)、高城れにさん(1993年6月21日生まれ、神奈川県出身)の5人組アイドルグループ。2008年に「ももいろクローバー」として結成し、「週末ヒロイン」「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズのもと、全国でライブ活動を行い、10年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でデビュー。11年4月に行われた東京・中野サンプラザ公演後に「ももいろクローバーZ」へ改名した。14年に開催した国立競技場(東京都新宿区)でのライブは女性グループ初で、結成6年での史上最速開催。15年上半期には、映画「幕が上がる」の主題歌「青春賦」(3月11日発売)を含め、3連続シングルをリリースする予定。
(インタビュー・文:遠藤政樹)
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