人気声優の花澤香菜さんが実写映画で初主演を務める「君がいなくちゃだめなんだ」(ムラカミタツヤ監督)が28日に公開される。花澤さん演じる絵本作家・楓アンが、街中の伝言板に書かれた謎のメッセージの数々が、失踪(しっそう)した父親の文章であることに気づいたことから始まる幻想的な人間ドラマが展開する。アンの父親役を「一世風靡セピア」のリーダーとして活動し、現在は俳優として活躍中の小木茂光さんが務め、「サンダンス・NHK 国際映像作家賞2009」でグランプリを受賞した倉田健次さんが脚本を担当。花澤さんのミュージックビデオを手掛けてきたムラカミ監督がメガホンをとった。
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絵本作家の楓アン(花澤さん)は最初の作品で新人賞を受賞したが、その後は周囲に期待されながらもスランプに陥っていた。ある日、楓は、姿が見えなくなった飼い猫のペローを探すために見た街角の伝言板に「ペローを蘇(よみが)らせる代わりにこの世界から太陽を頂くよ。いいのかい? アン?」という謎のメッセージを見つける。ほかにも街のあちこちの伝言板に不思議なメッセージが残されていて、アンは幼い頃に失踪した小説家の父・光平(小木さん)の文章であることに気づき……というストーリー。
幼い頃に失踪した父親との関係を軸に進んでいく不思議な物語。ムラカミ監督による映像が美しく、ファンタジックな雰囲気を醸し出している。さらに主演の花澤さん自身が歌う主題歌「君がいなくちゃだめなんだ」は、映画の世界観を基に作り上げられただけあって、物語をドラマチックに盛り上げている。花澤さんの熱演と、ぬくもりに満ちた穏やかなバラードが相乗効果を発揮し、深い感動を与える。日常を映画化しているようで、どこか幻想的な雰囲気と、切なさと温かさが同居したような不思議な味わいが、1時間ほどの上映時間に凝縮。優しい絵本を読み終えたような気持ちにひたれる。そしてなにより実写初主演を果たした花澤さんの“女優”としてのさまざまな魅力が盛り込まれている。テアトル新宿(東京都新宿区)で28日に先行上映され、4月4日からシネ・リーブル梅田(大阪市北区)などで公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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