注目映画紹介:「ブラックハット」肉体派のハッカーがアジアを股にかけて挑む攻防戦

「ブラックハット」のワンシーン (C)Universal Pictures
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「ブラックハット」のワンシーン (C)Universal Pictures

 「アベンジャーズ」シリーズのマイティ・ソー役でおなじみのクリス・ヘムズワースさんの主演作「ブラックハット」(マイケル・マン監督)が、8日に公開される。「ヒート」(1995年)「コラテラル」(2004年)のマン監督の5年ぶりの最新作。米中の合同捜査チームと謎のネットワーク不法侵入者(ブラックハット)との攻防が、米国からアジア、世界を股にかけて繰り広げられる追跡劇だ。

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 香港の原子力発電所が、米シカゴでは金融市場が、それぞれハッキングによって大打撃を受ける。このサイバーテロ事件を解決するため、米国と中国が合同捜査チームを結成。犯人が使ったシステムを開発した人物で、ハッキング罪で投獄中の天才プログラマーであるハサウェイ(ヘムズワースさん)に捜査協力が要請される。ハサウェイに白羽の矢を立てたのは、中国軍サイバー防衛の責任者であるダーワイ(ワン・リーホンさん)で、ハサウェイとはマサチューセッツ工科大(MIT)でルームメイトだった。自由の身を条件に犯人逮捕に協力することにしたハサウェイは、ダーワイの妹でネットワークエンジニアのリエン(タン・ウェイさん)に協力してもらいながら、犯罪組織の居場所を特定しようと試みるが……という展開。

 今作は、服役中だったハッカーが、自分が開発したプログラムを応用して世界を脅威に陥れているハッカーを追う構図で語られる。コンピューター社会の危うさと脆(もろ)さが、ネットワークを表示する光や夜の都市のイルミネーションの美しい光と対になって、独特な世界観を作り上げている。マン監督作ならではの現実世界への深い洞察が練り込まれ、重厚な作品に仕上がった。ハッカーのイメージを覆すような肉体派のハサウェイは、どこか暗い影を帯びている。だからこそダーワイとの男同士の友情が引き立つ。演じるヘムズワースさんとワンさんは一緒にボクシングをやって関係を築き上げたという。でも、男ばかりの硬派な映画かと思えば、そんなことはない。ダーワイの妹リエンとハサウェイのラブストーリーも織り込まれ、追跡劇には、地下鉄で手つなぎ走りのシーンも。ワンさんとタンさん演じる兄妹も、「ラスト、コーション」(2007年)で共演していただけあって息もぴったり。ネットワークの中に入り込んだような冒頭の映像から、ジャカルタの古い祭りの喧騒(けんそう)へと映像もダイナミックに変化していき、国や地域を股にかけて繰り広げられる攻防戦から最後まで目が離せない。TOHOシネマズみゆき座(東京都千代田区)ほかで8日から公開。(文・キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。ブラックハット、マルウェア……なんのことかチンプンカンプンでも、その実態を分かった気にさせる今作に圧倒された。

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