注目映画紹介:「ズタボロ」 映画「ワルボロ」続編を永瀬匡主演で映画化 痛みと爽快感が抜群

「ズタボロ」のワンシーン (C)2015東映ビデオ
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「ズタボロ」のワンシーン (C)2015東映ビデオ

 作家のゲッツ板谷さんの自伝的小説を基に実写化した映画「ズタボロ」(橋本一監督)が9日に公開される。ゲッツ板谷さんの小説「メタボロ」「ズタボロ」(幻冬舎文庫)の2作が原作で、2007年に公開された俳優の松田翔太さんの主演映画「ワルボロ」の続編に当たる。東京・立川を舞台に、高校生となった主人公が仲間とともに暴走族や不良集団、ヤクザなどの抗争に巻き込まれていく姿を描いた不良の青春群像劇に仕上がっている。主人公のコーイチ役は「仮面ライダーウィザード」の仮面ライダービースト役で知られる永瀬匡(たすく)さんが演じ、NHK連続テレビ小説「まれ」に出演中の清水富美加さん、同じく「マッサン」で注目された堀井新太さん、成田瑛基さんら若手俳優陣に加え、木村祐一さんや佐藤二朗さんほかベテラン勢が個性的な演技で熱いドラマを支えている。

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 地元の不良グループで幅を利かせていたコーイチ(永瀬さん)は、仲間のヤッコ(荒井敦史さん)とキャーム(中西晶さん)とともに中学を卒業。高校に進学し、地元最凶の暴走族「立川獄門」に入る。そこでは“新人教育”という名の理不尽なヤキを入れられる日々が待っていた。嫌気が差したコーイチは、高校でできた仲間の植木(堀井さん)や鬼(成田さん)と行動するようになり、集会に出なくなり、ヤッコが集中的に追い込まれた結果、引きこもってしまう。親友の復讐(ふくしゅう)を果たすため、コーイチはヤクザの叔父・猛身(木村さん)の舎弟になるが……というストーリー。

 今作は2冊分で1000ページ近くにも及ぶ小説を映画化しているため、映画に原作のエッセンスが十分生かせているのか不安だった。ところが映画を見ると、そんな杞憂は一気に吹き飛び、原作の主題がぶれることなく、また力強さも損なわれることなく詰め込まれていて驚かされた。とにかく見終わった後の痛快さや爽快感がたまらなく、妥協することなく振り切った作風が心地いい。登場人物たちが不良のため、痛々しいけんかシーンも数多くあるが、陰惨な雰囲気はなく、むしろすがすがしく見えてしまう。キャストに目を移すと、熱量あふれる演技が随所に見られる中、主演を務める永瀬さんの演技は突き抜けている。肉体的な痛みだけでなく、閉塞感や鬱屈した感情など多彩な痛みが表現されている。仕上がりが多少ポップな印象はあるが、世代を問わず楽しめる。新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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