グッド・ストライプス:菊池亜希子&中島歩に聞く マンネリカップル演じるため「撮影前に腹を割って話した」

映画「グッド・ストライプス」について語った菊池亜希子さん(右)と中島歩さん
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映画「グッド・ストライプス」について語った菊池亜希子さん(右)と中島歩さん

 「深夜食堂」(2015年)などに出演した菊池亜希子さんと、NHK連続テレビ小説「花子とアン」(2014年)で駆け落ち青年を演じた中島歩さんがダブル主演した「グッド・ストライプス」(岨手=そで=由貴子監督)が公開中だ。生まれも育ちも全く違うマンネリカップルが、子どもができたことがきっかけで、もめながらも結婚へと進む道のりが描かれる新たなラブストーリー。結婚するカップルを演じた菊池さんと中島さんに話を聞いた。

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 ◇マンネリカップルの描写がリアル

 ――4年間付き合ったカップルの雰囲気がよく出ていましたね。どう作っていったのですか。

 菊池さん:中島さんとは初共演でしたが、一緒にいてとても気持ちが楽になれる相手でした。台本の中に書かれたせりふに2人の雰囲気が細かく表れていたので、特にこうしようと意識して役作りをしたわけではありません。腹を割って話さないと、と思って中島さんを食事に誘って、お互いの結婚観などについて話し合ったりしました。

 中島さん:僕は最初は菊池さんが先輩ということもあって、少し遠慮があったんです。食事に誘っていただいて話をしたら不安が消えて、役に集中できました。台本を読むと2人の会話の中に4年間の関係が見えたので、どういうふうに緑に対してせりふを投げるのかを大事にしながら演じていきました。

 菊池さん:せりふに緑のふてくされ加減が出ているんですよね。出来上がった映画を見て、ああ、私、こんな顔したてんだって思った(笑い)。

 中島さん:ふてくされた顔を真生だけに見せるところに、僕は緑の愛を感じましたね。

 ――台本を読んだときの感想は?

 中島さん:最初は「大丈夫かなこの2人」って思いましたが、俳優が立って動いてみて、そこでできる関係性が大事なのかなと思いながら読みました。

 菊池さん:興味深い題材だと思いました。私の周りにもリアルにあるテーマで、子どもがきっかけになって結婚する人たちの背中を押す使命を感じました。別れる理由はないけど付き合う理由もないという状態はよくあるけど、しんどいと思いますよ。

 ――撮影で大変だったことはなんですか?

 菊池さん:撮影は面白かったんですが、緑が水につかるシーンは大変でした。夜中に寒い中、お湯に手だけつけながら、ぬれながら待機していましたから。

 中島さん:そこへ僕(真生)がへらへらしながら走ってくるんです。

 菊池さん:だから、ムッとしているんです(笑い)。とても大事なシーンなので見てほしいです。

 ◇相手へ方向を微調整して認め合う2人

 ――それぞれが実家へ紹介に行くシーンは今作の要です。まず、緑の実家に行ったシーンでの見どころは?

 菊池さん:緑が実家で姉と乱闘するシーンを見てほしいです。私も地方出身者だから分かりますが、田舎に置いてきた封印したい過去を、姉にバラされてしまうなんて! 「面白がって見てるんじゃないよ」って、ハブラシを本気でバシッと投げましたよ(笑い)。

 中島さん:僕もあのシーンは好きですね。あと、家族と食事するシーンは新鮮でした。実家で過去を共有し合って、「こういうところもあったのか」と知ったときの真生の感じは、言葉で言い表すのは難しいぐらいの気持ちでした。

 菊池さん:学生時代のとんでもない過去って、彼に知ってほしくないのが女性の気持ちですよね。女性からは理解できないけど、男性は知りたいんでしょうね。変なところで男性は愛をふくらませたりするんですよね(笑い)。

 中島さん:とんでもない過去もいとおしくなるんですよ(笑い)。

 菊池さん:緑は自分の一番の味方は真生なんだと気づきます。緑にとって真生を見直すポイントにもなったと思います。

 ――真生は実の父親とは別居しています。こちらは少し複雑な関係でした。

 菊池さん:緑は戸惑う真生をそっちのけで、お父さんと盛り上がっていましたが、自分の愛読書をお父さんが持っていたということで、「この人、分かる人だ」と少し安心したのでしょう。こういう距離の縮め方は理想的だなと思いました。真生がいないシーンなのに、「この人の息子なんだ」と真生を知ることになる、とてもいいシーンです。

 中島さん:僕は真生がどういう思いだったのか、想像しながら作っていきました。最初、父親役のうじきつよしさんがすごく有名人だから、緊張してしまったんです。でも監督が「そのままの感じでやってください」と。あのシーンは、僕の緊張感がそのまま生かされた形になりました。

 ――緑と真生の結婚までの道のりを演じてみて、どんなことを考えましたか。結婚について改めて思ったことなどを教えてください。

 菊池さん:タイトルの「グッド・ストライプス」は「よい平行線」という意味。なんとなく一緒にいて、平行線のように交わることのなかった2人が、ちょっとお互いの向きを相手の方へ微調整しました。結婚って「手と手を取り合って一緒に歩んでいこう」というようなきれいごとではなくて、別のところを歩いていても、はぐれないようにお互いが目印を立てることなのかなあって思いました。

 中島さん:相手を変えることではなく、お互いを認め合うことが結婚なのかなと思いました。一緒に生活をしていけるのだろうかということを考えると、僕にとって結婚はまだ不安しかないですが、映画にも描かれているように、ささいな違いがあっても結婚はできると思いました。過去のことを共有したことで理解し合えたのだなあ、と出来上がった映画を見ながら思いました。

 菊池さん:結婚が正解のゴールではないけれど、決断するには勇気がいると思います。簡単に決断できる人は器用な人なのかな。女性は30代になると視野も広がるし、夢もあって、選択肢もいっぱいある。でも緑は「私はこんなもんだ」と思った瞬間に強くなれました。いい意味で、流れに身を委ねるのもアリなんじゃないかな。おなかの子どもが2人を次のステージに進ませてくれていると思いました。 

 「グッド・ストライプス」は菊池さん、中島さんのほか、臼田あさ美さん、中村優子さん、杏子さん、うじきつよしさんらが出演。5月30日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほかで公開中。

 <菊池亜希子さんのプロフィル>

 1982年生まれ。岐阜県出身。2010年、映画「森崎書店の日々」で初主演。「ファの豆腐」(11年)、「よだかのほし」(12年)で主演。「ぐるりのこと。」(08年)、「わが母の記」(12年)などにも出演している。

 <中島歩さんのプロフィル>

 1988年生まれ。宮城県生まれ。美輪明宏さんの舞台「黒蜥蜴」で、2013年俳優デビュー。14年のNHK連続テレビ小説「花子とアン」で、仲間由紀恵さん演じる蓮子の駆け落ち相手・宮本龍一役で注目を浴びる。

 (インタビュー・文・撮影:キョーコ)

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