トゥモローランド:ブラッド・バード監督に聞く 「『未知との遭遇』と『オズの魔法使』に影響を受けた」

映画「トゥモローランド」について語ったブラッド・バード監督
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映画「トゥモローランド」について語ったブラッド・バード監督

 ディズニーランドの創設者、ウォルト・ディズニーが、晩年夢に見ていた未来都市。それが本当に存在するとしたら? そんなワクワクするような話を“現実”にして見せてくれるのが6日公開の「トゥモローランド」だ。メガホンをとったのは、「Mr.インクレディブル」(2004年)や「レミーのおいしいレストラン」(07年)、「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(11年)など、アニメーションと実写、両方の表現形式を操ることができるブラッド・バード監督。「ほかの作品では見られない内容にすることを試みた」と語るバード監督に話を聞いた。

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 物語は、ブリット・ロバートソンさん演じる17歳のヒロイン、ケイシーが、不思議な力を備えたピンバッジを手にしたことから始まる。その「T」の文字があしらわれたピンバッジに触れた途端、周囲には、見たこともない未来都市「トゥモローランド」が現れた。その場所のありかを探る中で、ケイシーは、11歳のときに「トゥモローランド」を訪れたことがあるというジョージ・クルーニーさん演じるフランク・ウォーカーという男と知り合う。2人を引き合わせたのが、ラフィー・キャシディさん演じる美少女アテナだ。この3人がやがて、人類の未来を左右する大冒険に身を投じていく。

 「とても興奮したのは、ストーリーが分類しにくい内容だったからだ」とバード監督が語るように、今作は、ミステリー、SF、ロードムービー、アドベンチャー、もちろんファンタジー、そしてちょっぴりのロマンスと、あらゆるジャンルを網羅している。脚本は、バード監督とデイモン・リンデロフさんが共同で書いた。バード監督は「主人公が何かビジョンを与えられ、それを追求していく」という点において、スティーブン・スピルバーグ監督の「未知との遭遇」(1977年)から「とても影響を受けた」と明かす。「オズの魔法使」(1939年)も参考にしたそうで、アテナがどことなくジュディ・ガーランドさん扮(ふん)するドロシーを思わせることを指摘すると、「ジュディ・ガーランドがカンフーをしているんだ(笑い)」と、ユーモアを交えてアテナのアクションシーンをアピールした。

 難しかったシーンに、ケイシーが初めてピンバッジに触れた途端、あたりに小麦畑が広がり、遠くに巨大なハイテク都市がそびえ立つ別世界が現れる場面を挙げる。照明などに配慮し、「二つの“現実”を継ぎ目なく映し、キャラクターがはっとする感覚を伝えなければいけなかった」と話すが、とりわけ、ケイシーが数分間、あたりを見回す場面は、「一切編集をしないという点で、演出的には大変だった」と打ち明ける。そこに注力したのは、「観客の皆さんにも、ケイシーと同じ体験を味わってもらいたかった」からだ。「圧倒されるほどの素晴らしい景色が眼前に広がり、一つの場所に見入ってしまうと、ほかの素晴らしいものを見落としてしまう、それぐらいの光景なんだ。すぐそこにあるのに、でも、存在しない。それをきちんと描く必要があった」と、その困難さを表現した。

 さまざまなジャンルを内包する今作だが、そこには、未来への警鐘というテーマも見え隠れする。その指摘に、「私は『スター・ウォーズ』シリーズの大ファンで、特に最初の2作が好きで……」とバード監督は話し始めた。その最初の2作の一つ、「帝国の逆襲」(80年)で、ヨーダがルークに言った「予見することは難しい。なぜなら未来は常に動いているから」というせりふを引き合いに出し、「つまり、未来というのは定まっているものではなく、我々が日常何をするかに影響されるわけだ。でも、我々人類が集団的にある行動をとっていけば、それが、未来の方向性を変えていく。だから、未来というのは我々に起こるものであるというよりも、我々が起こしていくものなんだ」と説明。その上で、「何かをすることで未来が変わるということは、我々に解放感をもたらしてくれるものだと思う」と今作に含まれたメッセージをほのめかしつつ、その一方で、「ただ、変えることの責任もまた、我々は持たなければいけないんだけどね」とくぎを刺すことも忘れなかった。

 さらに、「トゥモローランド」が現実世界の「パラレルワールド」であることにも触れ、「多くの物理学者たちが、すべての時間は同時に起きていると言っているからね」と語ったバード監督。だからといって今作を、深刻ぶった作品にしたつもりはない。あくまでも、「ポップコーンを食べながら楽しんでもらえる映画になっているはず」と最後は笑顔で締めくくった。映画は6日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 1957年、米モンタナ州生まれ。カリフォルニア芸術大学(カルアーツ)でアニメーションを学び、卒業後はディズニーや他のスタジオでキャリアを積む。99年「アイアン・ジャイアント」がアニメーション界のアカデミー賞アニー賞で9部門に輝き、クリエーターとしての地位を確立。その後、ピクサー作品「Mr.インクレディブル」(2004年)、「レミーのおいしいレストラン」(07年)でそれぞれアカデミー賞長編アニメーション賞を受賞。「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(11年)で実写映画を監督した。

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