村中知:“シンドバッド”を後世に残る作品に 主演声優が魅力語る

劇場版アニメ「シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島」でシンドバッドを演じる村中知さん
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劇場版アニメ「シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島」でシンドバッドを演じる村中知さん

 テレビアニメシリーズ「世界名作劇場」などを手がけた日本アニメーションの40周年記念作品となる劇場版アニメ「シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島」(宮下新平監督)が4日から公開される。同作は3部作で、4日公開の第1部では主人公のシンドバッドが魔法族の姫・サナと出会い、仲間たちやサナと航海へ出かけるまでが描かれている。シンドバッドの声を担当した声優の村中知さんに、起用されたときの心境や作品の見どころなどを聞いた。
 
 ◇シンドバッド役決まり「抱き合って喜んだ」
 今回の劇場版アニメの話を聞き、すぐに「やりたい!」と思ったという村中さん。シンドバッド役に決定した一報を聞いたときは「事務所で『やったー!』と叫んで……。涙はなんとかこらえましたけど、マネジャーさんたちとみんなで抱擁(ほうよう)しながら喜びました」と明かす。「もちろんシンドバッド役もうれしかったけど、夢とか希望とか、道徳的なものをいっぱい学べる作品に携わらせていただけるだけでも、うれしかったです」と村中さんは語る。

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 もともと日本アニメーションの作品は昔から好きだった。それだけに今回の出演は気合十分だ。特に思い入れがあるのは「小公女セーラ」。裕福な家庭に育ちながらも父の死により苦境に立たされた女の子がが困難にぶつかりながら強く生きていく姿は幼い村中さんの中で強く印象に残った。村中さんは「私もいじめられていた過去があって、そのとき母が読んでくれた。私が小学生ぐらいのときに心を強くしてくれた作品ですね」と感慨深げに振り返る。「バイブルという感じですね。あれがあったから強くいられた。『シンドバッド』は、私が『小公女セーラ』から受け取ったのとは違ったメッセージがある作品ですけど、明日から頑張ろう、と思える、そういうものが残る作品だと思います」と語る。

 日本アニメーション40周年という、節目の年の記念作品。陰にはプレッシャーもあった。村中さんは「責任も、意気込むところもある。これまでの(日本アニメーションの)名作たちに負けないものを作りたい」と意気込みを語るが、自分がこれまで見てきた作品の系譜に連なるという事実を前に、「幼い頃に見ていた作品では、ベテランの方たちが素晴らしいお芝居をしていて。頑張らなきゃとか、困っている人がいたら助けてあげようとか、アニメを見ながら感じていたんですが、今度は自分がそういう作品に携わる側になって、おっと、これはプレッシャーだぞ、と(笑い)。うれしい気持ちと責任を持って成し遂げなければという気持ちと半々ですね」と打ち明ける。

 ◇「後世に残る作品に」キャストと決意
 村中さんが演じるシンドバッドは、冒険心にあふれ、困っている人を見たら損得勘定抜きで助けようとする行動的な男の子。村中さんは「本来みんなが持っているワクワク感や旅に出たい、という気持ちを持っている。台本を読んだときから感じていました」と当初の印象を語る。その印象は演じた今も変わらないが、「(他のキャストの)みなさんが演じられるキャラクターが(演じていて)もっと迫ってくるようになった」と収録中の変化を語る。「収録の合間に、キャストのみなさんと『後世に残る作品にしたいよね』と話していて。キャストも製作陣も明確なビジョンはもともと持っていたけど、お互いに案を出し合って作っていって、より目指していたものが濃くなって現れた」という。

 シンドバッドというキャラクターの特徴はあえて設定しなかった。「素朴な少年が、いろんな人に出会って、行動したら運命に巻き込まれて、成長したり、苦しんだり戦ったりして。周りからの刺激に反応して作り上げよう、という感じだった」という。では、シンドバッドと自身の共通点は?と聞くと「根底にはリンクするものがあったんじゃないかと思いますね」といい、「自分は人生計画みたいなのは石橋をたたくタイプなのですが、衝動的に、あっと思ったらバッと行動するタイプなので、分かる部分はありますね」と笑う。

 ◇母親役・薬師丸ひろ子と初共演

 同作の見どころを聞くと、「母親との別れのシーンが心に残ってますね。ここは大切なテーマだし、台本を読んだときに、ちゃんとやらねばと思ったシーン」と語る。同作は薬師丸ひろ子さんが35年ぶりにアニメ声優に挑戦していることでも注目を集めており、村中さんはシンドバッドの母親・ラティーファを演じた薬師丸さんとは初共演だったが「いい感じに掛け合いができた」とにっこり。「薬師丸さんの包み込んでくれる歌を聴いてから収録したので、スッとシーンに入り込めました。心に残るシーンだと思う」と村中さん。第1部で特に注目したいシーンだ。ちなみに初対面の薬師丸さんの印象は「優しいオーラを持った方」。初めての共演だったが、「会った瞬間から、いいお母さんと子供の関係性が築ける気がしました」と語る。

 苦労したのは歌を口ずさむシーン。男の子のキャラで歌う、という仕事はこれまで経験したことがないものだった。だが、母親とシンドバッドの絆を思わせる重要なシーンだ。村中さんは「たどたどしく歌ってはまずいので、移動中も何度も聞いて。体になじんだものを出せるようにした」といい、「私の中では新たな挑戦で苦労しました」と振り返る。

 第1部は旅に出るまでの序章。シンドバッドというキャラクターから連想される“冒険”の要素は、第2、3部以降により濃くなっていくという。村中さんは「他のキャラは、それまでどういう人生を生きてきたのか、多くはまだ明らかになっていない。今後は他のキャラたちの過去も明らかになっていくと思います」と第2部以降の見どころを語ってくれた。「楽に見ていただいても、胸に刺さる言葉があると思う。見て、感想を大切にしていただいて、長く長く、大人になっても、お子さんができても、(その気持ちが)続いていったらいいなあと思いますね」と笑顔で語った。

 <プロフィル>

 むらなか・とも。12月15日生まれ。茨城県出身。テレビアニメ「ワールドトリガー」の主人公・空閑遊真役など出演多数。7月4日公開の劇場版アニメ「シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島」で主人公のシンドバッドを演じる。特技はマッサージ、ジャズダンス、社交ダンス、水泳。

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