テレビ質問状:「人形アニメーションの父・持永只仁の約束」 人形アニメの礎を築いた人物の半生

人形アニメーションの父・持永只仁さん
1 / 2
人形アニメーションの父・持永只仁さん

 WOWOWは毎週土曜午後1時に「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」枠として、「ノンフィクションW」と「国際共同制作プロジェクト」の2番組を両輪に、国内外のさまざまなテーマを扱ったオリジナルのドキュメンタリー番組を放送している。8月1日に放送される「ノンフィクションW 人形アニメーションの父・持永只仁の約束~未完のシナリオが繋ぐ日本と中国~」のプロデューサーを務めたWOWOWの制作局制作部の大原康明さんに、番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 --番組の概要と魅力は?

 日本と中国のアニメーションの礎を築いたアニメーション作家、持永只仁さんの激動の半生をひもとくことで、アニメーションを通じて彼が“次の世代に残そうとした思い”に迫ります。そしてなんと、取材の過程で持永さんが完成させることのできなかった「未完のシナリオ」を発見しました。30年以上前に中国の友人と共同制作を約束したシナリオです。このシナリオをめぐり、持永さんの弟子たちが時空を越えて動き始める姿もドラマチックに描きます。

 --今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 制作会社のプロデューサーチームから話を持ちかけられた際、素直に興味が湧きました。今の若い世代はアニメーション文化への関心が高く、私もその一人です。しかし、恥ずかしながら、持永さんのことをよく知りませんでした。彼のなし遂げたかったことや、現代のアニメーション業界に残した影響の大きさを知るにつれ、「一体どんな人なのだろう」という思いはやがて、「持永さんの残したことをつむいでいかなくてはならない」という使命感へと変わりました。

 --制作中、一番に心掛けたことは?

 持永さんは、戦前の日本~戦後の満州~戦後の日本……を駆け抜けました。終戦や文化大革命、商業主義の台頭といった出来事をまたいでいく、まさに激動の時代でした。ところが、今の若い世代の人たちにとっては、“歴史上の出来事”に見えてしまう可能性があります。そこで、持永さんがアニメーションを通じて伝えようとした「次の世代に受け継ぐ」という普遍的なテーマを描くことによって、ご覧になった方に“共感”していただけるドキュメンタリーになるよう心掛けました。

 --番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 持永さんの愛弟子で、今もなお人形アニメーション界の第一線でご活躍されている真賀里(まがり)文子さんに取材をさせていただきました。ものすごくパワフルな方で、私の方がエネルギーをもらってしまう場面が多々ありました。実は、真賀里さんとは不思議なご縁があり、かつて私が担当した番組「脇役目線」で真賀里さんのお弟子さんに偶然にもアニメーション制作をお願いした経緯がありました。ついには、真賀里さんにも人形アニメーションで作品を手掛けていただきました。そして今度はドキュメンタリー。出会いがこうしてつながっていくことに運命めいたものを感じずにはいられません。

 --番組の見どころを教えてください。

 今作は、持永さんが中国人の友人、特偉さんと共同制作を約束した、未完のシナリオ「二つの太陽」を巡る物語です。1950年代から数えること、およそ60年。国境や時空、そして、世代を超えて、約束が果たされようとする瞬間を見届けていただきたいです。登場する方々は皆、優しく、そして、どこかチャーミングな方ばかりですので、そちらもご注目ください。

 --視聴者へ一言お願いします。

 持永さんのことを初めて知る人も、今作を見終えた後、きっと持永さんのことを好きになっていると思います。歴史をまたいだドラマチックな物語を終戦70年という節目の夏に、ぜひ、味わってください。

 WOWOW 制作局制作部 プロデューサー 大原康明

写真を見る全 2 枚

テレビ 最新記事