夜の街を徘徊(はいかい)し、事件や事故現場の刺激的な映像を撮影してはテレビ局に高値で売りつける報道パパラッチ、通称“ナイトクローラー”の驚くべき姿を描いた映画「ナイトクローラー」(ダン・ギルロイ監督)が、22日から公開される。今年の米アカデミー賞で脚本賞にノミネートされた作品で、主演のジェイク・ギレンホールさんの怪演が話題になっている。常軌を逸した行動で特ダネをものにしていくギレンホールさん演じる主人公と、それを助長させるテレビ局の人間、さらに、その報道を受け取る私たちへの警告ともとれる問題作だ。
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失業中のルー(ギレンホールさん)は、事故現場を通りかかったとき、悲惨な映像を撮影し、それをテレビ局に売る“ナイトクローラー”の存在を知る。ルーは早速ビデオカメラを手に入れ、事故現場に乗り込んでいく。そして、悪知恵を働かせ、撮った映像を某テレビ局の女性ディレクター、ニーナ(レネ・ルッソさん)に売り込むことに成功する。以来ルーは、刺激的な映像を欲しがるニーナの要求に応え行動をエスカレートさせていく……という展開。
もともと良心の呵責(かしゃく)など感じないルーは、普通の人間ならひるむような現場でも果敢に攻め込んでいく。「これをやったら相手に迷惑では?」「心象を悪くするのでは?」なんてことは考えない。口がうまく、ずる賢い彼には、同業者すら“ネタ”にする。そして、この仕事が天職となる。ある事件現場で彼が取った行動は、まさに口があんぐりとなるほどあきれた行為だ。彼にそうさせるよう仕向けるニーナにも、批判の目を向けたくなる。しかし、ふと思う。ルーをそういった衝動に駆り立たせるのは、それを求める人間がいるからで、ルーは私たちの欲望から生まれたキャラクターなのではないか、と。
昼と夜とでまったく異なる顔を見せるロサンゼルスという街にも驚かされたが、何より驚かされたのは、ルーを演じたギレンホールさんの演技だ。これまで好青年、同性愛の男性、正義感の強い刑事などいろんな役をこなしていたが、今回ほど不気味な男の役は見たことがない。体重を12キロ落として演じたそうだが、落ちくぼんだ目をぎらつかせながら特ダネを追うその姿は、一見の価値ありだ。22日からヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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