東野圭吾さんの小説を基に映画化した「天空の蜂」(堤幸彦監督)が12日に公開された。映画は、超巨大ヘリ「ビッグB」を乗っ取り、原子力発電所の真上に静止させるという史上最悪の原発テロに立ち向かう人々の8時間のドラマを描く。「ビッグB」を開発した設計士・湯原役の江口洋介さんと、原子力発電所の設計士・三島役の本木雅弘さんが初共演を果たしているほか、綾野剛さん、仲間由紀恵さんら豪華キャストが顔をそろえている。テロ事件を追う刑事の関根を演じた落合モトキさんに、役作りや撮影の裏側、見どころなどを聞いた。
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落合さん扮(ふん)する関根は、ベテラン刑事の室伏(柄本明さん)とともに、ビッグBを奪った犯人を追うという役どころ。関根というキャラクターについて、「柄本さん演じる室伏とバディーを組み、ついていくというのは、根っからの刑事というか熱いものがないとできない」と落合さんは感じ、「バイト先などでどなられてすぐにやめちゃうみたいな感じではなく、仕事が好きなのでは」とイメージした。そして、「実は家族がいるということを考えたら、関根は自分のためだけではなく一生懸命やっているんだろうなと思う」と関根の心情に思いをはせる。
関根はメガネをかけ独特な髪形もしていることから一見すると気弱さそうな印象を受けるが、「可愛らしい感じ(笑い)」と落合さんは関根の外見を評し、「おでこを出すことはそんなにないのですが、髪形はこれでいこうということを、監督が衣装合わせの段階からプランを持っていました」と経緯を明かす。
ドライで頼りなさそうな関根ではあるが、「ストーリーが進むにつれて壮絶な面を見せたりと、やっていることは人間っぽいし、実は内に熱い部分を秘めている」と語り、「自分の足りない頭をフル回転させながらいろんな情報を得るというところは、自分とちょっと似ているのかなと」と共感する。そして、「僕は関根ほど、そこまではしっかりはしていないですけどね」と言って笑う。
共に犯人を追うという役回りから柄本さんとの共演シーンが多いが、「映画やテレビでよく見ていた方だったので、日々緊張しました」と振り返り、「後半に向けてだんだんとなごんでいくというわけではなく、最初から最後までいい緊張感が保てていたので、感謝の気持ちでいっぱいです」と神妙な面持ちで語る。
綾野さん演じるビッグBを奪う謎の男・雑賀と対峙(たいじ)し格闘するシーンでは、「アクション部の方も来られて、いろいろと説明を受けた」と話す落合さんだが、実際には「ふたを開けてみたら(自分が)後ろから綾野さんのところへ突っ込んでいってもみくちゃになり、本当にケンカをしたらこうなるみたいな感じになった」と打ち明ける。続けて、「(カメラが)横から撮っていたのに草むらで寝っ転がって演技をしていたので、(カメから)隠れてないかなと考えていました(笑い)」と冷静にカメラ位置を気にしていたという。
乱闘シーンを演じるにあたっては、綾野さんから「ケガする勢いで自分もいくから、モトキもそれぐらいで来てほしい」と声を掛けられたことを明かし、「綾野さんはすごく寛大な方」とたたえ、「中途半端なぶつかり方はしなかったので、綾野さんとは距離が近くなりました」と笑顔を見せる。
今作は原発を題材に重厚でスリリングなストーリーが展開する。「原作はずいぶん前に書かれていますが、現代に投げかけるような内容ですごいなと」と落合さんは驚き、「自分でこういうことを発信するということは多分ないと思うので、この作品に携われてよかったと思う」という。映画では東日本大震災や原発に関する描写もあるが、「いろんな人の見方、いろんな人の境遇で見たら、いろんな形のとらえ方があるのではと」とこの映画を見た人の感性に委ねる。
長編でありながら、テンポのよさで見せていく今作について落合さんは、「8時間というのをカウントダウンしていく描写が新鮮で斬新な感じがするし、キャッチーな感じの演出で撮られているから、いろんな年齢の人に楽しんでもらえるのではと思う」と自信をのぞかせる。
印象的なシーンを聞くと、「空中にいるビッグBからの救出シーンは、コンピューターグラフィックス(CG)とは分かっていても、すごく臨場感がある」と感じたといい、「手に汗握る感じで、演じていた(上条役の)永瀬(匡さん)は大変だっただろうなと思います」と撮影の大変さを思いやる。
落合さんは、「MONSTERZ」ではおねえ、「ホットロード」では暴走族、「日々ロック」ではビジュアル系バンドのボーカルと、強烈な個性を持ったキャラクターを演じる機会も多い。「知識が足りない人間なので、いろいろ掘り下げてみたりはしますが、毎カットいつも不安」と謙虚に語るも、「普段、自分が無であることが多くて、自分を前面に出すことがそんなにないと思うし、物事に対しての意見は言うよりも聞くほうが好きなタイプだから、素直に疑問を持たずにいろいろやれるのかなと」と自己分析する。
今後、挑戦してみたい役には「死なない役やガチガチの恋愛ものとか、いろんな役をやってみたい」と落合さん。その理由を、「シリアスな物語だと、だいたい心が折れてどこかにフェードアウトしてしまったり、死んでしまったりする役が多い」と説明し、「自分ではそういう役で作品を選んでいるというのはまったくないので、そういう運命なのかな……」と達観したような表情を浮かべる。
恋愛ものに関しては、「恋愛映画に出てくる女の子にちょっかい出す役みたいなのはあるけれど、主人公と愛を育んでいくというタイプを演じたことはない」と切り出すも、「もう(25歳なので)制服は着られないかな」と自虐的に言って笑う。恋愛ものに挑戦したいと話す落合さんに理想の女性像をたずねると、「自分の時間を持っている人がいい」と言い、「共有できる時間も大切だと思いますが、家で自分は他人と一緒に何日もいられない」という考えを持っていることを告白する。
さらに、「友だちが何日も泊まりに来ていると、『そろそろ帰ってくれないかな』というふうに思ってしまう」と告白は続き、「男女問わず、一度どこかに行ってくれる時間があるのなら、いつでも来ればいいのにとは思います。最悪だな……(笑い)」と自らツッコミつつ、持論を展開する。そして「一緒にいる時間も好きだし、すてきな時間を経験できるけれど、途中でちょっとだらけたくなっちゃうんです」と理由を説明する。
俳優業以外でも、子供の頃からバラエティーが好きだと話す落合さんは、「有吉(弘行)さんの『正直さんぽ』は出てみたい」という野望も持っていて、「バラエティーをやっている人と同じところに立ったら冷や汗をかいちゃうとは思いますが、好きにしてくださいと言われたい」と言ってほほえむ。
今作の見どころについて、「どのキャラクターに感情移入するかというのは、ご覧になる方たちがいろいろな見方ができると思います」と豪華キャストについて思いをはせ、「映画を見たときに、映画の大きな力と無限の可能性というのをすごく感じられると思うので、いろんな方に見ていただきたい」とメッセージを送る。
自身が演じる関根に関して見どころは、「詳しくは言えないですがクライマックス」だと言い、「綾野さんとのシーンのある描写では、雑賀の関根に対する尊敬というか敬意があって、そういう描写にもなっているのでは、と監督がおっしゃっているのを聞きました」と明かし、「監督が感じたことを、自分と綾野さんの演技で表現できていたらうれしい」と目を輝かせた。映画は新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開中。
<プロフィル>
1990年7月11日生まれ、東京都出身。子役時代から数多くの映画やドラマに出演し、2001年には映画「ランニングフリー」で初主演を務める。主な出演作には「桐島、部活やめるってよ」(12年)、「るろうに剣心」(12年)、「ホットロード」(14年)、「日々ロック」(14年)などがある。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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