パトレイバー:押井守監督が明かす実写DC版公開の経緯 師匠への思いも…

「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」を手がけた押井守監督
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「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」を手がけた押井守監督

 「機動警察パトレイバー」シリーズの実写化プロジェクトの劇場版長編「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」(押井守監督)に27分の映像を追加したディレクターズカット(DC)版が10日、公開される。「最初にこれ(DC版)があった」と話す押井監督にDC版が公開される経緯や作品に込めた思いを聞いた。

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 ◇最初にDC版があった

 「機動警察パトレイバー」は、歩行式の作業機械・レイバーが実用化された近未来を舞台に、レイバー犯罪に立ち向かう警視庁の特科車両二課中隊(特車二課)の活躍や泉野明ら隊員の日常を描いたSF作品。1988~94年にマンガ誌「週刊少年サンデー」(小学館)でゆうきまさみさんのマンガが連載され、89~90年にはテレビアニメも放送された。実写版長編「首都決戦」は2014年4月~15年1月にイベント上映された全7章のシリーズに続くストーリーで、5月に公開された。

 「首都決戦」は、押井監督が手がけた93年公開の劇場版アニメ「機動警察パトレイバー2 the Movie(パト2)」の後日談で、13年前に東京でクーデターを企てた元自衛官の柘植行人のシンパが、熱光学迷彩によって姿を消すことができる最新鋭の戦闘ヘリコプター(通称グレイゴースト)を使って東京でテロを起こす。DC版は、グレイゴーストのパイロット・灰原零(森カンナさん)のシーンや特車二課メンバーの日常を描いたシーンが追加される。

 押井監督はDC版が公開される経緯を「最初にこれ(DC版)があった。尺が長いという話になったが、(自分は)長いとは思わなかった。プロデューサーに『つまらないなら、つまらないと言え』と言ったけど、そういう(つまらない)わけでもないようで、けんかしても仕方ないから、二つ(のバージョンを)作りましょうとなった」と説明する。

 「パトレイバー」や押井監督の作品には熱狂的なファンが多いこともあり、「5月に公開のものを見た人はもう1回見てくれると思う。世界には2種類の人間しかいない、アニメを見る人、見ない人と……冗談で言ったこともあるけど、『パトレイバー』のファンが義理堅い。自分たちが支えなければ……と思ってくれている」と話す。

 ◇特車二課は大人の世界

 押井監督は「この映画は邦画でもないしハリウッド大作でもない。SFや警察もの、社会派でもない。アニメ版もそうだった。そういうものだから続いているのかもしれない」と話し、「パトレイバー」の根底にあるものについて「職場が楽しそうと思えるものを作った。生活感があって、だらだらした日常があって、飯、酒があって、ネエちゃんもいる……という働きたい職場。映画の現場も似ている。アニメ版では熱血ものになったところもある。その方が楽だから」と語る。

 個性的な特車二課の面々の日常シーンも見どころの一つだった「パトレイバー」は、90年代を中心に人気を集めた。一方、押井監督は「首都決戦」について「今の中高生は見ないかもしれないし、分からないかもしれない」とも話す。「(特車二課の面々は)いい人なのか、ダメな人なのか分かりにくい。映画は知らないものを見せるものだと思っている。大人の世界なんですよ。(実写版は)アニメよりもアダルトにしている」と考えているようだ。

 また、「首都決戦」で描いているのは「よく分からないものへの怖さ」だ。レインボーブリッジや東京都庁を攻撃するグレイゴーストのパイロット・灰原は、せりふがほとんどなく、正体不明で不気味な人物として描かれている。押井監督は「犯罪者が思いつかなかった。政治的な動機は分かりやすいが、何を考えているか分からないものを怖く見せたかった。犯罪者を考えるのに時間がかかった」と苦労を明かす。

 ◇師匠は多分褒めてくれる

 押井監督は「首都決戦」について「“師匠”は多分、褒めてくれる気がする。『パト1』は褒められたけど『パト2』は怒られた」とも語る。師匠とは「科学忍者隊ガッチャマン」「ニルスのふしぎな旅」などを手がけた故・鳥海永行さんだ。押井監督は、鳥海さんから伝えられた言葉を「憧れの世界を描くのがお前の仕事だ。自分のやりたいことを全部並べるような勝手なことはやるな。一つはためになりそうなことを入れておけ。お金もらって喜んでもらう映画を作れと言われた。めちゃくちゃ怖かったですよ」と説明する。

 「パトレイバー」の実写化プロジェクトを含め、近年は実写の大作を手がけている押井監督だが、長編アニメの制作に期待しているファンも多い。押井監督は今後の予定について「アニメの話はなくはないけど、可能性は30%くらい。久しぶりにアニメらしいアニメになりそう」と話していた。

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