初野晴さんのミステリー小説「ハルチカ」シリーズ(KADOKAWA)が原作のテレビアニメ「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」が2016年1月にスタートする。原作は、主人公と同世代の高校生以外にも、40、50代のファンも多いという人気シリーズで、放送前から注目を集めている。原作者の初野さんにアニメへの思いや執筆について聞いた。
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「ハルチカ」は廃部寸前の弱小吹奏楽部で“吹奏楽の甲子園”普門館(全日本吹奏楽コンクール)出場を目指す幼なじみの穂村千夏(チカ)と上条春太(ハルタ)が、身近な事件を解決する姿を描いたミステリー。原作は5巻まで発売されており、アニメは「TARI TARI」などの橋本昌和さんが監督を務め、「SHIROBAKO」などのP.A.WORKSが制作する。
初野さんはアニメ化について「自分の作品が映像化されるのは初めて。アニメを入り口に活字に興味を持つ方が増えるのがうれしいし、光栄です。この作品でミステリーの楽しさ、奥深さを知り、自分以外の作家の作品もぜひ読んでいただければ」と喜びを語る。一方で「アニメは高校生の時に見た世界名作劇場の時代で止まっている。不勉強でした」とアニメには詳しくはなかったという。
アニメ化に際して、スタッフにお願いしたことはほとんどないといい「制作会社の方や監督、脚本家などとの打ち合わせに参加させていただき、優秀な方だと感じた。お任せしました」と話す。「本格ミステリーで画面展開が少ない、会話シーンが中心になる。アニメで忠実に再現すると絵としては面白くない。活字とアニメは違うので、それを踏まえて自由にやってほしいと伝えました。多分、この方々であれば、おかしなことにならない。自由にやってもらいたかった」とスタッフを信頼しているようだ。
キャラクターデザインは、ライトノベル「棺姫のチャイカ」のイラストなどでも知られるなまにくATKさんが手がけ、例えばチカが目の大きな美少女となっており、原作の表紙の絵とは印象が異なる。キャラクターについても基本的に“お任せ”で「普段は本を読まない人が、アニメから入るきっかけになるので、いいですよね」と語る。
原作は、主人公と同世代の高校生以外にも、40、50代のファンも多いという。初野さんは、執筆の際に意識していることを「自分が読みたいのが非日常の体験、知的好奇心の刺激、現実以上の真理、本格スピリットにあふれたミステリーです。ただ、詰め込むほど(読者が作品に)入りにくくなる。チカとハルタの恋愛要素はカットしています。2人がくっつかない前提で書いている。そこが新鮮かもしれません。80年代の時代の刻印を打っているので、40、50代も楽しめると思います」と話す。
また、廃部寸前の吹奏楽部を舞台としていることについては「高校時代は柔道部で、吹奏楽部の経験はありません。吹奏楽部は華があるし、機会があれば、いつか自分でもやりたかった。虚構の中で追体験をしたかったんです。吹奏楽部をリアルに描くとなれば、大所帯になる。廃部寸前にしたのは、登場人物を少なくして、主人公を自由に動かすため」と説明する。
「ハルチカ」には、元気で度胸もあるチカや頭脳明晰(めいせき)なハルタ以外にも、弟が亡くなったことをきっかけに吹奏楽から距離を置くようになった成島美代子や出生について悩みを持つ中国系アメリカ人のマレン・セイなど個性的なキャラクターが続々と登場する。初野さんは、キャラクターの着想について「謎があり、ストーリーがあって、そこからキャラクターが生まれる。キャラクターを描いているようで意外に描いていない。ストーリーありきで、キャラクター寄りの作品というわけではありません。書くべき部分と書かないところを考えています。例えば家庭環境などについては詳しく書いていないですよね」と明かす。
チカとハルタら高校生たちが事件を解決していく中で、成島美代子やマレン・セイらが吹奏楽部員となり、仲間が増えていくことになる。初野さんは「仲間が増えていくのは王道的な面白さがあります。『南総里見八犬伝』とか古典的な要素ですね。影響を受けています」と話す。
アニメについて「吹奏楽の演奏など音の部分にもかなり気合が入っています。リアルさで制作陣のこだわりを感じます! 楽しみにしていただければ」と話す初野さん。アニメになることで、キャラクターが動き回り、音も加わり、作品の新たな魅力が発見できるかもしれない。また、初野さんは原作小説の今後について「今度は時間をかけないように書きます。筆は遅い方ですが頑張っています」と話しており、小説の展開も注目される。
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