注目映画紹介:「森のカフェ」 哲学的なウイットと情景の美しさあふれる不思議な世界観

映画「森のカフェ」のワンシーン (C)Norio Enomoto
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映画「森のカフェ」のワンシーン (C)Norio Enomoto

 2011年公開の「見えないほどの遠くの空を」に続く、榎本憲男監督の長編第2弾となる映画「森のカフェ」が12日に公開される。紅葉が美しい森を舞台に、少し気難しい若手哲学研究者と不思議な少女が出会い、ユーモアにあふれたやり取りを繰り広げる。主人公の哲学者を「聯合艦隊司令長官 山本五十六」(2011年)や「霧の中の分娩室」(14年)などに出演した管勇毅(かん・ゆうき)さんが演じ、少女・森野洋子役を東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」のコゼット役で注目を集める若井久美子さんが演じている。情景の美しさや不可思議な空気感に魅了される。

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 論文を書きあぐねている若手の哲学研究者・松岡啓志(管さん)は、気晴らしに近所の森に行き、森の奧のテーブルでノートを広げ思索していた。そんな啓志に、突然「森のカフェにようこそ」と若い女性(若井さん)が声を掛けてきた。いぶかしがりながらも啓志は半ば強引にコーヒーを注文させられ……というストーリー。

 今作は哲学を扱った映画でありながら、哲学から連想される小難しさはなく、なんともいえない哲学的なウイットに富んでおり、クスッとさせられ、ほんわかとした雰囲気に包まれていて見ていて心地よい。舞台となった森は自然が美しく、どことなく非日常感を漂わせており、表現や色遣いが繊細かつ丁寧で、テーマに深みを与えている。真面目でぼくとつな啓志と、“不思議ちゃん”で愛されキャラの洋子による掛け合いが新鮮で、演じている俳優さんたちの魅力と重なり、物語の世界へとしっとりと引き込まれる。おしゃれで楽しく、そしてちょっとシニカルでビターな味わいが楽しめる。リズムや長さも心地よく、劇中歌が思いのほかクセになる。12日からヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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