M-1グランプリ2024 決勝戦
決勝戦 FIRST ROUND 前半戦 1~5組目
12月22日(日)放送分
活動休止中のバンド「レミオロメン」のボーカル、藤巻亮太さんがソロシングル「大切な人/8分前の僕ら」を16日にリリースした。NIVEAのCMソングとして放送され話題のナンバー「大切な人」やキットカットのネスレが仕掛ける、音楽と映画の連動プロジェクト「ミュージック&シネマ“ブレイク”」でも話題の「8分前の僕ら」を収録。これまでとは一味違った胸に響く言葉とエモーショナルな歌声を聴かせている。
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――「大切な人」はNIVEAブランドCMソングとして、以前から話題になっていましたね。
はい。いろんな方から、CMで聴いたという話を聞きます。レミオロメン時代を除いて、ソロの藤巻亮太としては一番テレビで流れている曲なので反響がとても大きいですね。
もともとCMで流れる1コーラス分をミュージシャンの飛内将大さんが作ってあって、最初はそれを歌うシンガーとして僕を起用していただいたんです。それでソロとしてのチャレンジの一環として歌わせていただいたのですが、三拍子とかAメロとサビだけのBメロがない構成とか、曲の持つ独特な雰囲気に魅了されてしまって。これを1曲に仕上げたいと願い出て、曲の後半の展開や大サビのアレンジなどを加えて完成させました。
――藤巻さんといえばギターですが、ピアノで始まりストリングスが全体に使われていたりと、これまでの藤巻さんのサウンドとは少し違う雰囲気ですね。
CMで完成されているものを、強引に僕色に染めようとは思いませんでした。CMの流れに沿って始まり、途中からギターが出てきて少しUKロックっぽくなるんですけど、このギターは自分で弾いています。曲のキラキラした感じもありつつ、ギターの力強さを生かしたいと思って、プロデューサーや飛内さんと相談しながら作っていきました。聴きどころは、CMでは流れない大サビです。跳ねる感じになるのですが、その後に出てくるストリングスがとても気持ちよく感じるし、またサビに戻るところが新鮮な気持ちで聴いてもらえると思って作りました。
――CMは「大切なあなたの肌を守りたい」というニュアンスの歌詞ですが、1曲にするにあたってはどういうイメージで広げていきましたか。
世界観がすでにあるものなので、どう歌詞で展開していくか難しかったですね。CMで流れている1番は、誰かを守りたいという自分の願望を投げかけているので、曲として成立させるには、もっと背景が見えてこなければいけないと思いました。そこで、じゃあどういう人を守りたいのか……と考えていったわけです。
――それは藤巻さんにとって、家族や恋人、友達やファンなどですか?
そうですね。大切な人は、一人だけとは限らないですから。近くにいる人って、すでに空気のような存在だから、面と向かって大切だとはいわないけど、そういう人がいて今の自分がいるわけで。それにそういう人は、自分にとっての鏡でもあって。関わることで見えてくることも、きっとあると思います。だから聴いてくれる人が、いろいろな相手に置き換えながら聴いて、曲のメッセージの向こうに思いをはせてくれたらいいなと思います。
――後半の大サビでは、雪の情景が見えるような歌詞になっていますね。
雪の凍える感覚とか、聴いてくれる人の五感に訴えて、いろんなイメージを喚起させるものにしたいというのがありました。あと、雪の持っているはかなさ……きれいだけど、いつかは溶けてなくなる。人間にとって確かなことは、過去に起きた出来事と、いつかは死ぬということだけだと、何かで読んだことがあって。だからこそ、今のこの時間は特別なのかもしれない。限りある人生の中で、大切な人と過ごす時間や人生を含めて、どれだけ濃い密度で過ごしていけるかという。
――「8分前の僕ら」はどのように生まれた曲ですか。
実はこの曲って、2012年10月にソロアルバム「オオカミ青年」を出した頃に1フレーズ作って、温めていたものなんです。「オオカミ青年」という作品は、レミオロメンでは決して出せなかった自分の中のダークサイドを吐露することがモチベーションになっていたのですが、いざ「オオカミ青年」をリリースしてしまったら、自分のソロとしての大義名分が成就してしまったようで、ソロとして次に何をしたらいいか分からなくなってしまって。そうしているうちに、バンドとかソロとか線を引くことはやめよう、今の自分が思うことを素直にやっていれば、それがゆくゆくは自分のソロというものを形作っていくんだと思えるようになりました。そうして自分に素直になってできたのが、「8分前の僕ら」という曲です。
――8分という時間には、どんな意味が?
太陽が発した光が地球に届くまでの時間。つまり僕と誰かが見ている太陽の輝きは、8分前のものなんですね。そこで、8分前に自分は何をしていたか、8分後は何をしているか。時間軸をずらすことで、僕と誰かの関係が違うふうに見えてくるんじゃないかって。そう考えると、今こうしている僕らの時間は、とてもかけがえのないものに見えて、特別な光を帯びてくるんじゃないかと思いました。
――「大切な人」の雪の情景の話と似ていますね。
そうですね。この2曲は、歌詞のテーマがとても似ていて。当たり前ということは、視点を変えると当たり前じゃないかもしれない。そういう視点を持つことで、人生に違った価値を見いだせるかもしれないし、救われることもあるんじゃないかということです。救われるというのは、心にほんの少しスペースが生まれて、心が軽くなるということ。スペースがあれば、自分以外の誰かのことを受け入れられるようになるし、それが人間にとっての喜びにつながると思っています。
――でも日々の生活に追われていると、そういうふうには思えないこともしばしばありますよね。
生活がルーティン化していくことは楽だけど、そういう中で本当にこれでいいのか?と、誰でも一度は考えると思うんです。きっと心は揺らいでいるんだけど、それに耳を傾けていないだけで。いつもそういう目線でいることが大事だと思っているのが、僕らミュージシャンだったりするんでしょうし、みんなにそう気づかせることが、ある意味で音楽の持つ役目かもしれないと思っています。
自分の人生から少し距離を置いて、俯瞰(ふかん)で見る時間を持つことが大切です。いつもと違う電車に乗るのでもいいし、いつものルーティン化しているものから、ちょっとずらしたところから自分を見る。ちょっとした勇気、ちょっとしたエネルギーを注いでみるとか。きっと心が軽くなって、人生が違って見えてくるのではないでしょうか。
<プロフィル>
1980年1月12日生まれ、山梨県出身。地元・山梨の同級生3人でレミオロメンを結成し、2003年にシングル「電話」でデビュー。「3月9日」や「粉雪」などヒット曲を生み出し、12年に活動休止。同年、シングル「光をあつめて」でソロデビュー。2016年2月8日に大阪・梅田CLUB QUATTROで、2月11日に東京・渋谷WWWで開催される「KIT MUSIC Valentine Live 2016」に出演。2月17日、徳島シビックセンターを皮切りに、「藤巻亮太TOUR 2016~歌旅編~」を開催。
(取材・文・撮影/榑林史章)
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