マンガ質問状:「エクスアーム」 作画作業は“火の車” 桂正和先生から推薦メッセージ

古味慎也さん画、HiRockさん原作の「EX-ARMエクスアーム」コミックス3巻の表紙
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古味慎也さん画、HiRockさん原作の「EX-ARMエクスアーム」コミックス3巻の表紙

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、2030年の東京を舞台に、オーバーテクノロジーがらみの犯罪バトルを描いた古味慎也さん画、HiRockさん原作の「EX-ARMエクスアーム」です。集英社「グランドジャンプ編集部」の綱島圭介さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 --この作品の魅力は?

 「スター・ウォーズ」最新作が公開となった今年、「日本のSFマンガもすごい!」とあらためて世界のエンターテインメント界に伝えたい。「EX-ARMエクスアーム」は、そんな日本のSFマンガの最前線に挑む本格SFバトルです。今回、第3巻が刊行になりました。

 作品のテーマは、タイトルにもなっている「EX-ARMエクスアーム」という時代の科学力を凌駕(りょうが)した「超過技術(オーバーテクノロジー)」な兵器を巡っての、犯罪者と警察の戦いになります。

 「力」を手に入れた人間によっていや応なしに巻き起こる凶悪犯罪とバトル……。しかし、じつは主人公アキラは2014年の平凡な高校生。彼がなぜ戦いの舞台に上がるのか? それはある日、交通事故に遭い、目覚めると時はたち2030年、しかも自分自身が「EX-ARMエクスアーム」として、「脳」だけの姿になっていた。物語の第1話はそんなスタートをきっています。

 日本の青年マンガ誌界はこれまで多くの世界に誇るSF作品を生み出してきました。「AKIRA」「攻殻機動隊」「銃夢」「GANTZ」、近年では「テラフォーマーズ」など……。それらは斬新なアイデアと娯楽性に富み、深いテーマに挑んでいて、世界に誇れる日本SFマンガ史を築き上げてきたと思います。

 本作「EX-ARMエクスアーム」は、圧倒的な表現力と魅力的なキャラクターを描く気鋭のマンガ家・古味慎也先生と、SFストーリーテラーの実力派HiRock先生のコンビが、渾身(こんしん)の力でSFの最前線に挑んでいます。まさに、SF新世紀襲来!! 「超常兵器」犯罪バトル「EX-ARMエクスアーム」をお楽しみください!!!

 --作品が生まれたきっかけは?

 本作「EX-ARMエクスアーム」の前身として、古味慎也先生は「EX-VITAエクスヴィータ」という作品を、ヤングジャンプ増刊「ミラクルジャンプ」で連載されていました。

 ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、「EX-ARMエクスアーム」のキャラクター、美波とアルマは「EX-VITAエクスヴィータ」の主人公・警察コンビです(「EX-VITAエクスヴィータ」は「EX-ARMエクスアーム」のパラレルワールドな立ち位置で物語に接点はありません。ですが、キャラクターは同じです。手塚治虫先生が使った手法、別作品に同じ俳優が出る「宝塚システム」と近いと言えるかもしれません)。

 「EX-VITAエクスヴィータ」は、古味先生の新人作家としてのデビュー作でした。じつは、「EX-VITAエクスヴィータ」は「ミラクルコミック大賞」というマンガ賞で大賞をとり、掲載された読み切りがとても好評だったのでミラクルジャンプ誌で連載化されたという経緯があります。古味先生も無我夢中で新連載に取り組んでいらっしゃいました。

 そんな連載を続けていく中で、作家としてもっと想像もつかないこと、未知のもの、ブラックボックスの中に突入してみたい……といった感覚を求めて、好評だった「EX-VITAエクスヴィータ」を2巻でいったん完結させて、次回作の構想に入りました。古味先生も「EX-VITAエクスヴィータ」への愛情がたっぷりだったので、かなり大きな決断でした。

 そして本格的に作品作りに加わっていただいたのが、原作のHiRock先生です。HiRock先生は、じつは「EX-VITAエクスヴィータ」の時からアドバイザー的な立ち位置で関わっていただいていた方です。原作者と組むならHiRock先生しかない!と考えていました。

 --編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

 昔も今も、古味先生の作画作業は“火の車”状態です(汗)。

 月2回刊のグランドジャンプで毎話28ページ。作画だけでなくもちろんネームという話の構成も同時進行です。さらに、コミックスが発売になると、カバーイラスト、原稿修正、おまけマンガの描き下ろし……。雑誌本誌でも、巻頭カラー3ページ、時には雑誌表紙イラストと膨大な作業とアイデアが常に求められます。

 今回も、本当に3巻が出せるのでしょうか!?と、これまでで最もシビアな進行でした(汗)。2巻発売直後から戦慄(せんりつ)していましたが、無事刊行となりました。しかも、コミックス描き下ろしのカバーイラストのアルマと背景のクオリティーの高さには原稿をいただいた時に手が震えました。巻を重ねるごとに、作品世界のエネルギーが放出する表現が進化しているのではないでしょうか。ぜひご覧ください!!

 --今後の展開は?

 3巻から始まった新章「美しきアンドロイド・エルミラ」編では、連載開始前から作者2人のイメージがあった、ある「兵器」が戦いのカギになります。物語上のお披露目は第4巻になりますが、その「兵器」がこれからの展開にまた大きな変化を与えていくことになると思います。

 そして、主人公アキラは失った「身体」を取り戻すことはできるのか? 「EX-ARM」の脅威にさらされる人類の運命は…!? 見どころ満載です! どうぞお楽しみに……!!!

--読者へ一言お願いします。

 今回、「EX-ARMエクスアーム」第3巻発売に際して、SFの巨匠・桂正和先生から帯に推薦メッセージをいただきました!! コメントは「このSF(マンガ)は、いろいろな味がして、とてもおいしい!」です! すてきなコメントをいただき、桂先生には本当に感謝です。そして、そのお言葉通り、SFバトルの面白さの最新形を追求した極上のエンターテインメントで、読めば何粒もおいしさが弾けること間違いなしです!

 まだまだ3巻目で、一気に読んでしまえると思います! ぜひ手にとってご覧ください!!

集英社 グランドジャンプ編集部 綱島圭介

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