無彩限のファントム・ワールド:話題のリンボーダンスの狙いは… 京アニ監督に聞く

「無彩限のファントム・ワールド」のビジュアル(C)秦野宗一郎・京都アニメーション/無彩限の製作委員会
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「無彩限のファントム・ワールド」のビジュアル(C)秦野宗一郎・京都アニメーション/無彩限の製作委員会

 「けいおん!」など数々のヒットアニメを生み出してきた「京都アニメーション」の新作テレビアニメ「無彩限のファントム・ワールド」。1月に第1話が放送されると、ヒロイン・川神舞がリンボーダンスに挑むシーンが「セクシーすぎる!」と話題になるなど、キャラクターが動き回るハイクオリティーな映像やギャグがアニメファンの支持を集めている。同作を手がけているのが「AIR」「涼宮ハルヒの憂鬱」「響け!ユーフォニアム」などでも知られる石原立也監督だ。「リンボーダンスは幼稚園の子供が見ても笑えるシーン。バカバカしいシーンは意味がないかもしれないが、それを笑えるのは知的な脳の作用だとも思う」と語る石原監督に、制作の裏側、セクシーだけではない作品の魅力を聞いた。

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 ◇バカバカしいシーンを笑えるのは知的な脳の作用

 「無彩限のファントム・ワールド」は秦野宗一郎さんの同名ライトノベル(KAエスマ文庫)が原作で、ファントムと呼ばれる異形の存在に対抗する少年少女たちの戦いを描く学園バトルファンタジー。アニメの舞台となるのは、人々の脳機能に変異が生じ、妖怪や幽霊の類いを認識できるようになり、それらをファントムと呼ぶようになった近未来で、ファントムに対抗するために、ホセア学院に設置された脳機能エラー対策室の生徒の活躍が描かれている。

 石原監督が昨年手がけた「響け! ユーフォニアム」は、吹奏楽部員の高校生たちの奮闘を描いた青春アニメだったが、「無彩限のファントム・ワールド」は異能バトル、学園コメディー、セクシーなどが盛りだくさんの作品となっている。石原さんは重要な要素となっているコメディーについて「好きですね。(シリアスよりも)コメディーの方が石原っぽいのかもしれません」と話す。

 第1話が放送されると、舞のリンボーダンスシーンなどセクシーな表現が話題になった。ハイクオリティーな作画に定評がある京都アニメーションによる、ヒロインが動き回る映像が、アニメファンの心をつかんでいるようで、石原監督は「思春期の男の子は性的なものに左右される。(『無彩限のファントム・ワールド』は)中高生の男の子が読む(マンガ誌の)『ヤング○○』のマンガのような少しお色気もあるイメージです」と明かす。

 一方で、セクシーシーンばかりを意識しているわけではなく、「リンボーダンスは幼稚園の子供が見ても笑えるシーン。バカバカしいシーンは意味がないかもしれないが、それを笑えるのは知的な脳の作用だとも思う」とも語る。

 ◇難解な設定もしつこく説明しない

 アニメの見どころは、もちろんセクシーシーンだけではない。脳科学やオカルトなどさまざまなテーマも魅力となっており、石原監督は「世界とは一体なんだろう? というのも原作のテーマ。中高生はカフカの『変身』を読んでみたり、自分の存在を考え始める。この作品も考えるきっかけになれば」と作品に込めた思いを明かす。

 石原監督自身も科学に対する興味が尽きないようで、「科学が進歩していく中で、宇宙の誕生に関する考え方が変わってきている……」などと宇宙や脳科学に関する話題になると話が止まらない様子。一方で、アニメでは難解な解説はなるべく避けているといい、その理由を「アニメで説明することは難しい。本は読んでいて、読み直すことができるけど、アニメのせりふはなかなか頭に入りにくいところもある。しつこく説明しないようにしています」と話す。

 アニメには、ファントムのルルや小学生の熊枕久瑠美ら原作にはいないオリジナルキャラクターも登場する。石原監督によると「(自身が手がけた)『中二病でも恋がしたい!』の時もそうだったけど、1クールのアニメで、メインキャラクターが3、4人というのは少ないと思っている。例えば、ルルはアニメの中で動かしやすいキャラクターでもあるし、にぎやかしとして登場している」という狙いがあるようだ。

 ◇新しい萌えができれば

 現在、深夜アニメは1クールに30本以上が放送されており、学園バトルものは1クールに必ず1本はあるほどの人気ジャンルとなっている。多数の作品が放送される中で、目の肥えたアニメファンに注目されるには、ほかの作品との差別化も必要なのかもしれない。石原監督が「ほかの作品と違った見せ方ができていないのかもしれない。視聴者が興味があることも限られている」と話すように、制作者にとって課題になっているようだ。

 一方で、石原監督は「萌えが好きなので、新しい萌えができればとは考えています」とも話す。「無彩限のファントム・ワールド」の今後の展開はもちろん、石原監督の“挑戦”も注目される。

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