山崎まさよし:ドラえもんの劇場版新作で主題歌「鳥の巣立ちをイメージした」

ドラえもん劇場版新作の主題歌シングル「空へ」をリリースした山崎まさよしさん
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ドラえもん劇場版新作の主題歌シングル「空へ」をリリースした山崎まさよしさん

 シンガー・ソングライターの山崎まさよしさんが、デビュー21年目の第1弾シングル「空へ」を2日にリリースした。タイトル曲は、5日公開の劇場版アニメ「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」の主題歌として制作したミディアムナンバーで、自身初の劇場版アニメへの書き下ろし楽曲だ。現在、20周年記念ツアー「“Twenty First Century Men” TOUR 2015-2016」の真っ最中の山崎さんに、節目を迎えた今の心境や今回の新曲について聞いた。

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 ◇20周年を迎え「音楽との向き合い方は変わらない」

 ――改めて、20周年を迎えられた心境はいかがですか。

 これだけ移り変わりの激しい世の中で、「10年たって、あともう10年」っていうふうにあんまり想像もできなかったんですけど、ホントにあっという間というか。周りに個性的な人(アーティスト)が増えてきたじゃないですか。そういう中で、ある時期において爆発的にドーンってやったわけでもなく、活動自体は結構、地道だけど、ただ淡々と粛々とやってきたっていうのを続けて、20年がたったんだなあという感じはします。

 ――音楽との向き合い方やスタンスに変化はありましたか。

 向き合い方は全然変わりませんよ。自分の音楽を深めていきたいっていうのはすごくありますけど、仕掛けるとか、そういうものは全部スタッフに任せてますし。会社や周りの人間はヒットさせたいとか、いわゆる世の中の動きに即した仕掛けをする仕事として、そこを充実させたいと思うんでしょうけれど、僕自身は、自分がストレスなく、満足のいくようにやってることの方が重要やったりするんです。

 ――現在開催中の20周年記念ツアーでは、「One more time,One more chance」や「セロリ」も披露しているそうですね。そもそも、この2曲はどんなきっかけで作られたんですか。

 「One more time,One more chance」は、バラードで切なげなシチュエーションを歌にするっていうことで、デビュー前ぐらいから書きためていた中の一つ。書き進めていった結果、こうなったということですね。「ちょうど桜木町(横浜市)に住んでるから、“桜木町”って入れよう」とか。何かモチーフや具体的なきっかけがあって歌を書こうっていうことはほとんどないですね。皆さん、何がきっかけで書いたのかっていうのはすごく興味を持たれるんですけれど、それよりも、聴いた人が自分の何かを重ねて想像を膨らませてくれたらいいと思うんです。それが歌のパワーというか、当時の時代背景や自分の思い出がすぐよみがえったりするというのは、歌のよさでもあり、残酷なところでもあると思うんですよね。

 「セロリ」は、好き嫌いの象徴として「セロリ」というワードが出てきて、タイトルもこれしかないだろうって。セロリは好きで、食べるんですけど、その当時、セロリがダメな人がいたんですよね。ダメっていう人がいたり、好きっていう人がいたり、パクチーがダメな人がいたり。そういうことを歌詞に落とし込んだら面白いかなと。

 ――「セロリ」は、SMAPがカバーしたことで一躍脚光を浴びたわけですが、そんなSMAPの今後の動向も気になるところではないかと……。

 全国的にあの歌が広まったのはホントに彼らのお陰で、僕はその時点では全然、無名だったし、恩があるというか。(自分の歌が全国に広まる)きっかけとなるグループが解散するとしたら寂しいですよね。そういう思いが一番強いです。

 ◇ドラえもんの主題歌は「軽い仕事じゃないな」

 ――そして、新曲「空へ」は「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」の主題歌として書き下ろしたそうですが、主題歌のオファーをもらった時の気持ちは?

 ご指名がかかったのはうれしかったですね。ただやっぱり、ドラえもんは国民的なすごいキャラクターなんで、変な話、軽い仕事じゃないなっていう感じはありましたね。

 ――映画自体が1989年公開の「のび太の日本誕生」のリメークということで、当時の映画を見たり、監督と話し合いをしながら作っていったそうですね。

 飛ぶシーンが多いので、飛翔感のあるメロディーということと、のび太の成長を劇中で表現しているので、大きなメロディーというか。なおかつ、のび太が飛び立つということで、鳥の巣立ちみたいなイメージの歌詞にしようかなと。

 ――歌詞に「切ないままで僕らは飛ぶ……」「孤独の海……」「サヨナラの中に始まりを知る……」など、全体的に寂しさを感じさせる表現が多い理由は?

 親元を離れるにしても、鳥が飛び立つにしても、一人(一羽)じゃないですか。みんなで飛び立つわけじゃなくて、自立っていうのはやっぱり一人で立つということなので。それはやっぱり裏返しというか、大人になるっていうのは絶えず別れみたいなものがあって、そういう切なさを残しても、一つその先に行くっていうことなんだと思います。

 ――ちなみに、もしドラえもんの道具を使えるとしたら、何をチョイスしますか。

 ほんやくコンニャク。それを食べると英語でも分かるようになるとか、犬に食べさせると犬が何を言ってるのか分かるとか。例えば、まだ話せない(幼い)子供が泣いていたら、なんで泣いているのか分かりたいと思うし。犬や猫もそうですけど。

 ――なるほど。それでは、21年目のスタートということで、今後の抱負を聞かせてください。

 ここまでやって来られたということは、やり方自体はそんなに間違ってなかったというか。なので、目立ったことや派手なことよりも、今まで通り続けていけることが願いというか、望みではあります。やっぱりここに来ても、まだ未熟な部分があるという自覚がありまして、それは歌の表現とか体調管理、あとは力の抜き具合とかかもしれないけど、そういうのを克服しながら……。結局、その繰り返しだと思いますけどね。

 <プロフィル>

 1971年12月23日、滋賀県生まれ、山口県育ち。95年にシングル「月明かりに照らされて」でデビュー。山崎さんが初めてハマったマンガは、小学生の頃に読んでいた「ドラえもん」。「『ドラえもん』はホントに爆発的にヒットして、知らない小学生はいなかったと思いますけれど、その時に“絵描き歌”みたいな番組をテレビでやってまして、みんながその書き順通りにドラえもんを描いていた」と話した。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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