SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第8話 弱虫で泣き虫!人魚姫しらほし
12月22日(日)放送分
2013年に亡くなったヤマグチノボルさんのライトノベル「ゼロの使い魔」(MF文庫J)が人気だ。発売された新刊は、ヤマグチさんのプロットをもとに別の作者が執筆、5年ぶりにもかかわらず、オリコンの週間ライトノベルランキング(7日付け)で1位になり、発売から1カ月足らずで2刷目の重版もかかるなど、出版元であるKADOKAWAの予想を上回る売れ行きとなっている。「ツンデレ」という言葉を定着させ、4度にわたりテレビアニメ化された大ヒット作を生み出し、ライトノベルレーベル「MF文庫J」の拡大に大きく貢献したヤマグチさんはどんな人だったのか。「ゼロの使い魔」の立ち上げにもかかわった前MF文庫J編集長の三坂泰二・執行役員エンタテインメントノベル局長に聞いた。
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--ヤマグチさんとの出会い、「ゼロの使い魔」を執筆の経緯を教えてください。
ヤマグチ先生は、PCゲームのシナリオライターとしてもたくさんの人気作を手がけられています。その中でも「グリーングリーン」というゲームがアニメ化されたときにメディアファクトリー(現KADOKAWA)も関わっていて、アニメのプロデューサーの仲立ちで、東京・小川町のおでんかっぽうで顔合わせしたのが初対面ですね。礼儀正しいのに人懐っこい、フレンドリーな人でした。そのご縁で番外編的な小説「グリーングリーン―鐘ノ音スタンド・バイ・ミー」を書いていただきました。ゲームでも小説でも高校生たちの会話劇がとてもおもしろくて、サイトやギーシュ、マリコルヌたちのやり取りを彷彿(ほうふつ)とさせます。その後、今度はぜひオリジナルで、ということで、「ゼロの使い魔」のプロットをいただきました。当時はまだ小説家としては駆け出しのころで「読者に楽しんでもらえるものを書きたい」とおっしゃっていましたが、かなりエンターテインメントを意識されたんじゃないかと思います。
--「ゼロの使い魔」のヒットを直感したのは、いつですか。
1巻の草稿をいただいて、あまりのおもしろさに、すぐ続刊の執筆をお願いしました。兎塚エイジさんのカバーイラストも素晴らしかった。今振り返ってみると売れるべくして売れた作品ですが、重版に次ぐ重版でも本が足りない状況になり、創刊3年目の新興レーベルとしては初めての経験で、これは大変なことになったと(笑い)。
--「ゼロの使い魔」の最大の魅力とは?
読む人によって一番好きなところ、一番魅力に感じるところが、それぞれあると思います。その多面性も魅力ですが、私にとってはキャラクターの魅力を存分に生かした冒険もの、というところです。普通、魔法の設定とか考えると、最初からその設定を使いたいと思うんです。でも、1巻はボーイミーツガールのお話で、大きな物語のプロローグとしてサイトとルイズに焦点を絞っている。シリーズの根幹に関わる設定がまったく明かされないのに、それでも十分におもしろい。まず、キャラクターで読者をつかんで、大きな物語に持っていく。ゼロのルイズが実は虚無魔法の使い手という真実が明かされるのは3巻目です。また、アニメ化に合わせてのファンサービスとして人気キャラのタバサを主人公にした外伝をお願いしたのですが、そこで明かされたタバサの正体、境遇は、本編では物語が進むまで誰も気がつかない。主役たちはもちろん、脇役にもちゃんと背景があり、それが物語にもきちんと生かされている。サイトやルイズはやがて世界の運命を左右することになりますが、こうした深みのあるキャラクターの視点から、自然に大河的な冒険物語を描いていると思います。
--ヤマグチさんの作家としての武器は? ちなみにどんな人でしたか。
好奇心旺盛で、引き出しがいっぱいありました。飛行機が好きで、海戦が好きで、モデルガンが好きで、ミリタリーに詳しく……エンターテインメントを書くのに役立つ知識はもとから趣味で身につけていたんではないかと思います。それと、非常にアクティブでした。Z1を駆ってバイク便をやっていた話は有名ですが、例えばある飲み会では「ラブコメ書くには経験が必要。ラブコメが書きたいならナンパしろ。僕は100人に声をかけた!」と後輩作家さんたちに熱く語っていました(笑い)。人柄で言えば、いつも朗らかで親しみやすい人気者タイプ。でも、そこそこやんちゃで、高校生の時は親に隠れてバイクを手に入れてこっそりバイク通学していたそうです。あと、いつも自然体でした。それはベストセラー作家になってもまったく変わらず、人への思いやり、気遣いのできる人で、会う人みんなに好かれていました。
--ヤマグチさんの代わりに執筆をした作家ですが、起用の決め手は? どんな人ですか?
大役なのですが、それだけに最初から条件を細かくつけてお願いできるようなものではありませんでした。まず作家としての力があることを重視しましたが、当然ヤマグチさんへのリスペクトがあり、編集部とがっちり組んで仕事をしていただける。しかも、批判されるリスク、プレッシャーに挑む勇気を持った人。実際に完成した21巻は予想を超える出来で、本当に素晴らしい人に書いていただけました。思いやり、やさしさなどはヤマグチ先生に似たところがある方でもあります。
--「ゼロの使い魔」以外にも、ヤマグチさんの小説のプロットは残されているのでしょうか。
残念ながら、口頭でお聞きしたことはいろいろあるのですが、ご本人が残されたプロットはありません。
--次の22巻が最終巻になります。発売時期の見通しと、ファンへのメッセージをお願いします。
作家さん自身のお仕事のスケジュールもありますが、なによりゼロを執筆するのに必要なエネルギーと集中力を考えると、やはり1年はかかるのではないかと思います。でも、それだけの時間をかけるにふさわしい内容になるよう、全力を尽くしますので、どうかお待ちください。21巻に寄せていただいた感想やメッセージは、編集部、作家さんの大きな励みになっています。引き続き応援いただけるとありがたいです。
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