NHK:民放アニメを再放送する理由は 編成に聞く作品の選定基準

NHKで放送される「ラブライブ!」「進撃の巨人」「けいおん!」のビジュアル(C)2013 プロジェクトラブライブ!(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会(C)かきふらい・芳文社/桜高軽音部
1 / 1
NHKで放送される「ラブライブ!」「進撃の巨人」「けいおん!」のビジュアル(C)2013 プロジェクトラブライブ!(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会(C)かきふらい・芳文社/桜高軽音部

 NHKが、民放で放送されたアニメを積極的に“再放送”していることが話題だ。民放で深夜に放送された「ラブライブ!」「けいおん!」など、NHKの一般的なイメージとは異なるタイトルの放送が発表されるたびに、ネットを中心にアニメファンがざわつき、「NHKがアニメファンにすり寄ってきている」などという声もある。NHKで何が起きているのか? 関係者にアニメを“再放送”する狙いや放送する作品の選定基準を聞いた。

あなたにオススメ

 ◇アニメファンにすり寄っている?

 NHKでは、古くは「未来少年コナン」、1990年代には「ふしぎの海のナディア」「カードキャプターさくら」、2000年以降には「十二国記」「電脳コイル」などを放送し、アニメファンにも人気となったことから、アニメとの関わりが薄いわけではない。しかし、今年に入ってから放送がスタートした「ラブライブ!」「進撃の巨人」、4月から放送される「けいおん!」は、民放で放送した作品の“再放送”だ。NHKで放送することを前提に制作された作品ではない。いずれもヒット作ではあるが、NHKの“お堅い”イメージとは結びつかないかもしれない。

 NHKが他局のアニメを放送する理由について、編成局編成センターの榎本幸一郎副部長は「関心を集めている作品や優れた話題の作品を、積極的に紹介していくことも公共放送の役割の一つであると考えている」と説明。「自局で制作した番組を放送するのが第一だが、海外で制作された番組も紹介しており、NHKと親和性の高い作品を放送している。アニメもその一つ」と、アニメだけに力を入れているわけではないことを強調する。過去にも「日常」「蟲師」「カウボーイビバップ」などを放送したことがあり、今年に入って再放送が集中したことについて「たまたまアニメを放送するタイミングが重なった」という。

 「NHKがアニメファンにすり寄ってきている……」という声もあるが、榎本副部長は「アニメは一部のファンだけが見るものではなく、日本の文化になっている。アニメの重要性が上がっている」と考えているといい、アニメはニッチなものではなく、重要な日本文化と認識しているようだ。また「普段あまりNHKを見ない若い方にも、アニメをきっかけにNHKを見ていただければ」と“堅い”イメージのあるNHKを身近に感じてもらうことが狙いだという。

 ◇選定の基準は…

 「けいおん!」「ラブライブ!」などは、美少女が登場する“萌(も)えアニメ”などと認識している人もいるかもしれない。編成局展開戦略推進部の柏木敦子チーフプロデューサー(CP)は、放送するアニメを選ぶ基準を「NHKで放送する意味を見いだせるか? それにテーマ性を考えている」と説明。編成局展開戦略推進部の土橋圭介CPは「『けいおん!』は子供が見ても面白い。広がりのある作品」、榎本副部長は「『ラブライブ!』は男女を問わず人気があるし、学園ドラマの中の友情など、若い人が好きな要素が凝縮されている」と語る。

 「ラブライブ!」は昨年末に放送された「第66回NHK紅白歌合戦」に声優陣によるユニット「μ’s(ミューズ)」が出場したことも話題になった。μ’sの出場と「ラブライブ!」の放送はセットだったのでは……と勘ぐりたくなるが、榎本副部長は「セットではありません」と否定する。

 また「進撃の巨人」は、巨人が人を食べるなど残虐シーンもあることを考慮して、深夜に放送しているという。ヒット作であるものの、NHKで放送するには刺激が強すぎる……という意見もあるかもしれないが、土橋CPは「『進撃の巨人』は厳しい状況の中、どう生き抜くか? というテーマ性がある」と話す。

 ◇苦情はないのか?

 「NHKで深夜アニメを放送するなんて……」などという否定的な意見があるかと思いきや、編成局編成センターの下要(しも・かなめ)副部長が「苦情は全然ありません。放送時間や再放送の問い合わせはありますが。『進撃の巨人』の放送時間は20代男性の視聴者が急に伸びる。狙った層に届いています」と話すように、視聴者は好反応で、手応えを感じている様子だ。

 あの作品も放送してほしい……などと期待したくなるが、今後の展開は「未定」という。柏木CPは「これからも楽しみにしていてください」と話しており、今後もアニメファンがざわつくような展開があるかもしれない。

アニメ 最新記事