名探偵コナン
#1140「女子会ミステリー3」
11月2日(土)放送分
ここ数年、世界中で一大ブームを巻き起こしている音楽ジャンル、それがEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)だ。その波は、いまや日本のアニメソング(アニソン)の世界にも到達していると言われ、昨年初頭から今年にかけてEDMを取り入れた楽曲が次々登場。ファンの間で話題を集めてきた。特に、この動きが顕著に表れているのが、2次元アイドルをはじめとするキャラクターソングで、シーンに詳しいタワーレコード新宿店のアニメ担当バイヤー・樋口翔さんは「ボカロPの存在も欠かせない」と語る。ここでは樋口さんの言葉を借りながら、アニソン・キャラクターソング(キャラソン)界におけるEDMブームの裏側に迫ってみた。
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EDMとは、シンセサイザーなどによって作り出されるダンスミュージックの総称で、その中でもよりポップで大衆的なサウンドを指すことが多く、分かりやすくて高揚感にあふれている点も大きな特徴だ。樋口さんは「今回のようにブームになる以前からアニソンやキャラソンとEDMのようなエレクトロなダンスミュージック、クラブミュージックとの親和性は高かった」と話す。
そもそもアニソンやキャラソンと、エレクトロなダンスミュージックとの融合はいまに始まったことではない。現行のアニソン・キャラソン界におけるEDMブームの源流をたどれば「90年代後半のゲーム音楽、美少女ゲームやギャルゲーにたどり着く」と推測する樋口さん。だが「当時はトランスなどのはやりの音に歌を“のせただけ”のものが多く、融合という意味では決して完成度は高くなかった」という。そんな樋口さんはシーンに大きな潮流を生み出した人物として意外な名前を挙げてくれた。それは音楽プロデューサーの中田ヤスタカさんだ。
あくまで「持論」と前置きした上で、樋口さんは「中田さんが手がけた『Perfume』の登場は、ある意味アニソンやキャラソンにとってもターニングポイントだったと思う」と振り返る。その功績は「『エッジーなダンストラック』と『デジタル補正、加工されたロボ声』との融合を、3人の『ポップアイドル』を通して誰にでも分かる形で提示してくれた」点だという。実際にその後、“Perfumeフォロワー(フォーマット)的”なアニソンやキャラソンが続々登場。「らき☆すた」の人気キャラ・柊つかさが歌う「寝・逃・げでリセット!」のような名作も誕生し、同曲のボカロカバーも多数作られた。
中田さんとPerfume、それらフォロワーの登場以降、2次元的なキャラソンとエレクトロなダンスミュージックはさらに接近する。ダブステップのような決して一般的ではないサウンドを取り入れた楽曲も一部では生まれ、そういった流れの中で頭角を現してきたのが、若い感性を持ったボカロPの面々だ。樋口さんは「『面白い』と感じたサウンドを取り入れ形にする力と、“初音ミク”などによって培われたプロデュース能力は、ボカロPの一つの特性。現行のEDMブームを語る上でも、彼らの存在は欠かせない」と明かす。
先月、「Tokyo 7th シスターズ(ナナシス)」の“伝説的アイドルグループ”「セブンスシスターズ」のEDM曲「SEVENTH HAVEN」が発売され、そのサウンドがシーンに衝撃を与えたが、同曲を手がけたのが中田さんからの影響を公言する初期ボカロシーンの立役者・kzさん(livetune)だ。
また「ひなビタ♪」のテクノポップアイドルユニット「ここなつ」の作品には、tiltさん、sasakure.UKさん、millstonesさんらボカロシーン発の気鋭のクリエーターが参加。今月16日に発売されたファーストアルバム「シンクロノーツ」も多彩なEDMサウンドが楽しめる1枚に仕上がっている。
2次元アイドルの代表的なコンテンツとなっている「アイドルマスター(アイマス)」からは「アイドルマスターシンデレラガールズ(デレマス)」の「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER」シリーズ作品としてキャラクターの速水奏が歌う「Hotel Moonside」のようなEDM曲がすでに昨年前半の時点で登場。同曲はライブでの盛り上がりを受け、同年末には“ライブバージョン”も配信された。
さらに今年に入ってからも、大槻唯が歌うEDM曲「Radio Happy」もリリースされ、ブームの一翼を担っている。樋口さんは「『アイマス』に関してはボカロPうんぬんとはまた違った流れで発展を遂げている印象で、(別名義でユニコーンなどへのリミックス提供を行っている)井上拓さんのような著名コンポーザーの起用もあり、可愛いだけじゃない、2次元アイドルの“今”を切り取ったサウンドが楽しめる」と力を込める。
そのほか、ローカルアイドルグループの成長を描く人気アニメから生まれた声優ユニット「Wake Up,Girls!」が「素顔でKISS ME」のようなドラムンベースとEDMを主体とした新機軸の楽曲を発表し、話題を集めたように、次々と注目作が生まれる“EDM×2次元(キャラソン)”ブーム。今後の動向にも注目したい。
セブンスシスターズ「SEVENTH HAVEN」(Tokyo 7th シスターズ)
アイドルブームが衰退した2030年に現れ、のちに伝説として語り継がれることになる革命的なアイドルユニットの楽曲という「Tokyo 7th シスターズ」ならではの斬新な設定。そのコンセプトにリアリティーを与えたサウンドはまさにアイドルシーンの未来型と呼ぶにふさわしいソリッドでタフなデジタル・チューン。作曲は初期ボカロシーンの立役者にしてアニメ作品主題歌も多々手掛ける重鎮・kz(livetune)さんです。
大槻唯「Radio Happy」、速水奏「Hotel Moonside」(アイドルマスターシンデレラガールズ)
派生シリーズを含めアニメ化もされ、絶大な人気を博している「アイドルマスター」。そのソーシャルゲーム版「シンデレラガールズ」からのソロシングル曲です。「鉄拳」「リッジレーサー」などゲームミュージックの名作を送り出してきたバンダイナムコのサウンドチームが誇る井上拓さん作・編曲の2曲は現行のクラブシーンのエッセンスをいち早く取り込んだEDM直系・フロア直撃のキラーチューンです。
四条貴音「addicted」(アイドルマスターミリオンライブ!)
同じくアイドルマスターの派生タイトル「ミリオンライブ!」は楽曲制作をランティスが手掛け、多彩なコンポーザーによるバラエティー豊かな楽曲が魅力の一つ。その中でもファンから絶大な支持を誇り“GOD”と称されるのがKOHさん。J-POPやK-POPにも楽曲を提供しており、その作曲メソッドとアイドルマスターという作品のクロスオーバーが生み出す化学反応はそのどれもが個性的。オリエンタルな趣が漂う異色のEDMナンバーが誕生しました。
ここなつ「ミライプリズム」(ひなビタ♪)
今や2次元キャラクターも好きな音楽ジャンルにクラブミュージックを挙げる時代。音楽ゲームでおなじみコナミが手掛けるコンテンツ「ひなビタ♪」発のEDMが好きな夏陽とエレクトロニカを愛する心菜という双子の女の子から構成されるテクノポップアイドルユニットがこの「ここなつ」。ボカロシーン発の気鋭のクリエーターによる楽曲群は圧巻です。
パピ「PAPISM」(モンスター娘のいる日常)
3歩歩けば記憶を忘れてしまうハーピー族(モンスター)の女の子が歌う直感型ダンスポップ。サビの“WOW WOW”コーラスが最高に気持ちいい。BABYMETALへの楽曲提供も手掛けるボカロP・ゆよゆっぺさんがエレクトロ系のダンスミュージックを制作する時の別名義「DJ’TEKINA//SOMETHING」として手がけています。
Wake Up,Girls!「素顔でKISS ME」(Wake Up,Girls!)
仙台発の“ロコドル”である女の子たちがアイドルの頂点を目指すアニメ「Wake Up,Girls!」。等身大のパフォーマンスと素晴らしい持ち歌を武器にメジャーデビューを勝ち取り、上京してきた彼女たちに、契約先のbvex trax(ビーベックストラックス)から与えられた2枚目のシングルがこの曲。シナリオの関係上、劇中でのセールスは振るわなかったようですが、楽曲はめちゃくちゃかっこいい! ドラムンベース&EDMを主体にしつつも、ラップ調のボーカルとマイクリレーでたたみかける“歌モノ”としての高い完成度を誇る名曲です。
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