話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、「ブラック・ジャック(BJ)創作秘話」などのルポマンガで知られる吉本浩二さんの「淋しいのはアンタだけじゃない」です。「ビッグコミックスペリオール」(小学館)の桜井健一さんに作品の魅力を聞きました。
ウナギノボリ
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--この作品の魅力を教えてください。
文字通り、新感覚のマンガだと思います。聴覚、聴覚障害、そして、あの佐村河内守さんの事件についても、現在進行形ですすんでいく、ドキュメンタリーでもあり、ひょっとしたらミステリーととられる方もいらっしゃるかもしれません。
……といって、なにも難しい作品ではなく、ストーリーがまさに「現在進行形」で進んでいきますので、いわゆるマンガを普通に見守るように読んでいただく、いただける作品ではと。また、知られざる聴覚の「不思議」についても、皆さん新鮮に驚かれるのではないかと。
そして個人的には、「ブラック・ジャック創作秘話」(「このマンガがすごい!」2012年オトコ編1位)の作者・吉本浩二さんが、今新境地を切り開かれているのでは、とも思っています。
--作品が生まれたきっかけは?
そのきっかけも込みで作中に描かれていますので、ぜひご覧いただきたいです。ひとことで言うとマンガ家・吉本浩二さんのご関心と人のご縁でしょうか。そのご縁に、愚直というか、泥臭くというか、格好良くはないかもしれないけれど、とにかく取り組もうとされた姿勢……。なかなか難しい取材相手に、私の目の前で懸命に手紙を書かれていた姿が象徴的かもしれないとは思います。いろんな意味で“アナログ”です。きっかけも。
--編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。
取材対象の方が「弁護士を通じて」と分かったあとに、吉本さんと私とで「もしも裁判になったら……」と話していたんです。それが、はずみというか言葉のあやから、いつしかケンカのようになってしまって……。取材対象者とではなく、それ以前にマンガ家と編集者とで争いに……ってバカバカしい話です。結局、お互い誤解が元だったと分かって、ならば、ああですねこうですねから、仲直りというか、一緒に頑張りましょう、となったのですが、あれはずいぶん長い電話でした。
--今後の展開は?
いろんな意味で「真相」に向かって、どんどん深く突っ込んでいくことになるのでしょうか。「……のでしょうか」というのも、本当に現在進行形なので、どうなるのか、隣にいる私にもよく分からないのです。ただ、読者、それに関係者の皆さんにも一緒に考えていただけるような、そんな足取りになるのは間違いない、とは思っています。語弊があるかもしれませんが、ますます“面白く”なっていきます。
--読者へ一言お願いします。
先にも触れましたが、新感覚のマンガでありつつ、難しいことを考えなくてもフツーにドキドキしながら、時に登場人物を応援しながら読める“面白い”マンガだと思います。ただしもう一つ、いつの間にか一緒に考えてしまっている、そんなマンガでしょうか。
さらにいうと、吉本浩二さんの新境地かも、と先に述べましたが、どうもマンガ界初、もっと広く医療や福祉など、別の世界でも初めての試み、でもあるようです。マンガをフツーに楽しんでいただきつつ、「世界初」の読書体験をしていただければうれしいです。
小学館 ビッグコミックスペリオール編集部 桜井健一
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