上川隆也:「沈まぬ太陽」第2部スタート 巨大組織の「大きなうねり」に注目

連続ドラマ「沈まぬ太陽」第2部について語った上川隆也さん
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連続ドラマ「沈まぬ太陽」第2部について語った上川隆也さん

 俳優の上川隆也さん主演の連続ドラマ「沈まぬ太陽」(WOWOW)の第2部が、10日からスタートする。「白い巨塔」「華麗なる一族」などで知られる山崎豊子さんの同名小説を初のテレビドラマ化。1995年の「大地の子」以来、約20年ぶりに山崎作品の主人公を演じた上川さんに、今作への思いや第2部の見どころなどを聞いた。

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 「沈まぬ太陽」は、単行本・文庫本の売り上げが累計700万部を超える大ベストセラー小説。日本の航空会社「国民航空」を舞台に、未曽有の航空機墜落事故という悲劇の裏で信念を貫き、巨大組織で生きる者たちの姿を描いている。ドラマでは、WOWOW史上最大スケールの全20話で構成。アフリカ・中東での海外ロケや出演者が300人以上に及ぶなど、半年がかりのかつてない規模で制作された。

 ◇山崎作品の魅力は「特別ではない」こと

 上川さん演じる今作の主人公・恩地元は、国民航空の労働組合委員長に就任。エリートとして将来を嘱望されていたが、空の安全を第一に考えて、劣悪な労働環境の改善を激しく要求したことで、経営陣と対立する。労働組合の同志だった行天四郎(渡部篤郎さん)が幹部に取り入って出世街道を歩む一方、恩地は疎まれて左遷。カラチ、テヘラン、ナイロビとたらい回しにされ、社内規定を大幅に超える約10年間のへき地勤務を強いられる。

 巨大な組織に翻弄(ほんろう)され、不当な扱いを受けるも、信念を曲げずに立ち向かっていく恩地という人物について、上川さんは「特別な人ではないという感覚が、演じ終えるまでずっとありました」と語り、「奇異なことをするわけでもなく、常識的なことを選択していく人物。僕らが生きる日常と大きく変わらないので、たとえば隣人だったとしても、違和感のない人物としてそこに存在するキャラクター。そこが大きな魅力だったように思っています」と続ける。

 そして、その「特別ではない」ということが今作全体の魅力につながっているといい、「それは、ひいては山崎さんが描く世界に他ならないんじゃないかと思うんですよね。緻密な取材に基づいて、現実を大きく離れたことではなく、実際に起こっていたことをベースに描いている。だからこそ、見る人にとって身近なものとして感じられる。物語でありながら、実生活に肉薄してくるような、ある種、静かな迫力をもって迫ってくるんだと思うんです。熱を伴わない炎のような燃え上がり方をする作品だと感じました」と語る。

 ◇初共演の渡部篤郎の役作りに「ほれぼれした」

 今作は、日本を代表する豪華な俳優陣が集結。上川さんのほか、恩地のかつての親友で出世と引きかえに袂(たもと)を分かった行天役で渡部篤郎さん、さらに、國村隼さん、古谷一行さん、夏川結衣さん、檀れいさん、小泉孝太郎さん、草刈民代さん、板尾創路さん、若村麻由美さん、甲本雅裕さん、渡辺大さん、永島敏行さん、鶴見辰吾さんらが出演。第2部からは、長塚京三さん、石丸幹二さん、ミムラさん、平幹二朗さん、橋爪功さん、高嶋政伸さん、陣内孝則さん、長谷川京子さん、室井滋さん、伊武雅刀さん、大杉漣さん、シャーロット・ケイト・フォックスさん、片岡愛之助さんも登場する。

 上川さん自身、「とんでもない方々がたくさんいらした」と語るが、今回が初共演で、ライバルの行天を演じた渡部さんの芝居は「とても刺激になった」という。「世界のとらえ方が僕とは違う方。たとえば僕はインドア派なんですが、渡部さんは徹底したアウトドア派で。演技も僕が思ってもいない、違った観点からアプローチをされるので、それをどういうふうに受け止めて打ち返すかっていう刺激を連日のように味わうことができて、演者としては楽しい時間でしたね。英語本来の意味でのスマートな行天を徹頭徹尾作っている、その姿勢にほれぼれとしました。渡部さんが行天でよかったと心底思っています」と共演について振り返る。

 また、恩地の献身的な妻・りつ子を演じた夏川さんの存在も「本当に大きかった」といい、「夏川さんが本当に魅力的にりつ子を演じてくださって。(左遷された恩地を励ます)『私たち、家族じゃない』っていうせりふが一つ象徴的なんですけど、そこに、とてつもないぬくもりが感じられました。恩地があれだけの境遇に正常でいられたのは、家族という大きな支えがあったから……夏川さんがりつ子を演じてくださって、本当に大きかったなと思います」と改めて語る。

 ◇全20話の豊かな表現 「深く味わって」

 第1部は、恩地の左遷先から日本への帰任が決定したところで終了。第2部では、空の安全を軽視した国民航空が大型旅客機の墜落事故という未曽有の惨劇を引き起こすところから幕を開ける。日本政府は国民航空の建て直しのため、関西紡績の国見正之にトップ就任を要請。会長に就いた国見は徹底した空の安全を実現するため「会長室」を設置し、恩地を部長として呼び寄せる。社内にはびこる不正の数々を調査し始めた恩地の前に立ちはだかったのは、常務にまで上り詰めた行天だった……というストーリー。

 上川さんは、第2部について「国民航空をゆるがす大事故が起こって、そこから始まる国民航空の再建への道が大きなストーリーの本流でもありますし、見どころといっていいんじゃないでしょうか」と語り、「ドラマでは原作の行間を映像化している部分がいくつもあるんですが、20話という豊かな時間がもたらしてくれる詳細な再現を深く味わっていただけたら」とアピールする。「この作品は、恩地個人の物語ではなく、国民航空という一つの組織の物語だと思っています。その中で奮闘した男が一人いたということにすぎないというか。その恩地を含めた、大きなうねりというものをぜひ見ていただければ」と力をこめた。

 「沈まぬ太陽」第2部(第9~20話)は、10日から毎週日曜午後10時に放送。

 <プロフィル>

 かみかわ・たかや 1965年5月7日生まれ。東京都出身。中央大学在学中の89年に演劇集団キャラメルボックスに入団。95年にNHK70周年記念日中共同制作ドラマ「大地の子」の主演に抜てきされたことで注目を集める。NHK大河ドラマ「功名が辻」(2006年)では主人公・山内一豊役を務めた。これまで日刊スポーツ・ドラマグランプリに4年連続で助演男優賞に輝いたほか、読売演劇大賞、日本アカデミー賞などを受賞している。

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