宮藤官九郎監督&神木隆之介:「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」語る 神木「地獄で責め苦を受けた」

映画「TOO YOUN TO DIE! 若くして死ぬ」の宮藤官九郎監督(右)と神木隆之介さん
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映画「TOO YOUN TO DIE! 若くして死ぬ」の宮藤官九郎監督(右)と神木隆之介さん

 人気グループ「TOKIO」の長瀬智也さん主演の映画「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」(宮藤官九郎監督)が公開中だ。修学旅行中に事故で地獄へ落ちてしまった高校生が、地獄専属ロックバンド「地獄図(ヘルズ)」を率いる赤鬼・キラーKと出会い、高校のクラスメートに告白したい一心で“生還”を目指し奮闘する姿を描く。長瀬さんがキラーKを演じるほか、歌舞伎俳優の中村獅童さん、マーティ・フリードマンさんやROLLYさんらミュージシャンも多数出演している。主人公の大助を演じる俳優の神木隆之介さんと、メガホンをとった宮藤監督に話を聞いた。

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 ◇舞台となる地獄は「映画を作る上で都合がいいように作った」

 修学旅行中に交通事故に巻き込まれた主人公が目が覚めると地獄にいたという、地獄を舞台に物語が進行していく。「基本的に(地獄は)誰も経験も体験したこともないので正解はない」と宮藤監督は切り出し、「だからそんなにこうしなければという考え方ではなく、地獄は映画を作る上で都合がいいように作ろうと思った」と構想を明かす。

 続けて、「そうすると生き返るチャンスがあるというところも含めて、仏教の地獄が一番よくて、輪廻(転生)でもう一回はい上がれるかもしれないというのがいい」と感じたと言い、さらに「拷問がいっぱい細かく描かれているのも(笑い)。地獄の正解・不正解でいうと、新しい地獄という感じ」と説明する。

 うなずきながら聞いていた神木さんは「多分、全部の責め苦を受けているのは僕だけです(笑い)。まんべんなく地獄を体験したので、今後は堂々と地獄に行って耐え抜いたと言ってもいいのではないかと思います」と楽しそうに話す。

 ◇宮藤監督の現場「もっとぶっ飛んだことをやりたい」

 宮藤監督と神木さんは、2011年に放送された神木さんの主演ドラマ「11人もいる!」(テレビ朝日系)で、宮藤監督が脚本を担当しているほか、映画「バクマン。」(15年)では一緒のシーンはないが共に出演している。「『11人もいる!』のときから感じていましたが、(宮藤監督が書く)せりふには、身近にあるものが使われていて、例えば『コンビニ』のことを『セブン』や『ファミマ』とか固有名詞で書いてあることが多い」と神木さんは切り出し、「日常で使っている言葉が台本に書かれているので、言いやすいというか親近感が湧く。だからこそ感情移入しやすかったりもするし、演じていてすごく楽しい」と力を込める。

 さらに神木さんは「今回は初めて監督作品に参加させていただきましたが、本当に宮藤さんの作品は、演じるのがすごく楽しい。楽しいからこそ、『もっと何かをしたい』『もっとぶっ飛んだことをやりたい』と思いますし、そういう現場でもありました」と充実感をにじませる。

 神木さんの発言を受けて、「(神木さんは)そうやってどんどんやるんですけど、『ちょっとそこまでやらなくていいよ』と言ったら、サッと戻してくれるところがいい」と宮藤監督。続けて、「その調節ができるところがすごい。大助が(物語の中で)一番変化していくキャラクターなので難しいとは思っていたのですが、柔軟に演じてくれて、役を演じるのがすごく好きなんじゃないかなと思いました」とたたえる。

 ◇初めてボケ役をやったのでドキドキした(神木)

 地獄を舞台としたコメディーでありながら、どこかロックっぽいカッコよさも漂わせる今作だが、「大助はどんなやつかお客さんが知る前に地獄に落ちてしまい、そこから大助のプロフィルが紹介されていくという構成」と宮藤監督は前置きし、「基本的に回想という形になるので、振り切った演技のところだけをチョイスして使わなきゃいけなかったのですが、これが面白かった」と話す。その理由を「(大助が)バンドの友だちと一緒にスタジオで悦に入ったふうに演じてもらったり、部屋でギターケースを背負ってカッコつけていたりするのですが、地獄に落ちるのにな……と思いながら演出していたら面白かった」とちゃめっ気たっぷりに笑う。

 神木さんも「大助自身も地獄について深く考えていなくて、ノリでとりあえず行こうかというような感じなので、僕も普通にノリでという感じでした(笑い)」と役柄を楽しんだと語るも、「いつもはツッコミ役が多いのですが、今回は初めてボケ役を演じたので、とてもドキドキしました」と当時の心境を明かす。

 それを聞いていた宮藤監督は「(神木さんの演技は)新鮮でしたし、大助が特別じゃなくて、地獄のことをよく分かってない高校生が、いきなり地獄で目が覚めたら、ああいうふうにヘラヘラしながら『ここどこですか』と聞いちゃうんじゃないかなと(笑い)」と話し、「地獄に対して何の先入観もない感じで、『で、どうやったら生き返るんですか』という感じ(の演技)を、説明しなくてもできているからすごい」と驚く。

 地獄の拷問をはじめ、さまざまな見たことのない神木さんの姿が詰まっているが、「ヘラヘラしてるから平気なのかなって思って、(神木くんも)『はい!』ってすごく元気に答えるので、まだいけるならもうちょっといってみようかなと思ったりもしました(笑い)」と宮藤監督は笑顔を見せる。

 ◇舞台は地獄だけど青春映画(宮藤監督)

 今作では、長瀬さん演じるキラーK率いるロックバンド「地獄図」を中心に、音楽も大きな軸となっている。「地獄というと、ハードロックとかヘビーメタルの歌詞によく登場してくる“ヘル”というイメージは、地獄を肯定しているというか、俺たちは地獄に落ちることも怖くないみたいなイメージがあって、うまく融合できればと思った」と宮藤監督は意図を明かし、「今回は音楽のジャンルを限定したくなかったので、基本はハードロックですが、ファンク、ボサノバやバラード、ゴスペルもあります」と説明する。

 そして、「神木くんの歌もうまかったです」と宮藤監督が褒めると、神木さんは「必死に練習しました」と恐縮する。そんな神木さんは、ギターを弾いたりライブシーンにも挑戦しているが、「ギターは撮影間に3カ月ぐらい練習しました」と明かし、ライブシーンについては、「そこは本当に分からないところだったので、ステージの上では本当に長瀬さんに頼りっぱなしでした」と感謝する。さらに、「長瀬さんが『地獄だからなんでもあり。とにかく楽しんで!』と言ってくださったので、(ライブシーンは)気持ちよかったですし、芝居をしているときには、(こういう感覚は)絶対味わえないんだろうなと思いながら楽しみました」と振り返る。

 ここで宮藤監督が「撮影の前にバンドのリハーサルをしたのですが、バンド感がどっと出た感じがした。うまいへたは関係なく、演奏しているのを見て、やっぱりいいもんだなと」と切り出し、「そのままの流れで映画も撮れたのでいい感じでしたし、練習があったからムードが出来上がっていて、撮影がすごくスムーズだったと思います」とチームワークが育まれた舞台裏を明かす。

 今作の魅力を、「地獄の映画だけどホラーではないということ」と宮藤監督は前置きし、「純粋に楽しんでほしいからあまり説明したくはないですけど、あえて言うなら舞台は地獄だけれども青春映画だというような気がします」とアピール。神木さんは「カッコいい映画だと自信を持って言えます!」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。

 <宮藤官九郎監督のプロフィル>

 1970年7月19日、宮城県生まれ。91年から大人計画に参加し、ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」(TBS系)で脚本家として注目を集める。2005年に公開された映画「真夜中の弥次さん喜多さん」で映画監督デビューし、2005年度新藤兼人賞金賞受賞。俳優としても活躍する一方、パンクコントバンド「グループ魂」ではギターを担当している。主な脚本作品に「舞妓Haaaan!!!」(07年)、「なくもんか」(09年)、「謝罪の王様」(13年)、「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」(14年)、「うぬぼれ刑事」(TBS系)、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」、「ごめんね青春!」(TBS系)、「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)など。「少年メリケンサック」(09年)、「中学生円山」(13年)に続き、今作が4作目の監督作品となる。

 <神木隆之介さんプロフィル>

 1993年5月19日生まれ、埼玉県出身。99年にドラマ「グッドニュース」(TBS系)でデビューし、その後、映画・ドラマを中心に活躍。映画「妖怪大戦争」(05年)で第29回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。最近の主な出演作は、「劇場版SPECシリーズ」(12~13年)、「桐島、部活やめるってよ」(12年)、「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」(14年)、「神さまの言うとおり」(14年)、「脳内ポイズンベリー」(15年)、「バクマン。」(15年)、「太陽」(16年)など。16年には声の出演を務めた映画「君の名は。」(8月26日公開)、17年には出演した映画「3月のライオン」(前後編2部作公開)の公開を控える。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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