マジェスティックプリンス:劇場版で「お帰り!」と言ってもらいたい 監督が語る作品とファンへの思い

「劇場版マジェスティックプリンス-覚醒の遺伝子-」を手がけた元永慶太郎監督
1 / 14
「劇場版マジェスティックプリンス-覚醒の遺伝子-」を手がけた元永慶太郎監督

 ロボットアニメ「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」の劇場版「劇場版マジェスティックプリンス-覚醒の遺伝子-」(元永慶太郎監督)が4日、公開される。放送終了から約3年たっているが、根強い人気の作品で、“保護者”と呼ばれる熱いファンが多いことでも知られている。元永監督は「続編をずっと待っていただいていた。こんなのは初めて。待ってくれていたみんなに『お帰り』と言ってもらえるアニメを作りたかった」と話す。元永監督に製作の裏側や“保護者”への思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇ファンの熱気 こんなの初めて

 「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」は、人類に対して攻撃を開始した汎(はん)銀河統一帝国を名乗る謎の勢力・ウルガルと、特務機関MJPに所属するチームラビッツの少年たちの戦いを描いたロボットアニメ。2013年4月から全24話が放送された。劇場版は、主人公のヒタチ・イズルが意識不明の状態になってしまった中、ウルガルの皇族の遺伝子を持つディオルナが地球に侵攻する……というストーリー。

 「マジェスティックプリンス」は熱いファンが多い作品だ。3月に開催されたアニメ展示会「AnimeJapan(アニメジャパン)2016」内の同作のイベントには、放送終了から約3年たっていたにもかかわらず、ファンが押し寄せ、劇場版の製作が発表されると、大きな歓声が上がるなど盛り上がりを見せた。元永監督は「終わってから3年たっているのに、続編をずっと待っていただいていた。こんなのは初めてですね。不思議です。アニメ業界にもファンの人が多く、続編はどうなっているんですか?という声も聞いた」と話す。

 「マジェスティックプリンス」の放送が始まった13年春は「革命機ヴァルヴレイヴ」「翠星のガルガンティア」といったロボットアニメが、同時期にスタートしたことも話題になった。“ロボットアニメ対決”などとも言われていたが、元永監督は「時期が重なったのは偶然だった。鳴り物入りの作品もある中で、ほぼノーマークだったかもしれません(笑い)。平井久司さんのキャラで、悲惨なストーリーなのでは……と想像していた人もいたようですね」と振り返る。

 放送開始前や開始時は、大きな盛り上がりがあったわけではないが、元永監督が「だんだんファンが増えていった。第8話『ケレス大戦』あたりからファンの声が増えた印象ですね」と話すように着実にファンを増やし、“ノーマーク”からダークホース的な存在となった。

 ◇ザンネンな理由 キャラを魅力的に魅せる技術

 元永監督は「マジェスティックプリンス」のファンについて「意外に女性が多いんですよ。保護者と呼ばれています」と話す。“保護者”という言葉が誕生した背景には、メインキャラクターが“ザンネン”であることと関係があるという。主人公のイズルたちメインキャラクターは劇中で「ザンネン5」とも呼ばれている。イズルはチームを引っ張るリーダーだが、下手な美少女マンガを描くことが趣味、イリエ・タマキは見かけたイケメンに手当たり次第、告白しては撃沈するなど、どこか“ザンネン”なキャラクターばかりだ。

 元永監督は、ザンネンなキャラクターをメインキャラクターとした理由を「人間的にして、ザンネンなところを個性にしたかった。ザンネンという言葉を使うことは、(シリーズ構成の)吉田玲子さんが思いついた。完全ではなくて、欠点があることがベースにあって、それを誇張することでキャラの個性を作った。個性の強いキャラが、ぶつかり合う中で、結びついていく。キャラのベースがしっかりしないとロボットバトルが生きてこないと考えました」と明かし、「ファンがキャラを見守ってあげたい気持ちができた。そこから保護者という言葉が生まれたようです」と分析する。

 また、キャラを魅力的に見せるための工夫を「小道具の使い方を意識しています。ケイの作るケーキ、スルガがいつもカレーを食べていたり、ディテールを考えています。あとはキャラの表情で見せている。キャラのベースを作るために1年くらいかかった。細かく作ってからコンテに入っていったんです」と説明する。

 ◇テレビでは半分くらしか描けていない 杉田智和への感謝も

 元永監督は劇場版を製作することになったことについて「うれしかったですね。常にやりたいと思っていた。自分の中では半分くらいしか描けていなかった。テレビアニメのその後を描きたかった。イズルのその後が、気になっていた人も多いでしょうし。みんながイズルに対してどう思っているか? どうやって目覚めさせるかをきっちり見せたかった」と喜ぶ。

 「終わってから3年たっている作品なので、自分の頭を戻さないといけない」という心配もあったようだが、「僕はキャラを“やつら”と呼んでいるのですが、やつらが別のキャラにならないようしました。ただ、やることになったらすぐに戻れた。自分でもびっくりした。大事な作品なんだと改めて感じました」と語る。

 劇場版は、同作のファンだったという杉田智和さんが声優を務める新キャラクターのスギタが登場することも話題になっている。元永監督が「杉田さんへのお礼です。いろいろなところで作品について語ってくれて、ありがたかった。杉田さんとスギタは顔も何となく似せています。いい人だけどザンネンな人にしました」と話すように、杉田さんへの感謝の気持ちから生まれたキャラクターだという。

 ◇ちゃんと帰ってきたよ! ファンへのお礼が根底に

 元永監督は、劇場版について「すごいボリュームになりました。“保護者”の方に、『こういうものを見たかった!』と言っていただきたかった。待ってくれていたみんなに『お帰り』と言ってもらえるアニメを作りたかったんです。僕からのお礼にしたいのが根底にありました」と明かし、「『面白い』はもちろんうれしいけど、それ以前に『お帰り』という言葉がうれしいですね。ちゃんと帰ってきたよ!」と熱い思いを明かす。一方で「放送から3年たっているので、中学生だった子が高校生になっている。テレビアニメを見ていない人でも、映画からも見られるようにしています。劇場版を見てから、テレビシリーズも見てほしいですね」とも話す。

 今後については「この後も作りたい。まだやりたいですね」とさらなる続編にも意欲を見せる。劇場版アニメ「デジモンアドベンチャー tri.」シリーズも手がけるなど多忙にも見えるが、「同時に2本くらい違う方向の作品をやっていると、脳が活性化する。過去に1本の作品だけをやった時、ハマりすぎて、次の作品でコンテが描けなかったことがある。同時に2本以上やっていると、刺激になるんですよ。ずっとそうなんです」と語る。

 「昔、それがやれなきゃダメだと言われていた。師匠である長岡康史さんと平野俊弘さんの影響を受けています。これしかやらない!というタイプではありません。見た人が“遊べる作品”をずっと作っていきたいですね」と笑顔で話す。「マジェスティックプリンス」のさらなる続編だけでなく、今後も元永監督が作り出す“遊べる作品”に期待だ。

写真を見る全 14 枚

アニメ 最新記事