人間国宝で落語会初の文化勲章を受章した上方落語の桂米朝さん(2015年、89歳で死去)。米朝さんの所蔵品を中心に展示した特別展「人間国宝 桂米朝とその時代」が、20日まで米朝さんの地元、兵庫県姫路市の兵庫県立歴史博物館で開かれている。開催期間はあとわずかだが、米朝さんと落語の歴史が、戦後の日本の歩みとともに展示されており、落語に詳しくない人でも分かりやすい内容になっている。放送中の人気アニメ「昭和元禄落語心中-助六再び篇-」ファンにもぜひ足を運んでほしい。
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博物館の入り口でお客さんを待っているのは「米朝アンドロイド」。米朝さんの落語に合わせて動くロボットだ。米朝さんの往年の高座そっくりに動く(19、20日に実演あり)。その動きには驚くことだろう。
来場者が先日、1万人を突破する盛況ぶりだ。会場内では学芸員の中川渉(わたる)さんが展示物の説明に忙しい。中川さんは米朝さんの三男。桂米団治さんの弟に当たる。中川さんがいなければ、この膨大な資料の特別展は実現しなかったことだろう。中川さんは、顔が米朝さんにそっくりなので、会場ですぐ気がつくに違いない。
東西を問わず、落語ファンが足を運んでいる特別展。米朝さんは、東西の落語家、文化人と交流を続けてきた。立川談志さん、古今亭志ん朝さんをはじめ、「東京やなぎ句会」の仲間である、小沢昭一さん、永六輔さん、柳家小三治さん、入船亭扇橋さんらとの写真などの資料が多数展示され、司馬遼太郎さん、小松左京さんの姿も見られる。
戦後、絶滅寸前とまでいわれた上方落語を、後に「上方落語四天王」と呼ばれる同世代の若手(六代目笑福亭松鶴、五代目桂文枝、三代目桂春団治)とともに復興させた歴史は、アニメファンにも伝わるはずだ。
会場を訪れたら、ぜひ図録を手にとってほしい。展示物や資料がまとめられている上に、芸能界を引退した上岡龍太郎さんが、この図録のために書いたコラム「100年に1度の天才・米朝師匠」も収録されている。
そして、姫路まで足を運ばれたならば、ぜひ、米朝さんのお墓参りをしてほしい。昨年11月に完成した米朝さんのお墓は、名誉市民の米朝さんに、市が名古山霊苑に墓所を提供した。石碑や石で造られたベンチを合わせて見ると、漢字の「米」の形になっている。お墓まで遊び心たっぷりの米朝さんの故郷で、戦後落語界を支えた東西の師匠方を振り返る週末の過ごし方はいかがだろうか。(油井雅和/毎日新聞)